飛距離VS正確性
好スコアを出すためには、ドライバーショットの飛距離が出るほど有利だ。短いクラブでグリーンを狙うことができ、クラブが短いほどミスヒットしにくく、グリーン上でボールを止めやすい。
飛距離が出る場合は左右へのブレ幅が大きくなりやすいが、飛距離より方向を重視するべきホールではドライバー以外のクラブでティーショットしたり、2打目はフェアウェイウッドではなくアイアンを選択するなどすればスコアをまとめやすくなる。
「次のショットを短いクラブで打てる」「番手を下げれる」という選択肢が増え、番手を下げることでミスヒットが減る。飛距離が出るメリットは大きい。ただ、飛距離が出る方が有利であるが、ショートヒッターがロングヒッターよりスコアで上回ることができないかといえばそうではない。
ティーショットで確実にフェアウェイをとらえる、グリーンを狙うショットでは無理にピンやグリーンを狙わず、リスク回避を最優先してコースマネージメントする、ショートゲームで勝負する、ということを徹底することでスコアがまとまりやすくなる。
稲森佑貴と青木瀬令奈
飛距離よりも正確性で戦い好成績を挙げている代表格が、2018年から21年まで4季連続フェアウェイキープ率1位で現時点も1位の稲森佑貴。今季はこれまで、4月28日から5月1日に開催された中日クラウンズでの今季初優勝を含めた6戦でトップ10が3回と、安定感抜群のプレーぶりだ。
女子では青木瀬令奈に注目したい。今季これまで12戦でトップ10が4回。5月5日から8日に開催された国内メジャー、ワールドレディスチャンピオンシップで優勝争いに加わるなど好調を維持している。ドライビングディスタンスは94位ながらフェアウェイキープ率は3位。ドライバーショットの正確性を武器に戦う上位争いの常連だ。
二人に共通しているのが優れたコースマネージメント力。稲森は中日クラウンズで悪天候に苦しむ選手が多い中、ブレずに自分のゴルフを貫くことで最多のバーディー数を獲得した。青木はワールドレディスチャンピオンシップで、ピンポジション関係なくグリーンセンター狙いを徹底し、好スコアへつなげた。「絶対にここは狙うべき」というチャンス以外は無理にピンを攻めず、優勝した山下美夢有と同じバーディー数を獲得した。
欲張らずに冷静にプレーする
メジャーで13勝し、マスターズ創設者でもある、球聖ボビー・ジョーンズは「多くのショットが最後の瞬間に滅茶苦茶になる。あと数ヤード距離を伸ばしたいと欲張るために」と言った。「望むから力んで失敗する。ミスの原因のほとんどは見栄。見栄は『自分を知ること』を阻害する。飛距離は各人それぞれ。飛ばなければ他のクラブでカバーすれば事足りる」と言ったのは、プロツアーで優勝実績があり“プロより強いアマチュア”と称されていた中部銀次郎だ。
いずれも「無理に飛距離を出そうとする必要はない」という意味の言葉。飛距離が出なくても、自分のプレーに徹することで、好スコアにつなげることができる。ライバルや同伴競技者が飛ばし屋でも、その飛びに惑わされずに冷静に一打一打を消化していきたい。
また、ワールドレディスチャンピオンシップでの青木のように、グリーンセンター狙いを徹底することも有効だ。前後左右に振っているピンを狙うのは、少しでも方向や距離が狂うとピンチになるリスクを背負うことになる。リスクを回避できたとしても、1パットになる確率は高くない。リスクとリターンのバランスを考えた場合、グリーンセンター狙いが賢明なのだ。
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