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【動画あり】セイバーメトリクス「K/BB」とは?改めて分かる上原浩治の凄さ

2019 12/22 11:00SPAIA編集部
上原浩治氏Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

K/BBとは奪三振と与四球の比率

野球のデータを統計学から客観的に分析するセイバーメトリクス。これまで日本のプロ野球で投手の実力を示す指標として用いられてきたのは、勝利数・防御率・勝率などがメインだった。しかし、『マネー・ボール(著マイケル・ルイス)』が日本で文庫化されると一般に広がりはじめ、少しずつではあるがセイバーメトリクス的な考え方が取り入れられるようになってきた。

メジャーリーグでは、選手の能力を示す上で有効な指標として広く活用されている。今回は奪三振と与四球の比率で、投手の制球力を示すK/BBを紹介する。

計算式は「奪三振数÷与四球数」というシンプルなもの。奪三振数も与四球数も球場の広さや守備の影響を受けない数字のため、単純に投手の能力を測ることができる。奪三振が多く、与四球が少ないほど、その数字が大きくなり、一般的に「3.5」を超えれば優秀な投手とされる。

【K/BB】
計算式:奪三振数÷与四球数
意味:最も安全である三振によってアウトを取り、四球を与えない投手であることを示す指標。主に制球力の良さを測ることができる。一般的に3.5以上で優秀とされる。

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【セイバーメトリクス】K/BB とは?上原浩治 最強伝説。世界最強パーフェクト投手をデータで解剖!

2013年、上原のK/BBは驚異の11.22

K/BBを語る上で外せないのが2019年に現役引退した上原浩治氏だ。東海大仰星高では甲子園に出場することなく、1年浪人して大阪体育大に進んでから素質開花。ドラフト1位で巨人に入団するといきなり20勝をマークして最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率のタイトルを独占し、新人王、ベストナイン、ゴールデングラブ賞、沢村賞にも輝いた。

2008年オフにFA宣言してメジャー挑戦。オリオールズ、レンジャーズ、レッドソックス、カブスを渡り歩き、メジャー通算22勝26敗95セーブをマーク。レッドソックス時代の2013年にはワールドシリーズで胴上げ投手になるなど輝かしい球歴を誇り、日米通算100勝100セーブ100ホールドを記録した日本唯一の投手でもある。

そんな上原氏が誇るべき指標がK/BBだ。NPBでは1400奪三振÷211四球=6.64で歴代1位、MLBでは572奪三振÷78四球=7.33と文句のない数字を残している。2013年に限れば101奪三振÷9四球=11.22という驚異的な数字。単純に言えば11以上の三振を奪う間にやっと1四球を出すという計算だ。上原氏は剛速球投手のイメージが強いが、実は制球力が極めて高い投手だったことがよく分かる。

ちなみに2019年のセ・リーグで1位の大瀬良大地(広島)で3.886、パ・リーグ1位の美馬学(楽天)が4.667だから上原氏の数字の凄さを物語っている。歴代最多奪三振の金田正一氏でさえ4490奪三振÷1808四球=2.48、「針の穴を通すコントロール」と言われた北別府学氏でも1757奪三振÷656四球=2.68。「雑草魂」で名を馳せた右腕は、まさしく球史に残る名投手だった。