オリックス、アダム・ジョーンズを獲得
アダム・ジョーンズが日本にやってくる。熱狂的なMLBファンなら十数万円の飛行機チケットを買ってでも見たいような選手のプレーを、間近で目にできるのだ。
12月11日、オリックスはダイヤモンドバックスからFAになったアダム・ジョーンズの獲得を発表した。メジャー14年で通算1939安打、ホームラン282本、ゴールドグラブ賞4回、2013年にはポジションごとの最強打者に贈られるシルバースラッガー賞にも輝いている。
「チームにとっても、非常にインパクトがあると思います」とオリックスの森川秀樹球団本部長は語ったが、その衝撃は日本球界全体に広がりそうである。
ジョーンズがMLBで残した実績と評価
アダム・ジョーンズのすごさは、彼がMLBで残した数字を見れば明らかだ。2008年から2019年まで、12年連続で100安打以上を放ち、その間の打率は最低でも.260と安定している。通算1939安打は、現役メジャーリーガー中9位。長打力にも優れており、2011年から2017年まで7年連続で25本塁打以上を放った。
守備面も、4度のゴールドグラブ賞受賞からもわかるように立派なものである。センターとしての通算刺殺数・補殺数はともに現役選手最多。守備を評価するセイバーメトリクス系の指標レンジ・ファクター(Range Factor/9Inn)は、現役のセンターで9位だ。
また、フィールド外でもジョーンズの評価は高い。2015年4月、ボルチモアで黒人青年が警察の拘束時に受けたケガによって死亡し、数百人が暴徒化。州は非常事態宣言を発表し、それを受けてジョーンズが所属していたオリオールズのホームゲームは、MLB史上初の無観客試合としての実施を強いられた。
「強くあれ、ボルチモア。安全であれ。私がこれまで愛してきた素晴らしい街のままであり続けよう」とジョーンズは分断するその街に対してメッセージを送った。ちなみに、オリオールズはその無観客試合に8対2で勝利している。
ジョーンズが来日を決めた理由
なぜ、アダム・ジョーンズは来日を決めたのだろうか。答えは今から約1年前のシーズンオフにある。春のキャンプ開始時期になっても所属球団が決まらず、最終的にDバックスと契約したのは3月10日だった。
近年MLBでは選手が求める金額が高騰し、各球団の懐事情とのあいだにギャップが生まれている。その結果として、超大物のFA選手が巨額の金額で複数年契約を結ぶ一方で、実績のあるベテラン選手の交渉が難航し、契約できたとしても単年契約やマイナー契約に甘んじるという現象が起きている。
昨オフではブライス・ハーパーやマニー・マチャドといったビッグネームが大型契約を勝ち取る一方で、ジョーンズをはじめとしたベテランには厳しいシーズンオフとなった。当時31歳だったサイ・ヤング賞投手、ダラス・カイケルにいたっては、シーズンが開幕して2ヶ月がすぎた6月初旬にやっと所属球団が決まった。それも、複数年の希望は叶わず、単年契約という結果となった。
オリックスとの契約が決まり、ジョーンズが発した「オリックスは、(中略)私が日本で長くプレーできるよう強い意志を示してくれました」というコメントを聞く限り、彼は今オフも予想される無所属状態の長期化を避けたかったのだろう。MLBの名物記者、ケン・ローゼンタール氏によると、オリックスは2年契約に加え、2022年シーズンの球団オプションも用意しているという。
先にジョーンズがMLBで残してきた成績を列記したが、それはあくまでも通算成績で、確かに30歳をゆうに超えたベテランの衰えは明らかに思える。とくに守備面に関しては、現在MLBで主流となっている守備指標UZRは4年連続マイナス、スタットキャストによって生まれた新しい指標であり、外野手平均より捕球可能性が高いか否かを示すOAA(Outs Above Average)も3年連続でマイナスだった。ただ、それでもジョーンズがまだまだMLBで通用する選手であることに変わりはない。
オリックスがアダム・ジョーンズと契約したのとちょうど同じ日、海の向こうでは今オフのFA 市場で最大の目玉であるゲリット・コールがヤンキースとの契約に合意した。契約総額は、MLB投手最高の9年356億円。ちなみに投手最高額は、つい数日前にナショナルズと7年270億円で再契約したスティーブン・ストラスバーグが更新したばかりだった。
アダム・ジョーンズは言う。
「メジャーリーグに“さよなら”を、日本プロ野球に“こんにちは”を言う時が来たのです」
※日付は現地時間
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