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阪神タイガース不動の4番・大山悠輔、地味でも高い貢献度を裏付けるデータ

2023 9/8 07:00SPAIA編集部
阪神の大山悠輔,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

リーグ最多87四球、リーグ2位の出塁率.404

阪神が優勝マジックを13に減らし、いよいよ18年ぶりの「アレ」が見えてきた。投手陣の充実、踏ん張りが称賛されることが多いが、野手陣では主砲・大山悠輔の働きを見逃してはならない。

白鴎大からドラフト1位で入団して7年目。今季は開幕から全試合4番として出場しており、打率.289、14本塁打、64打点と一見、飛び抜けた成績ではないが、リーグ最多の87四球を選んでおり、リーグ2位の出塁率.404をマークしている。バットを振るだけでなく、振らなくてもチームに貢献しているのだ。

昨季までは貧打に泣く試合が少なくなかった阪神。岡田彰布監督が「四球は安打と同じ」とフロントに掛け合い、四球の査定ポイントをアップした効果もあるだろう。

チーム打率はリーグ5位だった昨季の.243から、今季はリーグ3位の.248とわずかに上昇しただけだが、四球数はリーグ3位だった昨季の358個をすでに上回る、リーグ最多の439個を記録。チーム総得点もリーグ5位だった昨季の489から、今季はリーグトップの481得点をマークしている。

それを最も体現しているのが大山と言える。過去6シーズンで最多は昨季の59四球。今季はすでに大幅に上回って自己最多を更新しており、「出塁率-打率」で算出される、選球眼(四死球によってどれだけ出塁したか)を表す指標「IsoD」も、規定打席到達者ではヤクルト村上宗隆に次ぐリーグ2位の.115となっている。

3年連続四球王のヤクルト村上宗隆を上回る

四球の多さは選球眼ももちろんだが、それだけ相手バッテリーから警戒されている裏返しでもあり、強打者の証明とも言える。実際、昨季までは村上宗隆が最多四球を独占。2020年は87四球、2021年は106四球、2022年は118四球と3年連続でセ・リーグ四球王だった。

それが今季は76四球の村上を抑えて、大山が堂々のトップ。最多四球はタイトルではないとはいえ、チームへの貢献度は高い。

大山のストライクゾーンを9分割したコース別打率と打球方向データを見ると、面白い傾向が見えてくる。

阪神・大山悠輔のゾーン別打率

阪神・大山悠輔の打球方向データ


打率3割以上を示す赤色に染まっているのは真ん中から外角のベルトラインより高いコース。逆に外角低めと内角低めは打率1割台と打てていない。打球方向データではレフト方向と左中間を合わせて54%を占めている。

つまり、真ん中から外寄りの甘いボールを引っ張っていることが分かる。外角球を逆らわずにライト方向に打てれば、さらに打率も上がり、本塁打も増えそうな気もするが、思い切りのいいスイングが持ち味の大山らしいと言えるだろう。

それだけ強振するタイプにもかかわらず、四球がリーグ最多という点は選球眼や配球の読みなど、高い打撃スキルを証明している。

昨季から飛躍的に伸びていたIsoD

大山のIsoDは2019年が.054、2020年が.069、2021年が.053と低かったが、昨季は規定打席到達者で3位の.091に上昇。そして今季の.115と伸びており、キャリアを積んで成長を重ねてきた面もあるだろう。

昨季、三冠王に輝き、チームを優勝に導いた村上宗隆に比べると地味な印象は拭えない。それでもファンやマスコミの多大なプレッシャーに耐えて4番を張り続け、しかも結果を残すことは並大抵ではない。

大山の今季推定年俸は1億3000万円。優勝すればどこまで上がるだろうか。四球でアップした査定ポイント以上の恩恵を受けてもいいはずだ。

※成績は9月6日現在

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