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驚きの打球方向と優れた守備指標 中日・大島洋平は衰え知らず

2019 9/15 06:00浜田哲男
中日ドラゴンズの大島洋平ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

キャリアハイに向け視界良好

現在(9月14日時点)リーグ5位に低迷する中日だが、打撃部門に目を向けると個々に成績を残している選手は多い。打率.323でリーグ2位につけるビシエドをはじめ、.315の大島洋平、.302の高橋周平、.299の阿部寿樹と10位以内に4選手がランクインしている。

特にその潜在能力からブレイクが長年にわたって期待されていた高橋周平の躍進は、首脳陣にとっても中日ファンにとっても待望だった。そんな中日で、今も昔も変わらずコンスタントに結果を残し続け、打線に欠かせない選手の一人が大島洋平だ。33歳。ベテランと呼ばれる領域に入ってきたが、数字だけを見れば衰えは感じられない。

今季はここまで打撃の各部門でリーグ屈指の好成績をおさめており、あらゆる部門でキャリアハイが狙えるところまできている。現在リーグ3位の打率をマークしているが、過去最高は2014年の.318。また、盗塁は2012年にマークした32個が自己最高だが、現在はリーグ3位の29個と、それぞれキャリアハイを視界にとらえている。

また好機に強く、得点圏打率はリーグ2位の.348で、162安打は巨人の坂本勇人に次いでリーグ2位。さらに、出塁率もリーグ10位の.381をマークしており、チャンスメーカーとしても機能している。安打の内訳をみると、単打が136本とほとんどを占め、二塁打が22本と長打の少なさが課題といえるが、それを差し引いても十分な活躍を見せているといえるだろう。

少ない三振と広角打法

走攻守に優れた能力をもつ大島だが、三振の割合が少ない打者であることを示すセイバーメトリクスの指標PA/K(打席数÷三振数)で、7.81(リーグ3位)という優れた数値を残している。この数値は何打席に1回三振するかを表している数値で、高い数値であればあるほど三振の割合が少ないということになる。

また大島といえば、球界屈指とも言われるバットコントロールが特長だが、打球方向別の安打数をみると、そのことが顕著に分かる。今季は現在162本の安打を放っているが、そのうち左方向が53本、中方向が53本、右方向が56本と見事なまでにバランスよく打ち分けている。ここまで各方向に均等に安打数を記録する選手も希有だ。まさに大島の打撃技術を証明する数字のひとつといえる。

さらに、対右投手の打率は.308で対左投手の打率も.328とハイアベレージを残しており、左右を苦にしないことも強みだ。今季の月別の成績をみても、5月に.278と多少落ち込んだが、8月までは.310以上とコンスタントに打ち続けていることが分かる。

球界屈指の守備力

大島は打撃以外でもチームに長年大きく貢献している。それが、球界屈指とも評される外野守備だ。2011年以降、ゴールデングラブ賞に6度選出。的確な打球判断力と俊足を生かした広い守備範囲を誇り、球際に強く難しい打球でも難なく捕球する。肩は故障や加齢の影響により多少の衰えはあるものの、中堅に大島がいる安心感は何にも代えがたいものだろう。

プロ野球のデータ分析・研究を行っているDELTA社によると、「平均的な同ポジションの選手と比べて、失点をどれだけ防いだか」を表す「UZR」(アルティメット・ゾーン・レーティング)という指標において、2018年の大島は12球団の中堅手でトップの11.9という数値を残している。

2位の桑原将志(DeNA)や3位の西川遥輝(日本ハム)、4位の田中和基(楽天)が、20代中盤であることを考えると、年齢が影響しやすい守備でも大島は依然として高いパフォーマンスを維持していると分かる。

走攻守全ての面で優れた能力を発揮し、長年にわたってコンスタントに結果を残し続ける大島。チームにとって欠かせないプレーヤーであることは間違いないが、大島を脅かすような存在が出てこないとチーム力の向上は見込めない。今季、大島が3番を打つケースも見られるが、大島がチャンスメークに徹することができるぐらいの打線の厚みはほしいところだ。

※数字は2019年9月14日終了時点