24日開幕、過去4勝4敗、直近はチェンの2連勝
2022年北京冬季五輪の出場枠を懸け、フィギュアの世界選手権は3月24日、ストックホルムで開幕する。
新型コロナウイルスの影響で無観客開催となり、選手の安全を最優先として外部との接触を遮断する「バブル方式」で実施。男子で注目されるのは冬季五輪2連覇の羽生結弦(ANA)と世界選手権3連覇を狙うネイサン・チェン(米国)の頂上対決だろう。
互いにライバルとして認め合い、切磋琢磨する日米チャンピオンの両雄が最後に同じ舞台に立ったのは2019年12月のグランプリ(GP)ファイナル(トリノ=イタリア)。2人は過去8度、同じ大会に出場して4勝4敗の五分で直近はチェンが2連勝している。
4年ぶりの世界一奪回を狙う羽生にとって、東日本大震災から10年の節目となる重要な年。1年4か月ぶりにそれぞれの才能とテクニックがぶつかり合う「氷上の競演」はどちらに軍配が上がるのか―。2020年は新型コロナの影響で中止に追い込まれた世界選手権は、目が離せない名勝負になりそうだ。
「表現力」では羽生結弦リード
26歳の羽生は新型コロナ禍で今季初戦となった2020年12月の全日本選手権で合計319.36点をマークし、5年ぶり5度目の頂点に立った。
フリーの演目は上杉謙信が主役の大河ドラマ「天と地と」。冬季五輪2連覇を成し遂げた2018年平昌大会で滑った「SEIMEI」のように和のテイストがふんだんに盛り込まれ、3種類計4度の4回転ジャンプを決めてほぼミスのない圧倒的な内容だった。
技術点で100点を大きく超え、演技構成点では「音楽の解釈」など3項目で10点満点を付けるジャッジも。ショートプログラム(SP)ではスピンで異例の「0点」とされるハプニングもあったが、戦国時代無敗の「軍神」でもある謙信公の世界観を存分に見せつけた。「表現力」では羽生が一歩リードといえそうだ。
高精度の4回転で全米5連覇のチェン
一方、21歳のチェンは1月の全米選手権でルッツ、フリップ、サルコー、トーループの4種類の4回転ジャンプを駆使し、合計322.28点で5連覇を達成した。2018年平昌五輪以降に無敗を続ける強さは健在だ。
ジャッジが違うために単純比較はできないが、全日本で羽生が出した319.36点を上回り、全米5連覇は1946~52年に7連覇したリチャード・バットン以来の偉業。フリーで計5度も4回転を組み込んだ高難度の演技構成は、どんな挑戦も恐れない向上心のたまものだった。
スポーツデータ会社は北京五輪でチェン「金」、羽生「銀」を予想
スポーツデータの分析、提供を行う専門会社、グレースノート(本社・米国)は2月4日、開幕1年前となった北京冬季五輪のメダル予測を発表し、フィギュアスケート男子の羽生はチェン(米国)の「金」に次ぐ「銀」、女子の紀平梨花(トヨタ自動車)は「銅」とした。
コロナ禍でもさらなる高みを目指す羽生は究極の大技、クワッドアクセル(4回転半ジャンプ)にも挑戦を公言する。チェンに勝つには演技の完成度と表現力のみならず、ジャンプの難度にも挑み続けるほかない。
北京五輪では男子でギリス・グラフストレーム(スウェーデン)以来94年ぶりの3連覇も懸かる。限界に挑戦する胸の高鳴り、ライバルとの勝負も成長を後押しするモチベーションとなるのは間違いない。
異次元のライバル争いは平昌冬季五輪銀メダルで23歳の宇野昌磨(トヨタ自動車)や成長著しい17歳のホープ鍵山優真(神奈川・星槎国際高横浜)も参戦し、北京冬季五輪の大舞台まで火花を散らしそうだ。
女子は紀平梨花、坂本花織らがロシア勢に挑む
女子は全日本選手権2連覇中のエースで18歳の紀平梨花(トヨタ自動車)が4回転時代の世界を席巻するロシア勢に挑む。
「自分史上最高の演技」を目標に掲げ、中学2年で初成功させたトリプルアクセル(3回転半)は今や世界屈指の安定感。2020年12月の全日本選手権では地道な努力が実を結び、フリーで2003年大会の安藤美姫以来2人目の4回転サルコーも成功した。大きな自信を胸に4回転トーループ挑戦にも意欲を示し、ライバルを追う。
2020年7月、新たに師事した元世界選手権王者のステファン・ランビエル氏の母国スイスでも強化を図った。氷上練習を倍に増やし、陸上トレーニングでは宇野ら男子選手と同じメニューで下半身をいじめ抜いたという。
20歳の坂本花織(シスメックス)も今季復調。質の高いジャンプに加え、表現力も磨いて完成度の高さでロシア勢の壁に挑む。
ロシアは16歳のアンナ・シェルバコワとアレクサンドラ・トルソワ、24歳のエリザベータ・トゥクタミシェワが出場予定。昨季グランプリ(GP)ファイナルと欧州選手権を制したアリョーナ・コストルナヤは選考から漏れたが、ハイレベルの争いで紀平ら日本勢がどこまで勝負できるか興味は尽きない。
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