「進化を求めて変化を恐れず」フォーム改造
独自の視点で月間MVPを選んできた糸井嘉男氏が2023年度のシーズンMVPを選出した。パ・リーグはオリックス・山本由伸投手(25)。選考に頭を悩ませたセ・リーグと違い、パ・リーグは迷いなく即決だった。
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もしかしたら昨年の村上宗隆(ヤクルト)に続き、パ・リーグでは2013年の田中将大(楽天)以来となる満票選出となるのではないか。そんな予感すら漂う2023年のパ・リーグMVPに、糸井氏も迷いなく山本由伸を選んだ。
「文句なし。彼以外いないでしょう。誰もが認める日本ナンバーワンの投手ですね。土俵が違うのかなというくらい、えぐいですね」
23試合登板で16勝6敗、防御率1.21。9月9日のロッテ戦ではノーヒットノーランを達成するなど次元の違う投球を見せ、最多勝、最優秀防御率、最高勝率、最多奪三振の投手4冠に3年連続で輝いた。もちろん史上初の大偉業だ。
糸井氏が感嘆するのが、どれだけ成績を残しても貪欲に進化を求め続ける姿勢。野球界では誰もやっていなかった「ターボジャブ」という道具を使ったやり投げのようなトレーニングを取り入れたり、昨オフには左足を上げずにクイックモーションのようなフォームに改造したり、向上心の塊と言ってもいい貪欲さだ。
「あれだけの成績を残してたら維持したくなりますが、彼は進化を求めて変化を恐れずやっているところが凄い。到達できない成績を出してるのにまだ進化を求めてやっている。凄すぎます」
プロでも舌を巻く姿勢こそが、山本を手の届かない領域に昇華させた最大の要因だろう。
来年はメジャーで打者・大谷翔平と対戦も
球団はポスティングシステムでのメジャー移籍を容認。来年から日本球界最高の右腕が海を渡ることになる。
「目標を立てて計画通りにできる選手なので、メジャーでも今のままで大丈夫だと思います。自分の中で決めたことはやる男なんで期待しかないですね」
糸井氏の言葉には誰もがうなずくだろう。滑りやすいと言われるMLB公式球やマウンドの硬さ、打者のパワーなど日本との違いがあるとはいえ、山本ならきっと対応して活躍するはず。少なくとも、そう思わせるだけの実績を残している。
今季からメッツに移籍した千賀滉大は12勝をマークした。糸井氏は「彼の力からすると2桁は当然。千賀投手以上に勝っても全く不思議ではないですね」と期待する。
これまで日本人メジャーリーガーの1年目最多勝は、2012年のダルビッシュ有(当時レンジャーズ)と2016年の前田健太(当時ドジャース)がマークした16勝。山本なら記録更新しても驚けないだろう。
さらに来季は打者に専念する大谷翔平との対戦など、想像しただけでワクワクが止まらない。「忙しくてなかなかアメリカまで行けませんが、一度は観に行きたいですね」と糸井氏も胸を膨らませる。
ダルビッシュが抜けた翌年に優勝した日本ハム
ただ、大エースが流出したオリックスを心配するファンも少なくないだろう。山本由伸の穴が簡単に埋まるはずもない。しかし、糸井氏はこう話す。
「あそこまでの投手の代役はいないと思いますが、オリックスは山下舜平大とか、東晃平とか若手投手が次から次に出てきます。そこは自信があると思うし、僕らがいた日本ハムもダルビッシュが抜けた翌年に優勝しました」
2012年、前年に18勝を挙げたダルビッシュが抜けたものの、栗山英樹監督が就任した日本ハムは優勝。糸井氏も出塁率.404をマークしてタイトルを獲得し、大きく貢献した。
振り返れば、今季も吉田正尚という主軸が移籍しながらリーグ3連覇を果たした。大黒柱が抜けても4連覇を達成すれば、海の向こうで山本も喜ぶに違いない。
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