2年連続2ケタ勝利、交流戦MVPを輩出
今年で3回目の開催となるプロ野球の『現役ドラフト』が9日に非公開で行われた。今回は史上初となる2巡目指名も行われ、広島が12球団で唯一となる2名を獲得。残る11球団は1人を指名した。
過去2回の現役ドラフト組を振り返ってみると、2年前の第1回でDeNAから中日に移籍した細川成也が新天地でレギュラーに定着。今季はプロ8年目にして初めてベストナインを受賞するなど、現役ドラフトが野球人生を大きく変える転機となった。
その細川と並ぶ成功例として名前が挙がるのが、同じく第1回でソフトバンクから阪神に移籍した大竹耕太郎だ。
ソフトバンクでは5年間で通算10勝に留まっていた左腕だが、阪神に移ると開幕6連勝を記録するなど破竹の勢いで勝ち進み、それまでの通算勝利を上回る12勝(2敗)を1年で記録。チームの優勝・日本一に大きく貢献した。今季も24試合の登板で11勝7敗、防御率2.80と今や先発ローテに欠かせない存在となっている。
そして昨年の第2回現役ドラフト組では、大竹と同じ「前ソフトバンク」の水谷瞬が新天地・北海道で大きな飛躍を遂げた。
ソフトバンクでは5年間在籍して一軍出場ゼロだった男が、日本ハムでは移籍初年度から97試合に出場して打率.287、9本塁打、39打点と大暴れ。特に交流戦では史上最高記録となる.438のハイアベレージを叩き出し、最優秀選手(MVP)にも輝いている。
先日の契約更改では、「5倍」の大幅アップを勝ち取ったことを満面の笑みで報告。現役ドラフト組の新たな希望の光となったと同時に、「前ソフトバンク」への注目度と期待度が一気に高まった状態で3度目の現役ドラフトがやってきた。
プロ2年目のオフに急転直下の移籍決定
迎えた9日の第3回現役ドラフト。ソフトバンクから移籍することとなったのが吉田賢吾で、移籍先は前年の水谷と同じ日本ハムに決まった。
吉田は横浜商大高から桐蔭横浜大を経て、2022年のドラフト6位でソフトバンクに入団。今季プロ2年目の戦いを終えたばかりの23歳だ。
一軍では通算11試合の出場で打率.185、本塁打0で打点2と実績はないものの、今季はファームで79試合に出場して打率.303をマークしている。奇しくも『日本シリーズ』と同じ顔合わせとなった『ファーム日本選手権』でも「5番・指名打者」としてスタメンに名を連ね、3安打を放つなど奮闘を見せた。
登録は「捕手」も、今季ウエスタンでマスクを被った試合は6試合だけ。メインは63試合で守備に就いた一塁となる。新天地の日本ハムは「捕手」登録の多いチームだが、このうちアリエル・マルティネスは一塁か指名打者での出場しかなく、郡司裕也も6試合でマスクを被ったものの、メインは99試合守った三塁となっており、吉田も彼らと似た起用法となりそうだ。
調子や相手との兼ね合いを見ながら型にハマらない用兵術を見せる新庄剛志監督だけに、チャンスがないまま時間を過ごすということは考えにくい。あとはそのワンチャンスをモノにできるかどうか、そこに尽きる。
かねてから「努力は一生、本番は一回、チャンスは一瞬」という言葉を口にしてきた新庄監督。努力を積み重ねるのはもちろんのこと、それを一回きりの本番、その中の一瞬のチャンスで発揮できなければ成功はない。
プロ野球の厳しさを物語る言葉だが、上述した水谷やマルティネス、郡司といったところはもともと別のチームから北海道にやって来てその一瞬のチャンスを掴み、2位躍進の原動力となった。成功のお手本は多いだけに、吉田にもこのルートに乗って大きく羽ばたいてもらいたい。
現役ドラフトにおける、信頼と実績の“ソフトバンク印”は今後も伝統として続いていくのか。3期生・吉田賢吾の新天地での奮闘に期待したい。
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