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今季のフィギュア女子総括、紀平梨花は4回転再挑戦、本田真凜も復活へ足掛かり

2020 4/5 06:00田村崇仁
全日本選手権の(左から)樋口新葉、紀平梨花、川畑和愛Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

「ロシア3人娘」席巻、13歳ワリエワも台頭

今季のフィギュアスケート女子はシニアデビューした「ロシア3人娘」のアリョーナ・コストルナヤ、アンナ・シェルバコワ、アレクサンドラ・トルソワが主要大会のタイトルを総なめにし、新たな世代台頭の衝撃を残して幕を閉じた。

16歳のコストルナヤは優雅で大人びた表現力と安定したトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を武器に、グランプリ(GP)ファイナルと欧州選手権で初出場優勝。ともに4回転ジャンプが武器で16歳のシェルバコワはロシア選手権を2連覇し、15歳のトルソワはグランプリ(GP)シリーズ第2戦、スケートカナダのフリーで166.62点の世界最高得点をたたき出した。

GPファイナル女子成績

新型コロナウイルスの感染拡大で3月18日に開幕予定だった世界選手権(モントリオール)は中止となったが、3月の世界ジュニア選手権では13歳の天才少女、カミラ・ワリエワ(ロシア)が大技の4回転ジャンプと高い表現力を武器に異次元の強さを見せ、ジュニア世界最高の合計227.30点で初制覇。2022年北京冬季五輪に向け、ロシア3人娘とともにエテリ・トゥトベリゼ・コーチに師事する「フィギュア王国」の強さは来季も続きそうだ。

フィギュア女子が4回転ジャンプを次々に成功させる理由

紀平梨花、コストルナヤ参考に完成度を追求

日本勢は17歳の紀平梨花(関大KFSC)が2月の四大陸選手権で2連覇を達成し、初の全日本選手権女王にも輝いた。一方、実戦でまだ成功がない大技の4回転サルコーは来季へ挑戦を持ち越した。昨年12月のGPファイナルで初めて挑んだが、転倒して4位。4回転やトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を駆使するロシア勢に表彰台を独占された。

四大陸選手権女子成績

ただ2月のチャレンジ・カップでは4回転サルコーを回避したフリーで参考記録ながら自己ベストを1.66点上回る156.38点をマークし、合計230.65点で2連覇。ロシア勢で最も参考にしたい存在が4回転の大技に固執しないコストルナヤだ。「ロシア3人娘」の中でただ一人4回転を跳ばないが、圧倒的な完成度と表現力の高さで1月の欧州選手権も他の2人を抑えて初制覇した。

高難度のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を一つ入れるショートプログラム(SP)、二つ組み込むフリーの演技構成も紀平と似通っており、刺激にもなるようだ。

来季は4回転サルコーの大技にも再挑戦しつつ、難度と完成度の高さを追求した演技構成で勝負を続ける。

紀平梨花4回転サルコー初挑戦「打倒ロシア勢」へ七転び八起き

平昌五輪代表の宮原知子、坂本花織は苦闘

2018年平昌冬季五輪4位の宮原知子(関大)、6位の坂本花織(シスメックス)は苦闘したシーズンだった。

22歳の宮原は幼少期から師事する浜田美栄コーチだけでなく、カナダのトロントを拠点に指導するリー・バーケル氏にも教えを受けたが、ジャンプの回転不足など精度が上がらなかった。全日本では表彰台を逃し、自身のブログで「来季に向けて、じっくりと考えながら練習していきます。『超知子』実現に向け、頑張っていきます」と奮起を期した。

19歳の坂本も持ち味のスピードと豪快なジャンプが影を潜め、GPシリーズなど主要大会で表彰台に立てなかった。2連覇が懸かっていた昨年12月の全日本選手権でも6位。それでも2月の四大陸選手権では4回転トーループにも挑戦し、来季への決意をのぞかせた。

「ミス・パーフェクト」宮原知子、4回転全盛時代に表現力で輝き

樋口新葉、本田真凜は復調

全日本選手権で2位に入った19歳の樋口新葉(明大)は低迷期を乗り越え、躍動感が戻った復調のシーズンだった。2018年世界選手権銀メダリスト。目標としたトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)成功は来季へ持ち越したが、四大陸選手権でも4位に入った。

全日本選手権女子成績

2016年の世界ジュニア選手権女王、18歳の本田真凜(JAL)は昨年12月の全日本選手権で8位。持ち前の可憐で華やかな演技は復調を印象付け、2月のババリアン・オープン(ドイツ)では宮原に次いで2位に入った。「天才少女」と呼ばれたスター性あふれる笑顔と共に輝きを取り戻しつつある。

今季はグランプリ(GP)シリーズ第2戦のスケートカナダ直前に交通事故に遭うなど不運もあったが、強行出場してフリーでは120点台を出した。今春から青森山田高を卒業して明大に進学することも決まり、来季へさらなる飛躍を期す。これまで通り練習拠点は米国に置き、ラファエル・アルトゥニアン・コーチに師事する。完全復活への足掛かりとなるシーズンにしたいところだ。

本田真凜、交通事故で満身創痍でも6位の熱演で見えた光
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川畑和愛、河辺愛菜らジュニア世代も台頭

新たなジュニア世代も台頭してきている。18歳の川畑和愛(N高東京)はスピード感のある安定した演技で全日本選手権3位と大健闘した。

15歳の河辺愛菜(関大KFSC)は冬季ユース五輪で4位。日本女子のエースに成長した紀平も指導する浜田美栄コーチの教え子でもある。

2人とも世界ジュニア選手権では表彰台に食い込めなかったが、ロシア勢に食らい付くためにも来季は一層の底上げが求められそうだ。

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