1年11か月ぶりの復活優勝
渋野日向子が10月8日~10日に開催されたスタンレーレディスでプレーオフの末、1年11か月ぶりに優勝した。これで、10月15日~17日開催の富士通レディースまで5試合連続トップ10入り、うち4試合がトップ5(4位タイ、8位タイ、5位タイ、優勝、3位)となった。
復活というよりも進化といえそうな最近の渋野のプレー。全英女子オープン制覇や、日本ツアー賞金女王争いをした2019年を超える結果を、今後出せる雰囲気になってきた。この進化には、今年改造したスイングがフィットしてきたことが大きいようだ。
今年のスイング改造
渋野は、石川遼の助言を参考にスイング改造に踏み切った。バックスイングではフェースを閉じ、トップオブスイングは浅く低い位置にクラブを収めるようになった。打つ前には、石川と同じようにバックスイングのイメージを確認する動きを採用した。
結果、構えたその場でより綺麗に体が回転し、バックスイングとダウンスイングのクラブヘッド軌道の差が小さいスイングになった。今年前半はまだ体になじみきっていなかったこともあり、始動や切り返しなどのタイミングが定まらず苦しんだ。だが徐々にスイングの再現性やショットの精度が向上。
ドライビングディスタンスの計測が再開された3月のアクサレディスでは、236.833ヤードで23位だったが、スタンレーレディスでは259.667ヤードで2位となるなど、スイングのタイミングが定まってきたことで力を出せるようになり、飛距離も伸びた。
昨年の肉体改造
渋野は昨年、肉体改造に取り組んでいた。米ツアーで戦うためには飛距離アップが必要と判断してのものだ。次第に「米ツアーでも飛距離より方向が大事」と感じるようになったようだが、この肉体改造がその後のスイング改造にとって大きな意味を持った。
渋野のスイング改造は飛距離よりも精度を優先したものだ。トップオブスイングを浅くするとクラブの助走距離が短くなるため、インパクトでクラブを加速させにくい。また、トップオブスイングを低くすると重力による位置エネルギーが減少するため、ダウンスイングからインパクトにかけて物理的な力が減少する。
このように、スイング改造は飛距離の面でマイナス要素があったにも関わらず、現状ツアートップレベルの飛距離が出ている。「肉体改造の後にスイング改造」という段階を経たことが、この好結果に結びついたのだろう。
2022年米ツアーを主戦場に
今シーズンのデータを見ても、渋野が2019年のプレー内容に追いつき追い越せるところまできていることが分かる。今季(2020-2021)の日本ツアーにおける平均ストローク、パーオン率、ドライビングディスタンス、フェアウェイキープ率を2019シーズンと比べると、ほぼ同じだ。
12月からは来季米ツアー出場権をかけた計8日間の予選会に挑戦する。通過すれば、いよいよ米ツアー本格参戦となるだろう。予選会とはいえ厳しい戦いとなるが、現在の渋野の調子なら通過できるだろう。
来季からは日本で渋野のプレーを見る機会が減るかもしれない。今季の残り数試合、渋野のプレーにより注目したい。
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