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フィギュア宇野昌磨、18歳の初挑戦から成長物語る世界選手権の足跡

2021 3/22 06:00田村崇仁
2016年の世界選手権に出場した宇野昌磨Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

5度目の挑戦で「世界一」に手は届くか

フィギュアスケートの世界選手権は3月24日、ストックホルムで開幕する。男子で3連覇を目指すネイサン・チェン(米国)と冬季五輪2連覇の羽生結弦(ANA)の頂上対決が注目を集める中、2018年平昌冬季五輪銀メダリストで全日本選手権4連覇の実績を持つ23歳の宇野昌磨(トヨタ自動車)もこの2人に割って入る十分な実力がある。

5度目の世界選手権挑戦で過去最高の2位を上回る初の「世界一」の称号に手は届くか。2020年12月の全日本選手権は5連覇を逃したが、フリーで序盤のサルコーとフリップの4回転ジャンプを鮮やかに決め、新型コロナウイルス禍で約10カ月ぶりとなった実戦を心の底から楽しむ姿があった。

過去の世界選手権を振り返ると、憧れの先輩で競技人生の目標でもある羽生の背中を追う宇野の成長を物語る足跡が見えてくる。

世界選手権デビューは涙の7位

シニア本格参戦1年目だった18歳の宇野が2016年3月、愛知・中京大中京高時代に初出場した世界選手権は米ボストンが舞台だった。

ジュニアグランプリ(GP)ファイナルと世界ジュニア選手権「2冠」の称号を武器に、シニアでも2015年12月のグランプリ(GP)ファイナルで3位に入るなど世界の強豪相手に堂々と渡り合える実力を証明して迎えたデビュー戦。冒頭で4回転トーループとトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を着氷したショートプログラム(SP)は、終盤の連続ジャンプが乱れて悔しさの残る内容ながらも4位につけた。

シーズンの勢いそのままに逆転で表彰台を狙ったフリーの演技はオペラ「トゥーランドット」に乗せて4回転トーループとトリプルアクセル2本を基礎点が1.1倍になる演技後半に組み込む意欲的な構成だったが、転倒などミスが重なり、合計264.25点で涙の7位。シニアにフル参戦し、GPシリーズで初優勝するなど着実に階段を上ってきた若武者の充実あふれるシーズンはほろ苦い幕切れとなった。

ボストン大会はハビエル・フェルナンデス(スペイン)が2連覇、羽生結弦(ANA)が2位だった。

2度目の挑戦で初の表彰台となる銀メダル

2度目の挑戦は2017年3月、フィンランドのヘルシンキが開催地。2018年平昌五輪の行方を占う重要な大会でもあった。

中京大に進学した19歳の宇野はフリップの4回転ジャンプを初めて成功させ、3種類に増えた4回転ジャンプと表現力も磨き、全日本選手権も初制覇した自信をリンクでも雄弁に表現した。

SPは4回転フリップ、4回転―3回転の2連続トーループを序盤で決めて流れに乗ると、演技構成点でも5項目のうち4項目が9点台と高評価を受けて当時世界歴代3位の104.86点をマークし、堂々の2位発進。フリーでもループを含めて3種類の4回転に挑み、自己ベストを大幅に更新する合計319.31点で初の表彰台となる2位に入った。

このシーズン、出場した全ての大会で表彰台に立ったのは成長の証しだろう。ヘルシンキ大会は羽生が合計321.59点でSP5位から大逆転し、3季ぶり2度目の優勝を果たした。

平昌五輪「銀」、逆境の中で2年連続2位

3度目の舞台は2018年3月、イタリアのミラノだった。平昌冬季五輪王者の羽生が故障で欠場。五輪直後の大会でどんな選手もコンディション調整が困難とはいえ、平昌五輪で銀メダルに輝き、日本男子の看板を背負う20歳が初優勝を狙える好機でもあった。

しかし大会直前に右足甲の痛みを悪化させ、公式練習も数分で切り上げるほど逆境の中で迎えたライバルとの闘いになった。

SPは五輪後に新調したスケート靴が合わず、右足甲に痛みを抱えながらもミスを最小限にとどめて94.26点で5位発進。フリーでは「攻める」をテーマにイタリア出身のプッチーニのオペラ「トゥーランドット」を熱演し、五輪と同じ4回転4本の構成に挑んだ。

不調だったジャンプの成功は4回転トーループの1度のみだったが、苦境の中で2位の179.51点をマークし、合計273.77点で2年連続の銀メダルを獲得した。

ミラノ大会はネイサン・チェン(米国)がSP、フリーともに1位で世界歴代2位の合計321.40点で初制覇した。

4度目は「世界一」公言も空回りで4位

4度目の舞台は2019年3月、さいたまスーパーアリーナ。1カ月前の四大陸選手権で主要国際大会を初制覇した21歳の宇野にとっては憧れであり、超えたい存在でもある羽生と平昌冬季五輪以来の再戦となった。

だが世界一を目指すと公言した思いは空回りし、SPは冒頭の4回転フリップが回転不足となって転倒するなど91.40点で6位と出遅れた。

巻き返しを期したフリーでも得点源となる4回転ジャンプで冒頭のサルコーを含めて3度のミスが響き、合計270.32点で悔し涙をにじませる4位に終わった。国際大会で表彰台を逃すのは初出場した3年前の世界選手権以来となった。

さいたま大会はネイサン・チェンがSPに続いてフリーも1位の216.02点をマークし、合計323.42点で2連覇。冬季五輪2連覇の羽生がフリー2位の206.10点をマークし、合計300.97点で銀メダルを獲得した。

モントリオール大会はコロナで中止「明けない夜はない」

2020年3月、モントリオールで予定された世界選手権は新型コロナウイルス禍で中止になった。フィギュアの世界選手権は1961年に開催地プラハに向かう航空機が墜落し、米国チーム全員が死亡したために中止になったこともある。

宇野は日本スケート連盟を通じ「残念な気持ちもございますが、明けない夜はないと信じ、今自分にできることを精いっぱいやっていきたい」とコメントした。スイスに拠点を移し、心技体ともたくましく成長した宇野は2年ぶりの舞台でこれまでとはまた違った味わいの演技を見せてくれそうだ。

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