万波中正は「ビッグスターになれる」
第2回アジアプロ野球チャンピオンシップは日本代表「侍ジャパン」の優勝で幕を閉じた。24歳以下(1999年1月1日以降生まれ)または入団3年目以内の若手と、田口麗斗(ヤクルト)、今井達也(西武)、坂倉将吾(広島)のオーバーエイジ枠3選手を加えたメンバーにとって貴重な経験となっただろう。東京ドームで観戦した糸井嘉男氏は次のように印象を語る。
「3月のWBCの興奮が甦りました。若手中心でしたが、次世代のトップチームで戦うであろう選手が揃っていたので、将来は侍ジャパンで世界一を目指すんだろうなというポテンシャルを感じました」
初戦のオーストラリアに10-0で大勝すると、チャイニーズ・タイペイには4-0で完封勝利。3戦目の韓国にも2-1で競り勝ち、韓国との再戦となった決勝ではタイブレークの延長10回に門脇誠(巨人)のタイムリーで逆転サヨナラ勝ちを収め、劇的なフィナーレとなった。
MVPは門脇だったが、糸井氏は特に印象に残った選手として万波中正(日本ハム)を挙げる。
「万波選手は自信に満ち溢れてましたね。今年、シーズンを通して一軍で結果を残したのが自信になってるんじゃないですか。侍ジャパンでの活躍は来シーズンにつながるし、いずれは3割40発100打点を目指せる選手だと思います」
今季は141試合に出場して打率.265、25本塁打、74打点をマーク。アジアCSでも韓国との1戦目でバックスクリーンにソロ本塁打を放つなど全4試合で17打数6安打、打率.353と活躍した。
万波が良くなった要因について、糸井氏は「本人も言ってますが、バットを寝かせて構えることで、無駄な動きなくアジャストできるようになりましたね」と解説。今後についても「キャンプで見てても打撃練習の音が1人だけ違いました。ビッグスターになれるものを持ってるんで、国際大会を経験して、まだまだいい成績を残すと思います」とさらなる成長に太鼓判を押した。
シーズンとは全く違う国際試合のプレッシャー
糸井氏自身も2013年の第3回WBCに山本浩二監督率いる侍ジャパンの一員として出場している。
第2ラウンドのオランダ戦で3ランを放つなど全7試合に出場し、打率.286、1本塁打、7打点、2盗塁をマーク。日本代表のベスト4入りに貢献する活躍を見せた。日の丸を背負うプレッシャーについて次のように力説する。
「冷静に普段通りと思ってるけど全く別物です。日本国民が応援してくれてるし、母国を背負う責任もあるし、勝ちたいし、負けられない戦いが続くプレッシャーは凄いです。一発勝負が多いんで、ペナントレースとは違って、ちょっとしたミスも許されないですからね」
だからこそ、その経験は血となり肉となり、選手を大きく成長させるのだ。糸井氏も翌2014年は打率.331、出塁率.424でタイトルを2つも獲得する大活躍につなげた。
そういう意味では万波だけでなく、今回のアジアCSで結果を残した選手には大きな成長が期待される。
「小園海斗選手もよく打ちましたし、藤原恭大選手も今回がいいきっかけになると思います」と話し、「テル(佐藤輝明)や森下翔太選手は日本一に導いたクリーンアップなんで怖いですよね」と阪神の後輩たちの活躍にも目を細めた。そして「同世代が集まった侍ジャパンは刺激的だったと思います」と若手選手にとっては今後の糧となることも強調した。
前回アジアCSの出場メンバーが2023年WBCで世界一に
2017年に行われた前回のアジアプロ野球チャンピオンシップは稲葉篤紀監督率いる侍ジャパンが優勝。メンバーには今永昇太(DeNA)、近藤健介(当時日本ハム)、甲斐拓也(ソフトバンク)、源田壮亮(西武)ら2023年の第5回WBCで活躍したメンバーも少なくなかった。
その一方で、野田昇吾(当時西武)、多和田真三郎(当時西武)、石崎剛(当時阪神)らすでにユニフォームを脱いだ選手がいることもまたプロ野球界の厳しい現実だ。
今回のアジアCS優勝メンバーが2024年のプレミア12、さらに2026年の第6回WBCでも活躍するのか楽しみが膨らむ。糸井氏は自身の経験も含めてこう話す。
「僕も第1回、第2回のWBCで日本が連覇したのを見て国際大会への気持ちが強くなりました。国を背負って戦って、あんな風に喜びたいなという気持ちになったのを覚えています。3月のWBCや今回のアジアチャンピオンシップを見たアマチュア選手や若いプロ選手にとっては、侍ジャパンが大きな目標になったでしょう。次のWBCでも大谷翔平選手が入るのかどうかも含めて、どんなメンバー構成になるか本当に楽しみです」
サッカーやラグビーの例を挙げるまでもないが、国際大会での日本代表の活躍はその競技自体を大いに盛り上げ、長い目で見れば競技人口の増加やレベルアップにもつながる。日の丸を背負った侍たちの活躍はそういう意味でも価値が高いのだ。2028年のロサンゼルス五輪で野球が復活することも決まっただけに、侍ジャパンの今後がますます楽しみになってきた。
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