英国2連戦連続予選落ち
全英女子オープンが、8月20日~23日にスコットランドのロイヤル・トゥルーン・ゴルフ・クラブで開催され、ドイツのソフィア・ポポフが優勝し、ドイツ女子初の海外メジャー制覇者となった。前週まで304位だった世界ランキングは24位(8月24日時点)。オリンピックランキングでも一気にドイツ女子1番手となった。
一方で、昨季の同大会で、日本女子で42年ぶりのメジャー優勝を果たし、46位だった世界ランキングを14位まで上げた渋野日向子は、まさかの今回予選落ち。2日目終了後「言葉にできないぐらい悔しい」と報道陣にコメントした。
前週に開催されたスコットランド女子オープンでも予選落ちしており、日本ツアー開幕戦と合わせると3戦連続予選落ちとなってしまった。
英国特有のリンクス
英国には、特殊なコースであるリンクスコースが多く、今回の2連戦もリンクスだった。
英国のリンクスではその特徴的な地形から、他のコースでは想定しないようなことも起こる。その一つが風だ。海沿いに位置するため、プレーヤーは強い風を受ける。風の強さは日本の台風並みになることもあり、日本ツアーでは経験することのない猛烈な風の中でプレーする時もある。ピンフラッグがリンクス以外のコースよりも短くされているが、これは、通常の長さだと風の強さに負けて折れる心配があるためだ。
また、ポットバンカーと言われる特徴的なバンカーが点在している。蛸壺のようなバンカーで、小さく深さがあり、グリーン方向の壁が垂直(絶壁)で、入ると、寄せること以前に脱出することでさえも困難になることがある。飛距離や最短ルートを犠牲にしても、このポットバンカーを徹底的に避けるマネージメントをする選手が多いのもそのためだ。
こういった特徴があるリンクスコースは、今回の2連戦が渋野にとって初めての経験だった。優勝した昨季の大会は日本にコースに多い林間コース。大会前には「もしリンクスだったら完全に予選落ちする」と語っていた。
アプローチのバリエーション・球の打ち分け・硬い地面の対応
渋野は、アプローチ練習に多くの時間をさいている。オフの間は、キャリー距離(宙を飛ばす距離)とラン(転がし)の比率にバリエーションを持たす取り組みをしていたようだ。ランを多くするランニングアプローチや、高くボールを打ち出して、キャリーしてからのランを抑えるピッチショットなどである。
今回の全英女子オープンでは、そういった練習を生かそうと、状況に応じてキャリーとランの比率を変えながら対応しようとした。しかし、ショートゲームやパットにまで大きく影響するほどの風をふまえてのイメージ作りはまだ難しかったようだ。
リンクスの風対策として低弾道のショットにも取り組んだ。風が強い場合、低弾道のショットは高弾道に比べて風の影響を受けにくく距離感や方向をコントロールしやすいからだ。しかし、「ドライバーはまずまずだったけどセカンドのアイアンショットがうまくいかなかった」「練習ではできても、試合では思うように体が動かない」というコメントからも、その取り組みの成果を発揮することはできなかったことがうかがえる。
結果に翻弄されずにスイング作りをする
開幕戦のアース・モンダミンカップで予選落ちしたことで、渋野のスイング改造や肉体改造に対して否定的意見が聞かれた。「余計なことはやらない方が良い」などの意見だ。今回の2連戦の結果により、一層そのような声は強まるかもしれない。
しかし、様々な変化や新しい技術の習得に挑戦すると決めたのは渋野本人。たった数試合の結果に翻弄されるわけにはいかない。
「今回の結果は風やコースの難しさ云々の問題ではないと思う」とも語っていた渋野。ベースとなるスイング作りが道半ばのようだ。自身の取り組みを信じて、試合で練習通りに体を動かすことができるようになれば、結果を出すことができるのではないだろうか。
かつて、宮里藍は2007年の米ツアー5戦連続予選落ちを乗り越え、実力を磨き2009年の米ツアーで初優勝を果たし、2010年には世界ランキング1位に到達した。
渋野はこれから、日本に戻らずに米ツアーを転戦する予定だ。出場資格がある海外メジャーに加えて、米ツアーの推薦出場を狙う。1987年米ツアー賞金女王の岡本綾子氏は「日本にいる時のように惑わされることがないので、良い期間になるのではないか。自分の殻に閉じこもる時間は必要」と言っている。
海外メジャー全制覇を目標に掲げている渋野。この2連戦の結果や内容を整理して、うまく消化し今後につなげて欲しい。笑顔が戻ることをゴルフファンは待っている。
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