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天才・西川龍馬、打撃開眼のヒントは福留孝介の事例にあり

2019 1/6 07:00浜田哲男
西川龍馬,ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

毎年、着実にステップアップ

昨年も圧倒的な強さでセ・リーグを席巻し、球団史上初の三連覇を達成した広島。巨人や阪神をはじめ、ライバル球団は積極的な補強を展開しているが、今季も広島が優勝候補の最有力候補であることは間違いない。

オフに三連覇の立役者の一人である丸佳浩がFA(フリーエージェント)権を行使して巨人へ移籍したが、広島には丸の穴を埋めるだけの選手層の厚さがある。バティスタ、メヒア、坂倉将吾らが候補となるが、中でも注目すべきなのが西川龍馬だ。

昨年は自己最多の107試合に出場し、同じく自己最多の101安打を記録。規定打席には届かなかったが、打率.309、6本塁打、46打点、5盗塁、OPS.814と好成績を残し、チームの優勝に貢献した。

西川龍馬の成績

ⒸSPAIA

上記の表を見てもわかるように、過去3年間で出場機会は年々増加。与えられた打席数に対して安定した成績を残しており、シーズンを通してどれくらいの成績を残すかを見てみたい選手のひとりだ。

課題は守備 外野挑戦が転機となるか

西川の打撃センスは、チームメイトの鈴木誠也やOBの前田智徳、巨人の菅野智之らから、「天才」と称されるなど一目置かれている。体の軸をしっかりとさせた上でバットを寝かせ、わずかな体重移動で素早く駒のように回転する。特に、インコースの球に対して、腕を畳んで振り抜き、フェアグラウンドに落とす技術は突出している。

課題は守備だ。今季は三塁の守備で17失策を喫しており、これでは打撃がいくら良くても、シーズンを通して三塁を守らせることは厳しい。しかし、絶対的なレギュラーの中堅手だった丸が移籍したことにより、昨秋のキャンプでは外野守備にも挑戦しており、このことが打撃開眼のきっかけとなるかもしれない。

阪神の福留孝介は中日への入団当初は遊撃手だったが、守備に難があった。その後、守備の負担が少ない三塁にコンバートされるも、そこでも失策を連発。得意の打撃にも影響が出て、打率は2年連続で.250前後と低迷した。

しかし、2002年に本格的に外野にコンバートされると、守備への不安が減ったためか打撃も向上。同年に打率.343をマークして首位打者を獲得するなど、一気にスターダムにのし上がった。本来の強肩が生かされるなど右翼の守備も安定し、瞬く間にリーグ屈指の外野手に成長。同年にゴールデングラブ賞も獲得した。

福留の事例にもあるように、守備への不安が取り除かれることで打撃が開眼するケースはある。西川の外野手挑戦は、天才と呼ばれる打撃を覚醒させる転機になりうる。

国際試合でも勝負強さを発揮

西川は、2017年11月に開催された「2017 アジアプロ野球チャンピオンシップ」(参加資格はU-24または入団3年目以内)に参加。若き侍ジャパンの一員として、同大会の優勝に大きく貢献した。 全3試合に出場し、7安打3打点の活躍。打率.636は同大会の打撃成績のトップ(2位は日本ハムの近藤健介 打率.583)。

相対するのが初見の投手ばかりという難しい状況の中、柔軟なバットコントロールで、まざまざと対応力の高さを見せつけた。決勝の韓国戦で見せた右翼ポール際への本塁打も、技ありの一打だった。

国際試合での勝負強さを見せた西川。今季は得点圏打率.346を記録しており、丸が抜けた3番にそのまま西川が入っても面白いかもしれない。

2019年シーズンは、広島にとっても、西川にとっても、真価が問われるシーズンとなりそうだ。