若返り策は成功したのか?阪神の「年齢別成績」
2018年シーズンは17年ぶりの最下位に沈み、金本知憲監督が退任となってしまった阪神。金本前監督は就任1年目から「超変革」のスローガンで若手の積極起用を図った。若返り策には一定の成果があったようにも思えるが、3年の監督期間を終えて、現在のチームはどのような年齢構成になっているだろうか。
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近年のプロ野球選手の平均引退年齢は29歳前後となっている。若手・中堅・ベテランをどこで区切るかはスポーツによって異なってくるが、プロ野球の場合は29歳がひとつの分岐点といえそうだ。
そこで、29歳未満・以降を大きなくくりで「若手」と「ベテラン」に分けて考えてみる。さらにそれぞれを2つに区切って「23歳以下」「24歳~28歳」「29歳~33歳」「34歳以上」と4つの年齢層に区分(2018年シーズン中に一軍出場があった選手)。単純な出場機会だけでなく、各年齢層がどのくらいチーム成績に寄与していたのかインフォグラフィックで可視化してみた。
ベテラン頼みの一方で「29歳~33歳」の戦力層が薄い野手
<主な選手>
■「23歳以下」
植田 海(22)
島田 海吏(22)
熊谷 敬宥(23)
■「24歳~28歳」
北條 史也(24)
大山 悠輔(24)
板山 祐太郎(24)
髙山 俊(25)
江越 大賀(25)
中谷 将大(25)
原口 文仁(26)
糸原 健斗(26)
梅野 隆太郎(27)
陽川 尚将(27)
■「29歳~33歳」
ロサリオ(29)
伊藤 隼太(29)
森越 祐人(30)
俊介(31)
今成亮太(31)
上本 博紀(32)
山崎 憲晴(32)
ナバーロ(32)
小宮山慎二(33)
■「34歳以上」
鳥谷 敬(37)
糸井 嘉男(37)
福留 孝介(41)
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2018年シーズンの阪神野手陣はチーム打率.253・チーム得点577 がともにリーグ5位。広い甲子園を本拠地にしている事情はあるものの、リーグワーストのチーム本塁打85本、長打率.361を記録し、長打力不足に悩まされた。
年齢別成績を見ると、その課題の長打力もベテラン陣への依存度が高かったことがわかる。「34歳以上」が本塁打、打点、四球で30%以上の割合を占めた。ほとんどは大ベテランの糸井嘉男、福留孝介がたたき出したものである。
「29歳~33歳」の打席数は19%と少なく、上本博紀が長期離脱したこともあり、レギュラーは不在。打者としてピークを迎えるこの年齢層に主力打者がいないことは少し寂しいところだ。下の世代が成長しきっていれば問題はない。例えば西武は阪神と似た野手の年齢構成で山川穂高らの「24歳~28歳」がすでにチームをけん引しているが、阪神の場合はまだそこまで若手が成長しきっていなかった。
ただ、近年の若手育成の成果も表れはじめている。「24歳~28歳」はチームで最も高い50%の打席数を得た。糸原健斗、梅野隆太郎、陽川尚将、中谷将大、北條史也、大山悠輔とここにレギュラー、準レギュラークラスが集まっている。二塁手の糸原、捕手の梅野は定位置を確立し、中谷や大山をはじめ、長距離砲の素質がある選手も多い。彼らが順調に伸びて同時期に全盛期を迎えることができれば、リーグ屈指の強力打線も夢ではなさそうだ。
投手は藤浪ら「24歳~28歳」が不調
<主な選手>
■「23歳以下」
才木 浩人(20)
髙橋 遥人(23)
尾仲 祐哉(23)
■「24歳~28歳」
藤浪 晋太郎(24)
小野 泰己(24)
青柳 晃洋(25)
岩貞 祐太(27)
秋山 拓巳(27)
岩貞 祐太(27)
岩崎 優(27)
石崎 剛(28)
■「29歳~33歳」
伊藤 和雄(29)
ドリス(30)
岡本 洋介(33)
桑原 謙太朗(33)
■「34歳以上」
マテオ(34)
岩田 稔(35)
メッセンジャー(37)
藤川 球児(38)
能見 篤史(39)
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投手陣はチーム防御率4.03を記録した。「打高投低」傾向が強かった2018年シーズンではリーグ2位の数字ではあるものの、前年の3.29から大幅に悪化。しかし、オフにはオリックスから西勇輝、中日からガルシアと2桁勝利投手を続けて獲得し、先発陣強化に成功させている。
年齢別成績は野手陣とかなり近いグラフの形が出た。こちらも「34歳以上」に外国人エースのメッセンジャーをはじめ、リリーフに藤川球児、能見篤史、髙橋聡文と重要な役割を担う存在がある。年齢層別の防御率は「23歳以下」4.33、「24歳~28歳」4.52、「29歳~33歳」3.53、「34歳以上」3.36となり、最も安定していたのが彼らベテラン陣だった。
「29歳~33歳」は先発がいなかったため投球回数は少なかったが、桑原謙太朗、岡本洋介、ドリスとリリーフでしっかり結果を残している。
「24歳~28歳」は本来の力を発揮できなかった投手が多かった。実績のある岩貞祐太、秋山拓巳、藤浪晋太郎が全員2桁勝利に届かず。西とガルシアが入ってくる2019年シーズンは、立場が確立されていない彼らが競争で高めあってくれることを期待したいところだ。
「23歳以下」は投球回数14%と野手より多くの出場機会を得た。高卒2年目の才木浩人、大卒ルーキーの髙橋遥人と先発可能な投手が左右で出てきていることは大きい。高卒3年目の望月惇志もリリーフで37登板しており、ここの投手層は他球団と比べて悪くない。
野手・投手を総括すると、30代が優秀だが20代が伸び悩み、ベテランと若手の歯車がうまくかみ合っていないという点で共通する課題がある。ベテラン陣が元気なうちに、若手がもう一皮剝けたい。