「史上最高のGⅡ」を想起する3強対決
あれほど気持ちが高揚するレースは、もう訪れないとすら思っていた。1998年10月11日、毎日王冠。金鯱賞で伝説的なレースを披露したサイレンススズカに無敗の3歳(旧表記4歳馬)エルコンドルパサー、グラスワンダーが挑む構図。出走9頭中8頭が重賞馬であり「史上最高のGⅡ」を観戦するために13万人が東京競馬場に足を運んだ。
あの時と同じ様に胸が高鳴っているのが今年のジャパンカップだ。GⅠ制覇8勝の名牝アーモンドアイ、無敗の三冠馬コントレイル、デアリングタクト、そしてクラシックホースの面々。過去のデータを見ながら、どの馬が一番頂点に近いか探っていきたい。
王道「東京芝2400m」。総合力が問われる
東京芝2400mは日本ダービー、オークス、そしてジャパンカップが行われる王道コース。正面スタンド前からスタートし、コースを約1周する。末脚勝負になるのだが、近10年間でメンバー最速(タイを含む)の上がりを繰り出した馬の成績は[1-3-2-6]。勝ち切ったのは2011年のブエナビスタただ1頭。直線一気の一辺倒タイプは割引が必要だ。
また、このレースは1枠の馬が多く好走していて、現在4年連続で連に絡んでいる。特に5番人気以内に支持されると[4-3-1-0]とグンと信頼度が増す。当日まで覚えておきたいデータだ。
平均配当は馬連「2832円」3連単「79777円」
意外なことに、近10年間のジャパンカップが馬連1番人気で決まったのは2010年が最後。平均配当は馬連2832円、3連単79777円。1番人気の成績は[3-2-2-3]、2番人気の成績は[1-1-3-5]となっている。
1番人気の成績はオッズと比例して、1倍台ならば[1-1-0-0]、2倍台[1-1-2-0]、3倍以上[1-0-0-3]。馬券に絡めなかった3頭は全て「押し出された1番人気」だったといえる。また、連に絡んだ事があるのは7番人気以内の馬のみで、8番人気以下になると[0-0-3-94]と3着が精いっぱいだ。
連対馬は3歳~5歳
近10年間において6歳以上の高齢馬は大苦戦で[0-0-2-40]と1頭も連に絡めていない。斤量有利な3歳馬は[3-3-1-19]と好成績。なお、ダービー馬、オークス馬は3番人気に支持されていた場合[2-1-0-1]となっている。
4歳馬は人気になっていないと苦しく、4番人気以内[4-3-2-6]、5番人気以下[0-0-1-36]。後者で馬券に絡めたのはアルゼンチン共和国杯を制し当日6番人気だったシュヴァルグランただ1頭だ。5歳馬は[3-4-4-36]と7頭が連に絡んでいるが、天皇賞(秋)で4着以内からの転戦組は[1-1-4-4]と苦戦傾向にある。やはり激しい競馬で上位に食い込んだ後1か月しか間がないことは、5歳馬にとって苦しいのかもしれない。
天皇賞馬の連勝は意外と困難?
やはり格式高いジャパンカップ、生半可な実力馬では通用しない。馬券に絡んだ全馬が秋に1走以上していて、前走でGⅠレースに出走、もしくはGⅡレースで4着以内だった。一番好成績なのは天皇賞(秋)から転戦の馬で[5-4-8-40]の成績。しかし、天皇賞1着馬は[0-2-3-1]と惜しいところまでは来ているが連勝はできていない。アーモンドアイはこのデータを覆せるだろか。
秋華賞組は[2-1-0-2]、菊花賞組は[1-0-0-4]の成績。特に秋華賞組は2018年アーモンドアイ、2012年ジェンティルドンナの牝馬三冠を達成した2頭がそのままジャパンカップも制している。
当日のオッズには要注目!
今年の登録馬のうち、「秋に1走以上」「3~5歳」「前走GⅠ、または前走GⅡ4着以内」をクリアできる馬は7頭。
アーモンドアイ(牝5歳・天皇賞(秋)1着)
カレンブーケドール(牝4歳・オールカマー2着)
グローリーヴェイズ(牡5歳・京都大賞典1着)
コントレイル(牡3歳・菊花賞1着)
デアリングタクト(牝3歳・秋華賞1着)
ユーキャンスマイル(牡5歳・アルゼンチン共和国杯4着)
ラヴズオンリーユー(牝4歳・エリザベス女王杯3着)
また、近10年間の勝ち馬は当日5番人気以内、連対馬も7番人気以内からしかでていない。当日のオッズでこの中から絞り込みたい。
3強ではコントレイルが有力か
では、上位人気が確実なアーモンドアイ、コントレイル、デアリングタクトを今のうちに検証していきたい。
まずアーモンドアイは3歳時に当レースを「2:20.6」で制し、歴代最多のGⅠ8勝を達成している歴史的名馬。しかし、どうしても同年度の天皇賞(秋)を制した馬の[0-2-3-1]という数字が気になる。1か月以内でGⅠを2走という反動がでなければいいのだが。
続いてデアリングタクトだが、データ上気になる点は無い。しかし、3歳でジャパンカップを制したアーモンドアイとジェンティルドンナはオークスで2分23秒台の数字を記録していた。現段階で持ち時計が2頭に比べて劣っている点だけが気がかりである。
最後にコントレイルだ。菊花賞組は2010年にローズキングダムが繰り上がりの1着1回のみの成績になっている。この馬の場合、三冠レースの中で一番パフォーマンスが優れていたのが日本ダービー。歴代牡牝三冠馬14頭中4位のタイムで、歴代ベスト3はディープインパクト、ジェンティルドンナ、アーモンドアイで、全てジャパンカップを制している。この馬も続けて何ら不思議無い。
どの馬にも多くのファンがいて、多くの夢が託されている。良馬場のなか、最高の競馬を期待したい。
《ライタープロフィール》
高橋楓。秋田県出身。
競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレースの記事を中心に執筆している。
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