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フィギュア女子が4回転ジャンプを次々に成功させる理由

2019 12/4 11:00田村崇仁
紀平梨花Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

ロシアの新星3選手がGP総なめ、紀平梨花も挑戦

フィギュアスケート女子は今季から本格的な4回転ジャンプ時代に突入し、グランプリ(GP)シリーズでシニアにデビューしたロシアの新星、15歳のアンナ・シェルバコワとアレクサンドラ・トルソワ、16歳のアリョーナ・コストルナヤの3選手が全6大会を総なめにした。8月のジュニアGPシリーズでは14歳のアリサ・リュウ(米国)が国際スケート連盟(ISU)公認大会で女子では初めて同一の演目で4回転と3回転半を成功させた。なぜ難度の高い4回転を跳べる選手が続々と出てきたのか―。

昨季のGPファイナル女王、17歳の紀平梨花(関大KFSC)もオフシーズンから「新時代」を予見して4回転サルコーの習得に挑んでおり、新たな大技を武器に頂点を争うハイレベルなステージで対応を求められている。

フィギュアのジャンプ基礎点ⒸSPAIA

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SNSで羽生やチェンの4回転研究成果?

シェルバコワはGPシリーズ第1戦、スケートアメリカのフリーで男子でも難しい4回転ルッツを2度決め、世界歴代2位の160.16点を出して衝撃のGP初出場優勝を果たした。コストルナヤは武器のトリプルアクセル(3回転半)に表現力の高さも際立ち、第6戦のNHK杯でGP2連勝。トルソワは第2戦のスケートカナダのフリーで4回転を3度も決める驚異的な演技を見せ、世界最高の合計241.02点で紀平に逆転勝ちした。

「ロシア三人娘」と呼ばれる彼女たちは全員がロシアのコーチ、エテリ・トゥトベリゼの門下生。昨季までシニアでは30年間、トリプルアクセルが最高難度の武器と呼ばれる時代だった。

10代選手が今季から次々とジャンプの基礎点が高い4回転に挑戦できるのは、SNSの発達で各選手の動画を見て研究しやすくなったことも背景にあるようだ。この年代は体形がスリムでまだ小柄のため回転速度を速くして大技を習得しやすい利点もある。

トルソワは男子のネーサン・チェン(米国)や羽生結弦(ANA)の4回転を参考に鍛練を重ねているという。各国で研究が進み、効率的なフォームが確立された。

4回転は安藤美姫が女子で最初に成功

女子の4回転は2002年に当時14歳だった安藤美姫がジュニアGPファイナルで4回転サルコーを決めたのが最初。それから16年後の2018年世界ジュニア選手権(ソフィア)で当時13歳のトルソワが女子で史上初となるサルコー、トーループの2種類の4回転ジャンプに成功し、合計225.52点で初優勝、新時代の到来を告げた。技術点だけで92.35点も稼ぎ、2018年平昌冬季五輪金メダルの17歳、ザギトワ(ロシア)の81.62点を大きく超える驚異の数字をたたき出す快挙だった。

平昌五輪はトリプルアクセルを跳ぶ選手も不在。しかし新たな時代のうねりは下の世代のジュニアレベルで起きていたのだ。

昨季シニアデビューした紀平がトリプルアクセルを武器に世界を席巻したことも大きな刺激となり、大技で高得点を狙う機運が一気に高まった。

技術の進化、「ハーネス」でイメージ容易に

技術の進化も大きい。体をつり上げる補助器具「ハーネス」が発達し、回転軸や飛距離をイメージしながら感覚を身につけられるようになった。

2019年世界選手権(さいたま)では19歳のエリザベト・トゥルシンバエワ(カザフスタン)がISU公認大会でシニア女子初の4回転サルコーを成功。GP第5戦のロシア杯で2位と復活した元世界女王、20歳のエフゲニア・メドベージェワ(ロシア)も4回転サルコーの挑戦に慎重ながら意欲を見せている。平昌五輪女王のザギトワも持ち前の安定感と表現力に加えて新たな武器を模索中だ。

ジャンプ偏重に批判の声も

一方、ジャンプ偏重の流れが美しさや芸術性、プログラムの意味を超えて優勢になることへの批判の声も出ている。体が成長する過程でともすればジャンプのバランスを崩すこともあり、4回転の大技はけがへのリスクも尽きない。

それでも競技レベルが上がり、より高度なジャンプを目指す流れはしばらく続くだろう。日本選手のトリプルアクセル成功者はパイオニアの伊藤みどりを皮切りに、中野友加里、浅田真央、紀平と続いている。次に日本勢で4回転を跳ぶ選手は誰なのか。2022年北京冬季五輪が史上稀なるハイレベルな戦いになることは間違いない。

トリプルアクセル成功者ⒸSPAIA

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