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北京冬季五輪内定第1号、フィギュア「りくりゅう」ペアが描く驚異の成長曲線

2021 12/21 06:00田村崇仁
スケートアメリカで2位に入った三浦璃来、木原龍一組,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

結成3季目の9歳差コンビ、世界5位相当

フィギュアスケートのペアで結成3季目の三浦璃来、木原龍一組(木下グループ)が、2022年北京冬季五輪代表内定第1号に決まった。

兵庫・宝塚市生まれの20歳、三浦と愛知・一宮市生まれの29歳、木原の9歳差コンビ。名前の璃来と龍一から愛称「りくりゅう」の2人は今季、グランプリ(GP)シリーズ第1戦のスケートアメリカで2位に入り、日本人同士のペアで初めて表彰台に立った。

11月のGPシリーズ第4戦、NHK杯では自己ベストの合計209.42点で3位。2021年3月の世界選手権(ストックホルム)は合計184.41点で10位だったが、自己ベストのスコアは表彰台が近づく5位に相当する。

カナダ・トロントを拠点に練習を重ね、ダイナミックなリフトや息の合ったスピン、ジャンプを武器に、日本のみならず世界のライバルたちも一目置く驚異的な成長曲線を描いている。

日本スケート連盟は12月15日、三浦、木原組について新型コロナウイルスの変異株「オミクロン」の状況を踏まえて日本に帰国した後にカナダに再入国できなくなる危険性や長期間コーチ不在で練習しなければならない問題などを考慮。参加必須となる全日本選手権(12月22~26日、さいたまスーパーアリーナ)の欠場を了承し、今季GPでの実績を基に代表内定を前倒しの特例で決めた。

結成3カ月でNHK杯5位、カナダで一流の指導体制

もともと「りくりゅう」コンビは、2014年ソチ、2018年平昌両冬季五輪代表の木原に、三浦の方が声を掛けて誕生した。

結成わずか3カ月で2019年11月のNHK杯で合計179.94点で5位と健闘。当時から「相性の良さ」「雷が落ちたような不思議なフィーリング」はともに感じていたという。何より魅力的なのはそれぞれの滑る喜びが、演技や表情から観る者にも伝わってくることだろう。

さらに結成からすぐに拠点をカナダへ移し、一流の指導を受けていることも急成長を後押しする。ブルーノ・マルコットと、彼の妻であり2018年平昌五輪で団体金メダル、ペア銅メダルに輝いたメーガン・デュハメルの夫婦コーチに師事。パートナーだけでなく、コーチ陣とも強固な信頼を築けていることが驚異的な成長を支えている。

特に北京大会で五輪初出場となる身長145センチの三浦は、世界選手権優勝も経験したデュハメル・コーチのポジティブな影響を心技体で受けているという。

5歳からスケートを始め、2015-16年シーズンからペアに転向。幼い頃は空手を習っており、得意技は回し蹴り。自身のツイッターで「ファンの皆さまに演技をお見せできなくなってしまい本当に残念ですが、次の試合で皆様を驚かせられるようなベストな演技ができるように、ブルーノコーチやチームメイトとともに練習に励みたいと思います。よりレベルアップした『りくりゅう』をお見せできるように。もう少しだけ待っていてください」と心境をつづった。

北京五輪は個人5位以内、団体初のメダルに期待大

滑るたびに自己ベストを更新し、進境著しい2人の躍進で、日本は北京冬季五輪で団体初のメダルへも追い風が吹いている。

2014年ソチ冬季五輪から採用された団体はシングル、ペア、アイスダンスでチームを構成し、日本はソチ五輪、2018年平昌五輪で2大会連続の5位。シングルに五輪3連覇が懸かる羽生結弦(ANA)や平昌五輪銀メダルの宇野昌磨(トヨタ自動車)ら世界トップレベルのアスリートを擁し、アイスダンスでも村元哉中、高橋大輔組(関大KFSC)らの台頭でレベルが飛躍的に向上する日本にとって、カップル種目の成長がメダルへの鍵となっている。

身長174センチの木原は4歳からフィギュアスケートを始め、シングルで2010年全日本ジュニア選手権2位。2013―14年季からペアに転向し、高橋成美と組んだ2014年ソチ五輪、須崎海羽とのコンビで2018年平昌五輪に出場。北京大会は3度目の挑戦となる。

国際オリンピック委員会(IOC)の公式サイトでは「りくりゅう」の演技について「魔法のようで美しい」と海外からも評価するコメントが掲載されている。

フィギュアスケートのペアは五輪では1908年ロンドン夏季大会で初開催され、男性が空中に女性を投げてジャンプに導く「スロージャンプ」、男性が女性を頭上に高く投げて回転を終えて降りてくる女性を受け止める「ツイストリフト」など大技が特徴的で、フィギュアで最もダイナミックかつアクロバティックな種目ともいわれている。

団体でのメダルと、個人戦で5位以内を目標に掲げる北京への道。息の合ったコンビで大技のスロージャンプや力強いリフトを磨き、破竹の勢いで成長する「りくりゅう」ペアが北京五輪の舞台でどんな輝きを放つのか心待ちにしたいところだ。

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