「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

プロ野球現役ドラフトの答え合わせ 2023年に覚醒した選手と補強できた球団は?

2023 10/20 11:00SPAIA編集部
中日の細川成也,ⒸSPAIA
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA

12球団の現役ドラフト指名選手

2023年のプロ野球レギュラーシーズンが終了した。昨年12月に行われた現役ドラフトで移籍した選手はどのような成績を残したのか振り返ってみたい。

現役ドラフトは、実力があるにもかかわらずチームのメンバー構成などから出場機会に恵まれない選手、埋もれている選手に出場機会を与えようと昨オフに初めて実施。外国人選手や複数年契約選手、FA権を保有または行使した選手、育成選手などを除く指名対象選手リストを12球団が提出し、その中から各球団が以下の通り1人ずつ指名した。

オリックス 渡邉大樹外野手(前ヤクルト)
ソフトバンク 古川侑利投手(前日本ハム)
西武 陽川尚将内野手(前阪神)
楽天 正隨優弥外野手(前広島)
ロッテ 大下誠一郎内野手(前オリックス)
日本ハム 松岡洸希投手(前西武)
ヤクルト 成田翔投手(前ロッテ)
DeNA 笠原祥太郎投手(前中日)
阪神 大竹耕太郎投手(前ソフトバンク)
巨人 オコエ瑠偉外野手(前楽天)
広島 戸根千明投手(前巨人)
中日 細川成也外野手(前DeNA)

阪神・大竹耕太郎と中日・細川成也が大活躍

シーズンを通して活躍が目立ったのは、阪神・大竹耕太郎と中日・細川成也だろう。大竹は済々黌高から早稲田大を経て2017年育成4位でソフトバンク入りすると、1年目に支配下登録されて3シーズンで計10勝を挙げたものの2021、22年は未勝利に終わっていた。

それがタテジマに袖を通した今季は別人のような大活躍。先発ローテーションの一角を担い、21試合登板で12勝2敗、防御率2.26の好成績を収めた。今季推定年俸は2000万円。阪神とすれば予想以上の補強となったに違いない。

細川成也は明秀日立高から2016年ドラフト5位でDeNA入りすると、ルーキーイヤーに初打席本塁打を放ち、さらに翌日にも2試合連発。高卒新人として史上初となるデビュー戦から2試合連続本塁打を放つ衝撃デビューを飾った。その後もスラッガーとして期待は高かったが、強打者の多い一軍でレギュラーを奪うには至らず、6シーズンで計6本塁打止まりだった。

しかし、中日に移籍した今季は140試合に出場し、広いバンテリンドームナゴヤで24本塁打をマーク。78打点も含めてチームトップだった。DeNAでは出場機会に恵まれなかったが、長距離砲の少ない中日で実力を発揮できたという意味では、現役ドラフトの目的を体現した好例と言えるだろう。

巨人のオコエ瑠偉もポテンシャル示す

オープン戦からシーズン序盤までは巨人のオコエ瑠偉も目立った。関東一高時代に夏の甲子園に出場して俊足強打で注目を集め、2015年ドラフト1位で楽天入団。1年目から51試合に出場して順調なプロ生活のスタートを切ったが、レギュラーを奪えないまま2022年は6試合出場に留まっていた。

巨人に移籍した2023年は、オープン戦で打率.310をマークし、開幕戦に1番レフトでスタメン出場。4月は20試合に出場して打率.269、2本塁打と上々の成績を残した。調子が下降線を辿ったため5月8日に登録抹消され、その後も一軍と二軍を2往復。最終的には41試合出場で打率.235だったが、春先の活躍ぶりを考えるとまだ伸びる余地はありそうだ。

広島・戸根千明は石見智翠館高から日本大を経て2014年ドラフト2位で巨人入りした左腕。1年目から中継ぎとして46試合に出場したが、2022年は9試合登板で未勝利に終わっていた。広島に移籍した今季は24試合で1勝5ホールド、防御率4.64。一定の存在感は示したと言えるだろう。

ロッテの大下誠一郎は白鴎大足利高から白鴎大を経て2019年育成6位でオリックスに入団。1年目の2020年、支配下登録された翌日に初打席本塁打の衝撃デビューを果たし、北九州弁を交えたインタビューで人気を博した。2022年はわずか5試合出場に留まったが、ロッテに移籍した今季は23試合、打率.227、1本塁打2打点とルーキーイヤーに次ぐ出場試合数を記録した。

すでに戦力外となった選手も

西武・陽川尚将は金光大阪高から東京農業大を経て2013年ドラフト3位で阪神に入団。2018年には75試合に出場して6本塁打48打点をマークしたパワーヒッターだが、レギュラーにはあと一歩足りなかった。2022年も45試合に出場していたが、西武に移籍した今季は9試合で打率.167、1本塁打と不本意な成績に終わった。

ソフトバンクの古川侑利は有田工高から2013年ドラフト4位でプロ入りした10年選手。楽天、巨人、日本ハムと移籍し、ソフトバンク入りした今季は9試合で勝ち負けなし、防御率4.50だった。

そのほか、楽天・正隨優弥は1試合、1打数無安打1四球、打率.000、オリックス・渡邉大樹も1試合、2打数無安打、打率.000に終わった。DeNA笠原祥太郎(2試合0勝2敗、防御率4.50)とヤクルト成田翔(3試合0勝0敗、防御率5.40)は戦力外通告を受けている。

環境が変わって結果を残した選手もいれば、残せなかった選手もいる。しかし、初めての試みとしては予想以上の成果だったのではないだろうか。今年は12月8日に開催予定。多くの選手がチャンスをつかむことが期待される。

【関連記事】
巨人・オコエ瑠偉に見る現役ドラフトの意義、レギュラー奪取なら“掘り出し物”
阪神から西武移籍の陽川尚将が絶好調、10年目の新天地で心機一転
軟式出身、医師の卵、名門から転校…ドラフト指名を待つ異色の選手たち