SPとフリーの合計点
冬季五輪の花形種目であるフィギュアスケートは羽生結弦(ANA)や高橋大輔(関大KFSC)、紀平梨花(関大KFSC)といった人気選手が続々と登場し、日本でも人気スポーツの一つだ。
ショートプログラム(SP)とフリースケーティング(FS)を行い、合計点で争う試合方式は広く知られているが、細かい採点方法となると、複雑すぎて難しいという声も多く聞かれる。今さら聞けない基礎から調べてみた。
冬季五輪の花形種目であるフィギュアスケートは羽生結弦(ANA)や高橋大輔(関大KFSC)、紀平梨花(関大KFSC)といった人気選手が続々と登場し、日本でも人気スポーツの一つだ。
ショートプログラム(SP)とフリースケーティング(FS)を行い、合計点で争う試合方式は広く知られているが、細かい採点方法となると、複雑すぎて難しいという声も多く聞かれる。今さら聞けない基礎から調べてみた。
フィギュアスケートの採点方法は内訳を大まかに分けると「技術点」(TES=テクニカル・エレメンツ・スコア)と「演技構成点」(PCS=プログラム・コンポーネンツ・スコア)の二つがある。
基本的にこの2項目の合計がスコアになるが、転倒や規定違反などがあった場合はこれに「減点」が加わる形だ。採点の基本は「技術点+演技構成点-減点」と頭に入れておけばわかりやすい。これが大原則だ。
項目別に見ていくと、まず「技術点」はまさに選手の技量を判断するもの。技の評価の基礎となる「基礎点」と、質を評価する「出来栄え点」(GOE)の合計となる。
基本的には難しい技を美しく決めるほど点数が高くなるのがルールの前提だ。ジャンプ、スピン、ステップなど基本の要素(エレメンツ)があり、それぞれ難易度に応じて「基礎点」を定めている。例えばジャンプのトリプルアクセル(3回転半)なら8.0点、4回転トーループなら9.5点という具合だ。
出来栄え点のGOEとは「Grade of Execution」の略称で、演技を審査するジャッジが技のGOEをプラス5からマイナス5の11段階で評価する形になっている。
スピンやステップは最高難度の技術と判断されれば「レベル4」となり、レベル3、レベル2…と逐次評価されていく。
また演技後半に跳んだジャンプの基礎点を全て1.1倍にするルールは最新の方式だと、SPで最後の1本、フリーでは最後の3本のみの基礎点を1.1倍にする形になっている。これは2018年平昌五輪の女子シングル金メダルを獲得したロシアのアリーナ・ザギトワがSPもフリーも全てのジャンプを基礎点が1.1倍になる演技後半に組み入れ、技術点を稼いでいたことから批判も出て、技術と芸術性のバランスの取れた方式になった。
さて次は表現力を示す「演技構成点」。これは5項目で評価するものだ。①スケートの技術②技のつなぎ③演技表現④振り付け⑤音楽の解釈で構成され、各項目が10点満点を0.25点刻みで評価する。技術点との大きな違いは、満点が存在するということ。完璧の出来ならば5つの項目全て10点になる。
演技構成点は音楽の世界観にふさわしい演技をしているかを評価され、ダンスのうまさ、表情、スケート技術の高さなどもすべて得点に換算される。
代表的な違反行為は転倒、演技の時間超過または不足、バックフリップなどの禁止技、小道具使用などの衣装の違反、10秒以上の中断などがあり、それぞれ減点される。これを踏まえておけば、採点の基本は大方わかるだろう。
もちろん演技を見ていると、ジャンプの回転不足や種類などわかりづらい部分もまだ多い。フィギュアスケートはジャンプだけを争う競技でなく、スピンやステップ、技と技のつなぎ、音楽との調和という要素も複雑に絡まり合って作品になっている。
ジャンプは6種類あり、最高難度のアクセルだけ前向きに踏み切る。ほかはすべて後ろ向きだが、エッジ(スケートの刃)の使い方などが違う。トーループ、サルコー、ループ、フリップ、ルッツの順に難度が上がり、採点の基準となる基礎点も高くなる。
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中でもトリプルアクセルで有名なアクセルが一番難しいとされている。ジャンプはすべて後ろ向きに着氷するので、前向きに踏み切るアクセルは、ほかのものより半回転余計に回らなくてはならないからだ。わずかな滞空時間の中、たとえ半回転でも増やすのは難しいといわれている。
浅田真央は銀メダルに輝いた2010年バンクーバー冬季五輪でトリプルアクセル(3回転半)を女子で初めて計3度決め、ギネス世界記録に認定されている。
SPは自分で選んだ音楽の曲想を表現し、ジャンプ、スピン、ステップからなる合計7つの要素で構成されたプログラムを滑走する。演技時間2分40秒±10秒。
フリーは最大ジャンプ7回までとし、男女とも4分±10秒。自分で選んだ音楽の曲想を自由な演技で表現し、プログラムに含むことのできる要素を構成して滑走する。
最近の傾向は、ジャンプの基礎点が軒並み下がり、ジャンプ、スピン、ステップの技を評価する出来栄え点(GOE)は最高5点から最低でマイナス5点までの11段階になって従来の7段階から拡大したことだろう。より高い質を問われ、失敗によるリスクは高まった。
男子はフリーの演技時間が4分に短縮され、ジャンプの数が一つ減った。5項目を評価する演技構成点の割合が相対的に上がり、表現力や芸術性をより問われることになった形だ。
完成度の高いプログラムを演じた選手が勝つ。女子も4回転全盛となったフィギュアの世界は、高い技術の質と芸術性、そして完成度が求められる時代に突入した。
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