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3割打者セ3人、パ4人だけの異常事態…投高打低はなぜ進む?

2022 6/3 06:00SPAIA編集部
日本ハムの松本剛,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

昨季の打率3割以上はセ7人、パ4人

交流戦も3カードが終わったプロ野球。開幕から2カ月以上が経過し、気温や湿度も高くなって疲れが出始める頃だろう。

シーズン序盤戦はロッテ・佐々木朗希が完全試合を達成して大ブレイク。白井一行球審に詰め寄られる騒動などもあり、話題の中心となった。

19三振を奪った完全試合はオリックス戦、14奪三振で8回までパーフェクトだった次の登板は日本ハム戦。佐々木の快投と18歳の捕手・松川虎生のリードが絶賛されることはあっても、相手打線についての言及は少なかった。調子が悪かったのか、それ以上に佐々木が凄かったのか、その両方なのか判然としないが、野手陣は元気がないように見えるのは確かだ。

6月2日現在、セ・リーグでは3割打者はたった3人、パ・リーグでも4人しかいない。セはDeNA牧秀悟が打率.314で1位、チームメイトで2020年の首位打者・佐野恵太が2位、巨人の吉川尚輝が3位だが、4位の広島・坂倉将吾は.296と3割を割っている。

パは日本ハムの松本剛が.370のハイアベレージで独走しており、3割を超えているのは2位のソフトバンク・今宮健太、3位でチームメイトの柳町達、4位の日本ハム・野村佑希までだ。

昨年はシーズンを通して規定打席以上で打率3割を超えたのがセは7人、パは4人だったから今季は「投高打低」が進んでいると言えるだろう。

5月31日は完封4試合、12球団合計でわずか15得点

5月31日は完封が4試合もあった。勝ったチームも得点は少なく、その日最も得点したのが広島の4点。12チーム、6試合の得点を合計すると、なんと15点(1チーム平均1.25点)しか取っていないのだ。

投手成績を見ると規定投球回以上で防御率1点台はセが2人、パは6人もいる。昨年はセ・パ合わせてもオリックスの山本由伸1人だけだったことを考えると、今後の試合消化とともに減っていくとしても全体的に防御率は良化していると言って差し支えないだろう。

ソフトバンクの千賀滉大が西日本スポーツに寄稿したコラムで「3割打者が存在しなくなる時代が来る」と書いたことが話題になった。投手は様々なデータや情報をトレーニングに生かす環境が整っているため、平均球速や変化球のスピード、変化量などが上昇しているが、打者はこなす必要のある練習量が多く、急速に進化している投手に対応するのは容易ではないというのがその真意だ。

筑後にあるソフトバンクの二軍施設では、映像を見ながらその場でボールの回転数など細かいデータをチェックできる最新鋭の設備が揃っているのは有名な話。理論に基づいた科学的なトレーニングで、育成出身の選手が次々に大成しているのだ。

ダルビッシュ有が投球練習のデータを測定する様子をYouTubeで公開して一気に日本でも広まった「ラプソード」は、ほとんどの球団が導入している。これまでは感覚に頼っていた部分が、データを活用することによって修正点が分かりやすくなり、投手の成長につながっている側面はあるだろう。

MLBでは「バレルゾーン」浸透

ラプソードは打球速度や打球角度、回転数などを計測する打者用の機器もあるが、自らの体だけで行う投球に比べると、バットを使用する打撃の方が再現するのは難しいかも知れない。

メジャーリーグでは数年前から打球角度26~30度の「バレルゾーン」が声高に叫ばれ、大谷翔平も力強いアッパースイングで本塁打を量産しているが、日本ではまだまだ浸透していない。新型コロナ感染者が出てベストオーダーが組めないといった各チームの事情もあるだろうが、投手の進化に打者が追いついていないという現実があるのではないか。

ロースコアの手に汗握る投手戦も見応えがあるが、アメリカのルーズベルト大統領が「一番面白いゲームスコアは8対7だ」と語ったことに由来する「ルーズベルトゲーム」のような打撃戦もファンを魅了する。

時代の変化とともに野球も変わっていく。「進化」をしっかり認識した上で野球を見れば、また違った楽しみが見出せるかも知れない。

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