スイングで重要な前傾角度の維持
ゴルフスイングは前傾姿勢で行われる。アドレス時の前傾角度をキープしながら体を回転させてスイングするとショットを安定させやすいが、前傾角度が崩れるとショットが乱れやすくなる。しかし、前傾角度が崩れ上体が起き上がってしまっているゴルファーは多い。
プロとアマのスイングを比べた場合、顕著な違いの一つが“前傾角度キープができているかどうか”だ。何がポイントでどのようなことに注意すれば、前傾角度が崩れて起き上がることなくスイングできるのだろうか。
起き上がりには腕の動きも関係するが、今回は臀部や骨盤など腰部周辺の動きに焦点をあててみたい。
アーリーエクステンション
前傾角度が崩れインパクト前に上体が起き上がる(伸び上がる)ことを“アーリーエクステンション(early extention)”という。直訳すると「早期伸長」だ。
ダウンスイングで臀部が前に出ると、アーリーエクステンションになる。臀部の位置がアドレス時よりもダウンスイングで前にずれるほど、伸び上がりの度合いが大きくなるのだ。
ダウンスイングでは臀部を後方に引くイメージを持つことで、伸び上がりを防ぐことができる。バックスイングでは右の臀部を後方に引き、ダウンスイングからフォロースルーでは左の臀部を後方に引く。
このように腕がボール(前方)に対して出す力と拮抗するように、後方(かかと方向)へ力を出すことによってアーリーエクステンションを防ぎ、前傾角度がキープされたバランスの良いスイングになる。
骨盤を後傾させる力が必要
臀部を後方に引いた時、腰が反らないように注意が必要だ。腰が反るということは骨盤が前傾している状態で、骨盤が前傾するほど腹筋に力が入りにくくなる。腹筋に力が入っていないと、ダウンスイングやインパクトで腕や上体が大きな力を出した時に、その力によって臀部が持っていかれ前に出てしまう。臀部が前に持っていかれるとアーリーエクステンションになる。
スイング中は骨盤を後傾させる力を適度に使いたい。そうすることで腹筋に力が入りやすくなり、臀部が持っていかれにくくなる。
骨盤を後傾させると、上体が丸まる感じになり人によっては良くない体勢に感じるかもしれないが、前傾角度キープのためには必要だ。
西村優菜のスイング
7月21日~24日に開催された海外メジャー、エビアン選手権では日本人選手4名がトップ20に入る活躍を見せた。(西郷真央:3位タイ、西村優菜:15位タイ、畑岡奈紗:15位タイ、古江彩佳:19位タイ)
米ツアーで通用する力量を示した西村のスイングを見ると、前傾角度キープへの高い意識がうかがえる。アドレス時の前傾角度がバックスイング、ダウンスイング、そしてフィニッシュまでキープされていた。
今季日本ツアーでの西村の平均バーディー数は1位(7月31日時点)。日本トップレベルのパットを強みにしてバーディーを量産しているが、ショットのレベルも低くない。
日本ツアーのドライビングディスタンスは78位と、小柄な西村には飛距離にハンデがある。しかし、足りない飛距離は正確性でカバーしており、ショットの総合力を示すボールストライキング(※)は27位。飛距離で負けている多くの選手よりも、総合力で勝ることを示している。
また、ボールストライキングが西村より上位の選手は、全員ドライビングディスタンスも西村より上。つまり、西村よりも飛ばない選手のなかにショットの総合力で西村を上回る選手はいないことになる。
西村に限らず、正確性の高さを強みにしているツアー選手のスイングは、インパクト前後で前傾角度がキープされている。打点やフェースの向きを安定させるためには、前傾角度キープは押さえておきたい。
※トータルドライビング(ドライビングディスタンス順位とフェアウェイキープ率順位を合算した値)順位とパーオン率順位を合算した値
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