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バスケ男子日本代表 ニュージーランド戦から見えたポジション争いの全貌

バスケットボール男子日本代表の集合写真Ⓒマンティー・チダ
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Ⓒマンティー・チダ

格上のニュージーランドと1勝1敗に終わる

2019年8月、男子日本代表「バスケットボール日本代表国際試合 International Basketball Games 2019」で、ニュージーランドとの親善試合に臨んだ。

12日の第1戦(千葉ポートアリーナ開催)は99-89で勝利し、14日の第2戦(川崎市スポーツ・文化総合センター開催)は87-104で敗れて、対戦成績を1勝1敗とした。

第1戦は、凱旋試合となった#8八村塁(ウィザーズ)のレイアップで先制。#7篠山竜青(川崎)と#22ファジーカス ニック(川崎)のコンビで得点を稼ぐなど、日本はニュージーランドがタイムアウトを請求した残り4分49秒の段階で18-2とリードしてペースを掴む。2Qに入ると、ニュージーランドの激しいドライブに苦しみ、得点差を詰められるものの、49-43で日本がリードしたまま前半を終える。

後半に入り、相手の猛攻を受けつつも、#6比江島慎(宇都宮)の3pを皮切りに、#18馬場雄大(A東京)のダンクやフリースロー、ファジーカスのポストプレーなどでリードを11点とする。そこから再びニュージーランドに得点差を詰められるが、#9 Corey Websterのアンスポーツマンファウルから獲得したフリースローを#24田中大貴(A東京)が2本入れ、#15竹内譲次(A東京)がセカンドチャンスからシュートを決めると、ファジーカスがバスケットカウントを成功。2本連続で得点するなど、3Q終了時には日本のリードは再び11点に。4Qは出だしからニュージーランドと点の取り合いになるが、得点差は詰まらずに99-89で日本が勝利した。

バスケ男子日本代表・八村塁Ⓒマンティー・チダ

Ⓒマンティー・チダ


第2戦は、代表合宿中に足首を痛めていた#12渡邊雄太(グリズリーズ)が先発として試合に復帰し、八村、ファジーカスと初めてそろい踏みをする。試合は、立ち上がりからお互いに点の取り合いとなるが、中盤になるとニュージーランドのゾーンディフェンスに苦しむ。#3 Finn Delanyのスティールからファストブレイクなどで4点リードを許し、八村がバスケットカウントで意地を見せるものの、1Qは25-29で終える。さらに2Qではニュージーランドの3p攻勢でリードを広げられ、終盤にも相手の激しいペイントアタックに苦しみ、42-61でリードは19点と引き離された。

後半に入ると、日本はファジーカスのバスケットカウントとポストプレーできっかけを掴み、馬場が速攻から積極的にドライブを仕掛けて相手のファウルを誘う。ファウルで獲得したフリースローを確実に沈めて、点差を縮めていくが、14点のリードを許したまま、最終Qに進む。

ここで見せ場を作ったのは、3Q終盤からコートに入っていた#32シェーファー アヴィ幸樹(滋賀)。直前までニュージーランドのペイントアタックに苦しみ、竹内譲次のオフェンスファウルで厳しい局面を迎えたが、シェーファーが直後の守備で相手のアタックに対してブロックショットを炸裂。そこで攻撃に転じたところで、#13安藤周人(名古屋D)がレイアップを沈めて得点。シェーファーは自らのオフェンスリバウンドから得点でも貢献し、再び守備でブロックショットを決めるなど攻守で活躍した。途中からコートに入っていた#3安藤誓哉(A東京)もそれに続き、8点差まで詰めていく日本。しかしニュージーランドのドライブに対応が遅れ、パスミスからのファストブレイクなど、日本は一気に失点を重ね、結果、87-104で日本は敗れた。

篠山に続く司令塔ポジション争いはベンドラメ?安藤誓哉?それとも?

中国で行われるワールドカップに向けて、初の親善試合となったニュージーランド戦。まずポイントにしたいのは、日本の司令塔だ。これまでスタートから起用されていた富樫勇樹(千葉)が右手第4中手骨骨折のため、ワールドカップ本戦の欠場が濃厚。ワールドカップの最終ロスターを12人から13人と考えた場合、司令塔のポジションであるポイントガードは2人ないし3人選出と予想できる。これまで富樫と共にポジションを担っていた主将篠山は当確として、残りの枠を誰が埋めていくのかが注目された。

まずは候補の一人、#9ベンドラメ礼生(SR渋谷)。

第1戦で篠山が1Q残り1分32秒で個人ファウル2個目となり、代わりにベンドラメ礼生がコートへ。第1戦でコートに入った時間は、トータル13分47秒だが「思ったよりもプレータイムはあった」と驚いていた。

「(田中)大貴さんが1番ポジション(ポイントガード)でずっと練習をしていたので、2~3分繋げれば良いかな」

元は自身をつなぎ役で考えていたのだ。

「正面に入っても力強さで押し切られるというか、守備をしていても大変だった」

また、ニュージーランドのペイントアタックには手を焼いた模様だった。

「自分の課題としてミスが多いというのはある。そこをクリアして守備に絡み、相手の守備を小さくさせてキックアウトやリングにアタックしていく姿勢を出していきたい」

そうして全体的なプレー内容から課題を認識し、ベンドラメは次のステップに進んでいこうとしている。

次に安藤誓哉。

第2戦では、篠山のバックアップとして安藤が起用されていた。1Q終盤からコートに入り、流れを取り戻すために奮闘するが、リードは縮まらないまま2Q中盤でベンチに下がった。

「気合も入りすぎました。まずはミスをしないで、流れを作りながら自分のゲームを掴む」

ベンチに下がってから、そう気持ちを抱きながらコートに戻ったのは3Q途中。そのまま4Q終盤まで起用された。

「日本代表で自分がどうパフォーマンスを(発揮)するか。持ち味はボールプッシュなので」

21分8秒のプレータイムがあった安藤。その中で、積極的に自分の持ち味であるボールプッシュで、点差が縮まるよう、チームのコントロールに徹するようにしていた。

バスケ男子日本代表・安藤誓哉Ⓒマンティー・チダ

Ⓒマンティー・チダ


最後に当確とされる主将の篠山。2戦ともスタート5に名を連ねて司令塔としてチームを引っ張っており、その中で課題をたくさん拾い上げた。

「2つ目、3つ目のファウルは要らなかった。これは反省点」

第1戦について、そう述べ、チーム全体についても次のように語る。

「ハードな守備からプレッシャーをかけて、ディフェンスリバウンドを奪って流動的なアーリーオフェンスに入っていくというのは多く出せたが、細かいディフェンスのルールが徹底できていない」

第1戦のスタッツを見ると99得点の89失点。試合の立ち上がりで相手の得点を抑えていたが、2Q以降の失点の多さは目立つ。

そして第2戦。最終的に104失点と第1戦よりも多かった。しかし、4Qに入る前にベンチでフリオ・ラマスHCから「余計なことを考えずにディフェンスから入ろう」と指示を受けて守備の修正をし、実際4Qではニュージーランドを20点に抑えている。前半の1Q、2Qに比べると失点は減らすことはできた。

「この試合は反省して、またコツコツできればよい。ニュージーランドの強さは自分たちにとって良いレッスン」

篠山はそう語る。

他、合宿中からポイントガードの練習をしていた田中にも第1戦で短い時間ながら出場機会を与え、またポイントガードとしての出場はなかったが比江島の存在もある。二人ともシューティングガードと兼任させることも出来る。兼任者が良いのか、ベンドラメや安藤のように純正のポイントガードが良いのか、残りの選考はこれからの親善試合で見極めていくのだろうと考える。

シェーファーアヴィ幸樹が2度のブロックショットでアピール

もう一つのポイントとして、インサイドをどうするのかがある。ワールドカップ2次予選WINSOW6では太田敦也、竹内公輔、竹内譲次、ファジーカス ニック、張本天傑の5名が選ばれていた。5名の枠があると考えると、この2試合におけるプレータイムや起用から、八村、ファジーカス、竹内譲次は当確で、残り最大2枠を誰にするかとなる。

第1戦は、八村とファジーカスが先発。竹内譲次が2人とローテーションで起用され、張本が一時的に繋いだ。

第2戦は、八村、ファジーカスと竹内譲次に加えて、#10竹内公輔とシェーファーアヴィ幸樹がコートに入っていた。

この中で首脳陣にアピールしたのは、第2戦に3Q終盤から出場したシェーファーアヴィ幸樹だった。3Q終盤からペイントアタックに凄みを増していたニュージーランド。それに対し、4Qで見せたブロックショット2本は、試合の流れを大きく左右されるものであり、4Qも継続してアタックを続けていた。

「今までプレータイムをもらえていなかったので、その中でもしっかり動けたのは良かった。ヘルプに行くことはいつも自然にしているが、今日はいつもより飛べていた。相手がペイントアタックをしてきたが、自分のブロックをかわすことなく普通にシュートをしてくれた。相手が僕のことをリスペクトして来なかったので、そういう意味ではやりやすかった」

プレータイムは8分22秒。自虐も交えてコメントし、4Qで見せ場を作ったシェーファーは、囲み取材の時は終始笑顔であった。

バスケ男子日本代表・シェーファーアヴィ幸樹Ⓒマンティー・チダ

Ⓒマンティー・チダ


もう一人挙げるとすれば、竹内公輔(宇都宮)。2006年に行われた日本開催の世界選手権ではスタート5で出場するなど主力を担っていた。ニュージーランドとは世界選手権で同じグループに入り、決勝トーナメント進出をかけた対戦で悔しい逆転負けを喫しているが「13年前のことは恨みではないが特に意識は無い」と口にする。

「ニュージーランドにトランジションディフェンスをさせない事。日本の攻撃がハーフコートオフェンスに偏っていたので、もっとオールコートオフェンスに繋がるようなプレーをしたいと考えていた」

2Q最初から登場し、7分1秒プレーした竹内公輔はコートに立つ前から、とにかく走ることをベースに考えていたようだ。4得点をあげるなど、ベテランの役割は果たした。

ワールドカップ本戦においてインサイドを4選手で挑むのであれば、竹内公輔とシェーファーが4番手を争うのだろう。シェーファーがアピールに成功した格好だが、残り3試合での出来次第となるのだ。

今回、ニュージーランド戦から、選手起用を見てきた。もちろん、渡邊雄太が怪我した足首のコンディションをどこまで戻すかにもよるが、8月22日から始まる埼玉大会(22日アルゼンチン戦、24日ドイツ戦、25日チュニジア戦)が大きなカギになるだろう。

今後、ポイントガード、インサイドのポジション争いにも注目をして欲しい。