主力は4、5歳も6歳馬に注意
サマー2000シリーズに組みこまれているが、北海道シリーズ唯一のGⅡである札幌記念はGⅠ馬の始動戦として定着した。
エアグルーヴがこのレースから天皇賞(秋)を制したあたりから似たようなローテが多くなった。出走馬のレベルがあがるにつれて、上位人気馬による決着が増えたような印象だが、過去10年間で1人気【2-4-2-2】と案外勝ちきれない。
それでも2人気【3-0-2-5】を筆頭に上位人気はよく走り、5人気【2-2-0-6】など勝ち馬は6人気以内から出現。休み明けのGⅠ馬が秋をみすえてそれなりに走るといった結末が多い。
今年も想定にGⅠ馬が複数頭いることから上位拮抗の激戦が予測される。ではデータでその傾向をみていこう。なおデータは過去10年間のものを使用する(13年は函館施行)。まずは年齢別成績から。

数は少ないが3歳は【1-0-1-8】と率でいえば悪くはないものの、好走2頭はハープスター(14年2人気1着、桜花賞馬)とレインボーライン(16年4人気3着、NHKマイルC3着)と春のGⅠ戦線好走馬。想定にブラックホールの名前があるが、札幌で重賞勝ちがあるとはいえどうだろうか。
勝率では6歳【3-1-1-24】が上位。6歳好走馬は安田記念を含む6月以降の重賞に出走。さほど出走間隔が空いていない(非休み明け)点はポイント。想定にあるペルシアンナイトは宝塚記念15着からの参戦。以前の活力が戻っているかどうかにかかっていそうだ。
3着以内の好走馬という意味では4歳【3-1-3-27】、5歳【3-5-4-27】が主力と考えてよさそうだ。今年は人気もこの2世代になるだろう。

舞台は札幌芝2000m。4角奥の引き込み線からスタート、スタンド前直線をいっぱいに使う設定は枠順の有利不利はそれほどでもないだろうと調べたら、どの枠からも好走馬は出ているなかで1枠が【3-0-1-10】勝率21.4%と抜けていた。
このコースのフルゲートは16頭だが、札幌記念がフルゲートになったのは過去10年で10、13、16、18年の4回。つまり1枠に2頭入ったのは4回、残り6回は1頭、頭数が少ないため確率は高く出てしまうが、少ない頭数から勝ち馬が3頭出ている点は頭の隅に入れておきたい。
ポイントは安田記念、宝塚記念と函館記念
実績馬がそろうレースではあるが、休み明けの実績馬と夏に活躍した馬ではどちらが強いのだろうか。前走クラス別成績をみる。

さすがに夏のGⅠにしてはという声があがるレース。前走がオープン以下だった馬は【0-0-0-25】と壊滅。札幌記念では格下から一気に下克上とはいかないようだ。勝率トップはやはり前走GⅠ組の【4-5-7-23】勝率10.3%。どんなレースから札幌記念に出走したのだろうか。

今年の想定馬で考えてみよう。さきほど触れたペルシアンナイトと上位人気必至のラッキーライラック、伏兵トーセンスーリアが該当する宝塚記念組は【2-2-1-5】勝率20%、複勝率50%といい感じだ。ノームコアが該当する安田記念組は【1-2-1-4】勝率12.5%、複勝率50%なので好走する確率は十分ある。
ただマカヒキの大阪杯組は【0-0-1-3】とやや精彩を欠くデータなので注意しておこう。一方で格下にあたるGⅢ組は【5-3-2-52】、頭数が多く率は出ていないが、10年で5勝は前走GⅢ組なので、ここは掘り下げておきたい。

データでは函館記念、クイーンS、エプソムCに好走パターンは限られている。なかでも【3-3-2-36】の函館記念組が大半を占める。今年の想定からはアドマイヤジャスタ(1着)、トーラスジェミニ(4着)、カウディーリョ(7着)が該当。ここはちょっと詳しく。

1着は【1-0-1-3】なのでアドマイヤジャスタは悪くない。4着【0-0-0-2】、トーラスジェミニはどうだろうか。サンプルが2頭なのでなんとも言い難いところだ。注目はカウディーリョが該当する6~9着で成績は【2-1-0-10】勝率15.4%、複勝率23.1%。穴狙いで行くならカウディーリョか。

では前走函館記念6~9着馬の函館記念での脚質別に札幌記念での成績を出すと、中団【1-0-0-4】、後方【1-1-0-4】と函館記念で中団より後ろで競馬をして6~9着に敗れた馬が札幌記念で巻き返していることがわかる。カウディーリョは函館記念で4角3番手。データ上ではやや手を出しづらいことに。

最後に全体の前走脚質別成績を出す。逃げ【1-0-0-7】、中団【5-4-1-48】、後方【3-2-4-22】あたりが好走パターン。前走で中途半端な位置ではなく、逃げるか控えるかという作戦を選択した馬のなかに好走馬がいるようだ。前走逃げたトーラスジェミニ、トーセンスーリア、安田記念で最後までよく追い込んだノームコア、函館記念を勝ったアドマイヤジャスタあたりがデータから浮上する。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。
