逆オーバーラッピンググリップとクロスハンドグリップ
「パッティングのグリップに定められた型なし」とよく言われる。実際、ツアー選手も様々な握り方をしている。ただその中でも、左手人差し指を右指の上に重ねる逆オーバーラッピンググリップと、ショットとは逆に右手が左手の上になるクロスハンドグリップのどちらかを採用していることが多い。ちなみに、逆オーバーラッピンググリップのことを順手、クロスハンドグリップのことを逆手と言ったりする。
今回は、渋野日向子や鈴木愛が取り入れたクロスハンドグリップの特徴について解説していく。
渋野日向子や鈴木愛が取り入れたクロスハンドグリップ
渋野日向子は昨季、驚異のバーディ率4.0越え(4.000)を達成した。しかし、攻撃的ゴルフを支えたパッティングの不調も影響し、今季は開幕してから3戦連続予選落ち。この不調から脱するため、海外メジャーANAインスピレーション(9/10~13開催)よりクロスハンドグリップに変更した。
すると、2試合予選を通過。パッティングのフィーリングを戻すことに成功し、10月1日から開催されたショップライトLPGAクラシックからは順手に戻している。
昨季賞金女王の鈴木愛は今季開幕戦こそプレーオフの末に2位だったものの、そこから本来の力を見せられていない。代名詞でもあるパッティングの不調で2度の予選落ち。デサントレディース東海クラシックでは、グリップを順手からクロスハンドに変更し、8位タイに入った。
クロスハンドグリップの効果
クロスハンドグリップにはどのような特徴があるのだろうか。
左手を右手の下にすることで、右手首を手の平側に折る、いわゆる手首をこねる動きを抑制しやすくなる。また、渋野がグリップを変更した理由でもあるが、順手は選手によってはダウンストロークで左肩が上がり、手元が浮きやすい。それに対して、クロスハンドは、両肩の高さをそろえやすく、フォロースルーでスムーズにヘッドを出しやすいのだ。
一方、鈴木はパッティングでは順回転のボールを打つためにアッパーブローの意識が強い。その意識が強すぎると体の軸の傾きが大きくなり過ぎて、クラブの挙動が不安定になる場合がある。順手より左肩が低くなるクロスハンドにすることで、過剰なアッパーブローや軸の傾きを防ぐ効果が鈴木にはあるのかもしれない。
クロスハンドは順手と比べ、右手の感性を生かした距離感などの微妙なフィーリングを出すことが難しいと言われている。渋野も鈴木もエースグリップは順手。あくまで、クロスハンドグリップの取り入れは、順手の良いフィーリングを取り戻すための取り組みの一環のようだ。
グリップを変えることで気づきが得られる
グリップで左右の手が入れ変わるだけで、ストローク中の体の感覚がまったく異なったものになる。ショット同様、グリップを含めたアドレスが変わればストローク(スイング)全体が変わるのだ。
クロスハンドグリップは慣れるために練習が必要ではあるものの、順手だと起きてしまうエラーを抑制する効果が期待できる。例え一時的な変更であっても、順手の時に使うべき筋肉の確認ができるなど、得られるものは小さくない。
今回、渋野や鈴木は一時的な変更だったが、想像以上に好感触ならエースグリップとして採用しても良いだろう。クロスハンドグリップ未経験のゴルファーは、一度試してみてはどうだろうか。パット数を減らすきっかけをつかめるかもしれない。
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