「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

高橋大輔が古典バレエの名曲でいよいよアイスダンスデビュー

2020 11/8 11:00田村崇仁
高橋大輔Ⓒゲッティイメージズ
このエントリーをはてなブックマークに追加

Ⓒゲッティイメージズ

11月27日開幕のNHK杯で

フィギュアスケート男子の2010年バンクーバー冬季五輪銅メダリストで、今年から「氷上の社交ダンス」と呼ばれるアイスダンスに転向した34歳のレジェンド、高橋大輔(関大KFSC)が11月27日に開幕する今季のグランプリ(GP)シリーズ最終戦、NHK杯(大阪)でいよいよデビュー戦を迎える。

新型コロナウイルス感染症の再拡大で国際大会の中止や延期が相次ぐ中、1月に新ペアを結成した27歳の村元哉中とは米フロリダ州を拠点に練習を重ねており、自身のインスタグラムで村元と一緒に氷上を滑りながらにこやかに今季の新たなプログラムを報告。リズムダンス(RD)ではコメディー映画「マスク」の音楽、フリーは古典バレエ「ラ・バヤデール」の名曲を使用することも公表された。

クラシックバレエ、ラ・バヤデールのエキゾチックで幻想的な「愛」の世界観を2人のアイスダンスでどう表現できるかが最大の見どころだ。

子供の頃からアイスダンスに憧れ

圧倒的な表現力で世界のトップシーンを走り続け、日本人男子初の五輪メダルや世界選手権初制覇などフィギュア界の歴史を次々と塗り替えてきたパイオニア。実は子どもの頃から憧れたのはシングルではなく、アイスダンスの選手だ。

氷上で美しく踊る男女ペアの姿をテレビで見て魅了されてきたという。2022年北京冬季五輪へ新たな旅立ちとなる新プログラムのRDに向け、公式ホームページで「映画MASKの世界にチャレンジします。(主演の)ジム・キャリーさんの多彩な表情であったり、動きを表現できるように精いっぱい頑張ります。最初から最後まで楽しめるプログラムになってますので、皆さんも巻き込んで一緒に盛り上がっていきたいと思ってます!」とコメント。

愛を表現するフリーについては「クラシックバレエ、ラ・バヤデールの世界を表現します。皆が知っているからこそ、独特の世界を表現するのは難しいと思いますが、クラシックバレエという基本を大事にしつつ、2人ならではの世界を皆さまにお届けできるよう頑張ります」と意気込んだ。

平昌15位・村元哉中も「愛」誓う

アイスダンスは冬季五輪の花形種目としてロシアを中心に欧米のレベルが高く、五輪でまだ日本選手の入賞さえなく、国内での関心度は比較的薄い。それでも世界一と評される情感あふれるステップを武器にする高橋の参戦は世界でも注目を集めるだろう。

カップルを結成した村元は2018年平昌冬季五輪で今は亡きクリス・リードさんとコンビを組んで日本勢過去最高に並ぶ15位に入った実力者だ。新プログラムのRDに関して公式サイトで「コロナ禍で振り付けのスタートが大変ではありましたが、たくさんの方々のアイディアが詰まった、みんなで作り上げたプログラム」とコメント。「最初から最後までとても楽しい、エネルギッシュなプログラムになっているので楽しんでいただけたらと思います!」と自信をのぞかせた。

フリーダンスでは情感あふれる「愛」の世界観を誓う。「ストーリー後半の影の王国の場面をメインに、主人公ニキヤが息絶えた後、ソロルがバヤデールの幻覚をみて、夢の中でニキヤとの愛を誓いラストダンスをするシーンをテーマにしたプログラムです。ラ・バヤデール独特のエキゾチックで幻想的な世界を二人で表現できればと思います」と意欲満々だ。スケート人生の新たなステージに向け、愛と夢が詰まった2人の挑戦となる。

ダンスやバレエの経験活かす

「氷上の表現者」高橋は、スケート靴を脱いで氷上から舞台へ活躍の場を移してダンスショー「ラブ・オン・ザ・フロア」に挑んだ経験もある。

氷の上ではスケートのエッジを巧みに操って多彩な動きを見せてきたが、陸の上ではすべて自分で動きをコントロールする必要があった。全方向から見られるスケートと、正面から良く見えなくてはいけないダンスショーの違いも発想の転換を求められた。そんな困難さと向き合ったこともアイスダンスのバレエ曲できっと活かされるはずだ。

2014年ソチ冬季五輪前にダンスの基本としてバレエを習った土台もある。その共通点は「表現力」だった。もともと自らの演技で見てくれる人に幸福感や喜びを与えたいという「エンターテイナー」の気質が備わっているのだろう。

NHK杯は最多の5度優勝

アイスダンスのデビュー戦となるNHK杯は過去9度出場し、男子シングルで最多の5度優勝を成し遂げている大会だ。

2002年に16歳でシニア本格参戦として初出場。当時は日本男子初の世界ジュニア選手権制覇を果たした岡山・倉敷翠松高のホープで注目され、転倒もあって8位とほろ苦い幕開けだった。

2006年にフリーで4回転を含むすべてのジャンプを決めて初優勝し、2連覇を達成した2007年に披露したヒップホップ調のリズムで演技するショートプログラム(SP)の「白鳥の湖」はフィギュア界に衝撃を与えて高い評価が定着した。

世界一と評される代名詞のステップを存分に見せつけたのは、今も語り継がれる2010年のSP「マンボ」。軽快なリズムとラテン音楽のメドレーは「楽しく、暑苦しく」がテーマと宣言し、身をくねらせて情熱的なステップを踏んで観客を魅了した。

フリーは大人の色気が漂うアルゼンチンの「タンゴ」。唯一無二の圧倒的な表現力とダイナミックな演技で、いずれも高橋特有の「男の色気」や独特の「世界観」を不動のものにしたと言っていいだろう。

ステップと表現力を求められるアイスダンスは男女一組で音楽に合わせ、ステップ、リフト、スピンなどのスケート技術や互いの動きの芸術性を競うため、欧米で人気も高い。

度重なる大けがや一度引退したブランク、先の見えないコロナ禍を乗り越え、飽くなき情熱と探究心を持つ「氷上のアーティスト」のスケート人生第2章が幕を開ける。

【関連記事】
羽生結弦の言葉が誰の心にも刺さる理由
羽生結弦が珠玉のプログラムを磨き続ける理由
高橋大輔、アイスダンス転向で2年後の北京五輪へ新たな旅立ち

おすすめの記事