シャフトが1インチ長くなると飛距離が5~6ヤード伸びる
米ツアーで活躍するためには飛距離が重要だ。ドライバーを長尺にすることでその飛距離を伸ばすことが可能。ドライバーは1インチ長くなるとヘッドスピードが1m/s前後、飛距離が6ヤード前後伸びると言われている。
実際、フィル・ミケルソンは衰えた飛距離をカバーしようと、ドライバーを長尺にした。ルールで定められている48インチぎりぎりの47.9インチのドライバーを使用し、50歳で全米プロ優勝、8年ぶりのメジャー制覇を果たした。
6月17日開幕の全米オープンでは、石川遼も長尺シャフトのドライバー(47.5インチ)を使用していた。大会前のテストでも10ヤードほど飛距離が伸びたとコメントしており、この結果も先述した数式にほぼ当てはまる。
飛距離アップと精度
昨今、精度よりも飛距離重視という風潮が強まってきている。昨年の全米オープンは、例年通り、フェアウェイを外すと長いラフ。そんな中、フェアウェイキープよりも飛距離を優先し、ティーショットをドライバーで攻め続けた、飛ばし屋ブライソン・デシャンボーが優勝した。
また、米ツアーの公式データに採用されている「※SG:オフザティー」のデータを見ると、上位には、「フェアウェイキープ率は下位でも、ドライビングディスタンスが上位」の選手が多い。
このようなことから、フィジカル的に衰えを隠せない年代の選手や、身体が小さい選手など、トレーニングだけでは飛距離で対抗しきれない選手は「長尺」という選択肢が浮かび上がるのだ。
※ストローク・ゲインド・オフザティー:Par4とPar5のティーショットで選手平均に対して何打稼いでいるか
長尺のデメリット
飛距離はあるほど有利に働く。しかし、長尺シャフトの方が飛ぶにも関わらず、多くのゴルファーやツアー選手が採用しないのは左右に曲がるリスクが大きくなることが挙げられる。遠心力が大きくなるためクラブの動きをコントロールしにくくなるのだ。
ヘッドスピードが上がっても、スウィートスポットでインパクトしないことには飛距離アップできない。打点が悪いと、「ヘッドスピードが上がったけど飛距離が落ちた」といったこともありえる。
長尺にアジャストできるスキルがないと、大きくなった左右に曲がるリスクだけを背負ってしまい、ハイリスクローリターンの選択となってしまうのだ。
一般ゴルファーは長尺のメリットを活かしにくい
「SG(ストローク・ゲインド)指標」を考案したマーク・ブローディ氏は、ティーショットの方向性のずれに関して「米ツアーの平均精度は3.4度。平均スコア90プレーヤーの精度はおよそ6.5度で、ツアー選手の約2倍、ティーショットがターゲットから外れる」という研究結果を発表している。
ツアー選手が300ヤード飛ばしたショットをターゲットから3.4度外したとすると、約17ヤード外れることになる。一方、アマチュアが200ヤード飛ばしたショットをターゲットから6.5度外すと、約23ヤード外れることになる、ということだ。
《参考》【ゴルフ】飛距離とフェアウェイキープ どちらが大切なのか
これは、ターゲットから外れる角度が同じ(精度が同じ)場合、ツアー選手は飛距離が伸びて外れる距離が増えても、まだ余裕がある。一方、アマチュアの場合は、飛距離が伸びてこれ以上外れる距離が増えると、OBなどトラブルに見舞われやすくなる、ことを意味する。
ツアー選手は精度を多少犠牲にして飛距離アップを優先しても大丈夫だが、一般ゴルファーの場合は、飛距離アップよりも精度維持(向上)を優先するべきと言える。
ティーショットでOBや林の中などに入る確率が極めて低く、フェアウェイキープ率が高いゴルファーは、飛距離アップのためにドライバーの長尺化を検討してみても良いかもしれない。そうでないゴルファーは、現在の使っているクラブの長さで精度を向上させてから、長尺化を検討すると良いだろう。
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