北京冬季五輪へ課題はリフトやツイズルと自覚
フィギュアスケート男子の2010年バンクーバー冬季五輪銅メダリストでアイスダンスへ転向した34歳の高橋大輔(関大KFSC)は「氷上の表現者」として、2021年もさまざまな分野に「挑戦」をキーワードとする年になりそうだ。
3月16日で35歳を迎えるが、子どものころに氷の上で美しく踊る男女の姿をテレビで見て憧れたというアイスダンスの世界は予想以上に奥が深く、2022年北京冬季五輪出場を見据えてシングルとは違った特有のリフトやツイズル、的確なエッジワークなど「新しいことばかりで課題が山積み」と自覚する。
ペアの相手を持ち上げるため「肉体改造」も継続しており、変化を感じながら日々の喜びもあるチャレンジ。パートナーの村元哉中(関大KFSC)と組んでアイスダンスに華やかにデビューし、2020年12月の全日本選手権は2位だった。
世界一とも評されるステップで日本男子初の五輪メダリストに輝いた先駆者は「大きな壁がたくさんあるが、2021年の全日本選手権で表彰台の真ん中に乗ること」を唯一にして最大の目標に掲げる。
5月は横浜で主演アイスショーにも挑戦
米国を拠点に村元と練習を重ねる高橋は、5月15日から17日まで神奈川・横浜アリーナで主演アイスショー「LUXE」にも挑戦する。
「LUXE」とはフランス語で優雅さや豪華さを意味しており、現在世界中が新型コロナウイルス禍で未曾有の出来事に見舞われる中で「世界巡り」をテーマにした作品だ。高橋はこれまでアイスショー「氷艶」シリーズにも出演してきたが、今回は宝塚歌劇団の原田諒氏が構成・脚本・演出を手掛ける。
出演者には2006年トリノ冬季五輪フィギュアスケート女子金メダリストの荒川静香をはじめ、主題歌を担当する平原綾香、元トップ選手の鈴木明子、織田信成、村上佳菜子、村元哉中らも名を連ねた。
華麗なる世界観を創り上げ、高橋は前作『氷艶2019』で演じた「光源氏」から「光の王子」に姿を変え、訪れる観客を夢の旅に誘う。
部屋のリノベーションでも「表現」に挑戦
近年は投資型マンション事業を手掛ける「スカイコート」との共同プロジェクトで、高橋はマンションのトータルコーディネーターや部屋のリノベーションにも挑戦している。
過去にアイスショーで「フィギュアスケーターになっていなければ、建築士になりたかった」と話したこともあるほど建築やデザインは興味のある分野。スポンサー契約する「スカイコート」を通じ、挑戦する「世界に一つだけの物件」と題したリノベーション・プロジェクトでは「色遊びができる部屋」として奇抜ながら青とピンクを基調にした独特のセンスあふれる部屋もこのほど形にした。
新型コロナ禍でリモートワークでも利用できる部屋をイメージしたという。アスリートにとっても住居は最高の癒しの場所。子どものころから住まいにも関心があっただけに、リラックスできるスペースをどんなデザインにするかは高橋にとって興味深いテーマのようだ。
本職のフィギュアスケートとは別の多分野でもこうした時間を持つことで「新たな発見」があり、相乗効果も期待できる。
アクシデントも乗り越え、目標は全日本制覇
村元とのペア結成からまだ1年余り。2020年11月のNHK杯でデビューし、初出場の全日本選手権では村元が公式練習中に左膝を痛めるアクシデントもあった。
それでも2人の目標は明確だ。日本スケート連盟の公式ツイッターでは、2022年北京五輪出場を大きな目標に掲げ、村元は「2021年の目標は全日本チャンピオンになることです」と宣言し、高橋も「同じく、全日本チャンピオンになることを目標に頑張ります」と迷いなく意気込んだ。
高橋は初出場で2位だった全日本の演技後のテレビインタビューで「ミスがあった中でも新たな課題が見つかった。体感では3年ぐらいやっているぐらい、中身の濃い1年だった。もっと2人で合わせていかないと。シングルとは違う醍醐味があっておもしろい」と笑顔で語った。村元も「5年ぐらいのコミュニケーションをとれた」と信頼関係は深まっている。
これまでタフな精神力で怪我と戦い続けた高橋は新たな挑戦を「吸収することだらけで本当にやって良かった」と楽しみながら前向きに捉えている。これこそ大きな強みともいえるだろう。
唯一無二の表現者が歩み始めたスケート人生第2章。氷上のエンターテイナーは「僕らの強みはスピード感。リフトやステップの強化はやっていきたい」と課題を明確に受け止め、全日本の頂点へ無欲の挑戦を期している。
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