ジャパン・オープンで4種類計5度の4回転ジャンプ
まだ発展途上の演技は想定の範囲内だった。フィギュアスケート男子で2018年平昌冬季五輪銀メダリストの宇野昌磨(トヨタ自動車)が、自身にとって最高難度の構成となる北京冬季五輪シーズンの今季初戦に挑んだ。
チーム対抗戦の形式で2グループに分かれ、10月2日、さいたまスーパーアリーナで行われた本格的なシーズン到来を告げるジャパン・オープン。23歳の宇野が「自分の代名詞にしたい」と意気込むフリーは名作「ボレロ」の楽曲にループ、サルコー、フリップ、トーループの4種類計5度の4回転ジャンプを組み込んだ内容だ。演技後半にフリップとトーループの4回転ジャンプを決め、181.21点で1位となってチームの勝利に貢献した。
冒頭でジャンプのミスも相次いだものの、どれだけ失敗しても「今の現在地を知る」という落ち着いた心構えを貫いた。高難度のプログラムを滑りきるためにオフの間に取り組んできた「体力強化」の成果も見えた滑り出しとなった。
ステップは最高難度のレベル4
宇野は冒頭に入れた4回転ループで転倒すると、続く4回転サルコーは2回転と失敗。その後の4回転トーループも着氷がやや乱れ、出来栄え点(GOE)はマイナス評価だった。それでも肉体的にも精神的にも追い込まれる中で、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を鮮やかに決めて踏みとどまった。
基礎点が1.1倍となる演技後半のジャンプでは4回転フリップ、4回転―2回転の2連続トーループに成功。見せ場のステップでは残りのエネルギーを全て使い切るかのように全身を使って情感を込めて踊り切り、最高難度レベル4をそろえた。得点は181.21点。演技後は納得するように何度となくうなずく姿が印象的だった。
4回転ループの再挑戦、鍵山優真に刺激
宇野が再び4回転ループに挑戦し始めたきっかけは、昨季の世界選手権で2位と躍進した18歳の鍵山優真(オリエンタルバイオ)の存在が大きかったという。オフのCM発表会でも鍵山と練習する中で「もっとうまくなりたいと心から思った。自分のスケートがどこまでやれるのか、成長をもっと知りたい」と心境を明かしていた。
後輩の鍵山が積極果敢に4回転に取り組む姿を見て、封印していた4回転ループの練習を本格的に再開。さらに地道な「体力強化」にも取り組み、今季初戦で演技後半に立て直せたことも自信につながった。
今大会後は練習拠点のスイスに戻り、GPシリーズ第1戦のスケートアメリカ(10月22~24日・ラスベガス)に備える。約4カ月後に迫る北京冬季五輪へもう一段階ギアを入れ直す必要がある。宇野にとって勝負の五輪シーズンが幕を開けた。
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