「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

井上尚弥に期待される日本ボクシング界初の「生涯無敗」世界王者

2022 11/26 06:00SPAIA編集部
ダスマリナス戦の井上尚弥,Ⓒゲッティイメージズ
このエントリーをはてなブックマークに追加

Ⓒゲッティイメージズ

23戦全勝の井上尚弥

プロボクシングのWBA・WBC・IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(29=大橋)がWBO王者ポール・バトラー(34=イギリス)と戦う4団体統一戦は12月13日に東京・有明アリーナで行われる。

井上は勝てば日本初、世界でも史上9人目の4団体統一となり、その後は1階級上のスーパーバンタム級に上げることを示唆している。また、かねてから35歳まで現役を続けたい意向も示しており、いずれはフェザー級に上げて日本初の5階級制覇まで期待できる。

井上はここまで23戦全勝(20KO)と負け知らず。6月に日本外国特派員協会で会見した際には「無敗でゴールするのが理想」と語っている。

生涯無敗―。言うのは簡単だが、世界トップレベルの選手が実現するのは並大抵のことではない。ましてや、ひとつのタイトルを長く防衛するのではなく、井上は王座統一や複数階級制覇に挑み続けている。より強い相手を選んで無敗を守るのは「神業」と言っても過言ではないだろう。

無敗のまま引退した日本の世界王者は皆無

これまで日本では外国出身の「輸入ボクサー」を除いて92人の世界王者が誕生しているが、無敗のまま引退した選手は皆無。現役でも世界王者クラスで無敗は、井上と元WBOフライ級王者・中谷潤人の2人しかいない。

多くの選手は敗北から立ち上がり、技術や体力、精神力を磨いてキャリアアップしていく。無敗のまま世界王者になっても防衛戦で敗れたり、相手が強くなるほど負けるリスクが高まるのは当然だ。

海外に目を向けると、無敗のまま引退したボクサーは少なからずいる。日本でも有名なのはフロイド・メイウェザー・ジュニアだろう。スーパーフェザー級からスーパーウェルター級まで5階級制覇し、50戦全勝(27KO)をマーク。引退後は日本で那須川天心や朝倉未来とエキシビションマッチのリングに上がった。

日本でお馴染みのボクサーで言えば、元世界ミニマム級、ライトフライ級王者リカルド・ロペスも51勝(37KO)1分と無敗を守ったまま引退した。ロペスが最初にタイトルを奪ったのは東京・後楽園ホールで、当時WBCミニマム級王者だった大橋秀行。衝撃の5回TKOで奪ったミニマム級タイトルをその後22度も防衛し、歴史に残る名王者となった。現在の井上の所属ジム会長と考えると、不思議な巡り合わせでもある。

ほかにも元世界ヘビー級王者ロッキー・マルシアノは49戦全勝(43KO)、元世界スーパーミドル級王者ジョー・カルザゲは46戦全勝(32KO)、日本のリングにも上がった元世界スーパーフェザー級王者エドウィン・バレロは27戦全KO勝ちだった。「生涯無敗」の世界王者はほかにもいるが、いずれにしても歴史に残る名王者ばかりだ。

懸念は肉体的ハンデ

井上は現在29歳。誕生日は4月10日なので、仮に35歳まで現役を続けるとすれば、あと5年と少しだ。1年に3試合消化するとしても、多くてもあと15戦。生涯30戦以上して無敗、しかも6戦目で世界ライトフライ級王座を奪った井上は、キャリアのほとんどが世界戦なのだ。常にハイレベルで戦い続け、見応えのある試合をファンに提供し続けるボクサーは世界でも類を見ない。

「生涯無敗」に向けて今後、懸念されるのは肉体面だろう。井上は身長165センチ、リーチ171センチ。バンタム級でも大きい方ではなく、これから階級を上げていけば、自分よりサイズの大きい選手との対戦がほとんどだ。

井上のスピードとパワーは十分に通用するだろうが、パンチの当たる距離が遠くなるのは不安材料でもある。例えば、大橋ジムの同僚で東洋太平洋フェザー級王者の清水聡は身長179センチ、リーチ181センチ。サイズだけで言えば、井上は相当なハンデを背負っていることになるのだ。

だが、それでも日本が誇る井上尚弥なら、という期待を抱かせるのがスーパースターたる所以。まずはdTVおよび、ひかりTVで独占配信される12月13日の一戦で、無敗のまま4団体統一を果たす快挙をこの目に焼き付けたい。

【関連記事】
井上尚弥4団体統一戦の放送は動画配信のみ、テレビ中継なし
日本ボクシング界の歴代世界バンタム級王者団体別一覧、井上尚弥が4団体統一へ
井上尚弥の4団体統一が過去8人より難易度が高い理由、KO奪取なら史上初