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【関屋記念】大波乱の中京記念組の取捨は?参考レースから読み解く各馬の「潜在能力」

2020 8/15 17:00坂上明大
関屋記念インフォグラフィックⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

超スローペースのイス取りゲーム

育成サイクルの変化により3歳馬の活躍が目立つようになった近年のサマーシリーズ。ただ、今年の関屋記念には3歳馬の登録が無く、古馬実績馬の純粋な力比較が重要な一戦となった。三連単330万超の大波乱となった中京記念など重要な参考レースを振り返る。

※記事内の個別ラップは筆者が独自に計測したものであり、公式発表の時計ではありません。

トラックバイアスインフォグラフィックⒸSPAIA

【京王杯SC】
稍重でもBコース替わり初日の分、時計は速め、かつやや内有利の馬場状態。加えて、前後半3F35.2-33.1という超スローペースとなり、前有利のイス取りゲームとなった。

3着馬グルーヴィットはインの3番手で運び、上がり3F10.7-11.1-11.3程度で粘り込む。バイアスに合った競馬での好走であり、時計面からも高い評価はできない。また、柔らかさが持ち味のロードカナロア産駒ではあるが、本馬は母母父フレンチデピュティの影響が強い筋肉質のピッチ走法。持続力が求められる新潟外回りはなかなか乗り難しい。

9着馬エントシャイデンは外々を回る形ではあったが、先行勢との差も詰められず、後方勢にも差される結果に。GⅡではやや物足りない印象。

13着馬ドーヴァーは出遅れて最後方からしんがり負け。さすがにこの馬には上がりが速過ぎた。道悪なら出番はありそう。

トロワゼトワルの好走条件

【ヴィクトリアマイル】
京王杯SCの翌日に行われ、雨が上がったことで前日以上に時計の速い馬場状態に。前2頭が離し気味、かつアーモンドアイの上がりが抜けていただけにレースラップはアテにならないが、3番手サウンドキアラが34.8-22.7-33.8で走破している点を考慮すると、やはりヴィクトリアマイルらしいやや内前有利の競馬だったといえる。

4着馬トロワゼトワルはすんなりハナに立ち、マイペースの逃げ。上がり3Fは16頭中14位での4着だから展開の助けを受けての好走であることは間違いない。とはいえ、2019年京成杯AHを日本レコードで制したことからもわかる通り、高速馬場には滅法強い馬。高速馬場、かつマイペースならいつ巻き返しがあっても不思議ではない。

8着馬プリモシーンは出遅れて中団を追走。揉まれ強いタイプではないだけに、左右から挟まれて引く形になった3角は大きなストレスとなってしまった。直線ではそれなりの脚を使っているが、本来の切れ味は見せられず。スムーズな競馬なら当然巻き返すだろう。

大波乱の原因は?

【中京記念】
阪神芝1600mで行われた今年の中京記念。ロングラン開催の最終日とあって内目はかなり荒れた馬場状態。加えて、同馬主のリバティハイツのスタートが良かったことでトロワゼトワルも押して出して行かざるをえず、前後半3Fは34.0-35.2のハイペースに。先行馬には厳しい「外差し有利」の展開となった。

1着馬メイケイダイハードは父が米ダートGⅠ馬ハードスパン、母がNureyevの4×3、自身はRoberto+Kingmamboというパワー血統。直線急坂、開催最終日の荒れ馬場、ハイペースで外差しの利く展開、それらすべてが味方しての大勝利であった。新潟外回りに替わる点は割り引きが必要で、馬場も渋った方がベターだろう。

3着馬エントシャイデンも中団待機から直線は馬群を割る形。距離ロスは抑えられたが、やや荒れ気味の馬場と窮屈な競馬だった点は考慮したい。母母アジアンミーティア(=Unbridled's Song)のディープインパクト産駒だけに、高速馬場なら逆転濃厚とみる。

5着馬ミッキーブリランテは中団待機から早め先頭の形。積極的過ぎた分ラストで甘くなった印象だ。上位との差はさほど感じない。タフな競馬向き。

17着馬トロワゼトワルは馬場も展開も向かなかった。度外視可能。

最注目は短距離路線組

短距離路線組で紹介できなかったクリノガウディーに注目。スクリーンヒーロー産駒のマイラーであり、高松宮記念での好走は超スローペースの恩恵があったからこそ。2019年中京記念や2020年東京新聞杯でプリモシーンに引けを取らないことを証明しており、週末の雨予報も大歓迎だ。高速馬場ならトロワゼトワルの巻き返しにも期待する。

◎クリノガウディー
○トロワゼトワル

ライタープロフィール
坂上明大
元競馬専門紙トラックマン。『YouTubeチャンネル 競馬オタク(チャンネル登録者40000人強)』主宰。著書『血統のトリセツ』。血統や馬体、走法、ラップなどからサラブレッドの本質を追求することが生きがい。