読めない要素が多いラフ
ラフでも芝が短めでボールが浮いた状態であれば、あまり難しいショットにはならないが、芝が長くなりボールが沈むほど難しいショットになる。ラフからのショットは読めない要素が多く、インパクトでクラブヘッドが芝からどのように抵抗を受けるのか、打ってみないと分からない部分が大きいのだ。
ツアー選手でもラフには手を焼く。5月19日から22日に開催されたメジャー『全米プロゴルフ選手権』では、サザンヒルズ・カントリークラブの長くはないが粘り気のあるバミューダ芝のラフが選手を苦しめた。
データから、フェアウェイからでも風に対応しながら硬いグリーンにボールを止めることが容易ではない状況で、ラフからではバーディーチャンスにつけることは極めて難しい状況だったことがうかがえる。
100~125ヤードの距離で、全米プロ参加選手はラフから平均39インチ11フィートのところにボールを止めた。米ツアー選手であれば、100~125ヤードで使用するクラブはサンドウェッジかアプローチウェッジだ。その番手で平均約12メートルの距離を残している。
150ヤード以上の距離でもフェアウェイからより1.5倍程度の距離を残していることから、ラフの影響の大きさを知ることができる。
ラフが難しいのは全米プロなどのメジャーに限ったことではない。今季のツアー平均を見てもラフからはあまりピンに寄せられていない。100~125ヤードのショットでは約9メートル残していることがわかる。一方、フェアウェイからの100~125ヤードのショットでは約6メートルにつけている。
ツアー選手の1パットの確率は30フィート(約9メートル)で7%、20フィート(約6メートル)で15%。同じ100~125ヤードの距離でも、ラフからバーディーを取れる確率はフェアウェイからの半分程になってしまうのだ。
ラフからのショットの特徴
ヘッドスピードが遅いほどクラブヘッドがラフの抵抗に負け飛距離が落ちやすく、ヘッドスピードが速いほどラフの抵抗が抑えられ飛距離が落ちにくい。また、ラフからはクラブフェースとボールの間に芝が挟まるため、バックスピン量が減りランが増える。
バックスピン量が減る上にヘッドスピードが速く芝の抵抗が抑えられると、ランだけでなくキャリー距離も伸びる”フライヤー”になることがある。ラフの状況次第で、ヘッドスピードが速いツアー選手はフライヤーになることを計算し、番手を小さくする。
打つ距離を合わせるのが難しいラフだが、方向のブレにも影響を与える。インパクトでクラブヘッドがボールに当たる前に芝に当たるのだが、どこにどう当たるのかによってボールの飛ぶ方向が変わってしまうのだ。
ラフはどういうインパクトになるのか読めない部分がある。だが、基本的にヒール(ヘッドのシャフト側)からボールに向かっていくので、インパクトでヒール側が芝の抵抗を受けやすい。ヒール側が抵抗を受けて減速すると、同時にトゥ側がヒール側を追い越すのでフェースは閉じる。よって、ボールは左に飛びやすくなる。
ヘッドスピードや番手によって傾向が異なる
ラフではフェースを開いてかまえることを検討したい。ヘッドの抜けを良くし、閉じ過ぎて左へのミスになることを防ぐためだ。また、ボールを右足寄りに置くことも有効だ。ダウンブローでインパクトしやすくなり、インパクト時の芝の抵抗を抑えやすく、クラブの挙動が乱れにくくなる。
番手が大きくなるほど芝の抵抗に負けやすい。そのため、芝の長さとボールの沈み具合によっては、番手が大きいと逆に飛ばなくなることがあるので注意が必要だ。出したい飛距離は諦めて、“小さい番手で手前に刻む”マネジメントを選択肢に加えよう。
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