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オープン戦とシーズン成績の相関関係、チームはほぼ無関係も個人は?

2022 3/25 11:05広尾晃
楽天の石井一久監督,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

オープン戦上位でも下位でもシーズン順位は大差なし

3月25日から2022年度のプロ野球のレギュラーシーズンが始まる。それに先立って行われたオープン戦は96試合を消化して、3月21日に終了した。

今年のオープン戦は楽天が1位。一方で昨年日本一になったヤクルトが最下位になり、話題となったが、オープン戦の結果とレギュラーシーズンでは相関関係があるのだろうか。過去5年のオープン戦結果とそのシーズンのペナントレースの順位を一覧表にしてみた。

2017~22のオープン戦順位とペナントレース結果,ⒸSPAIA


結論から言うと、オープン戦のチーム成績とそのシーズンのペナントレースには相関関係は見られない。

ヤクルトは昨年も最下位だったが、日本一になった。一昨年の巨人もオープン戦最下位からリーグ優勝した。対照的に2017年のロッテはオープン戦1位だったが、パ・リーグ最下位に終わった。オープン戦で1位から6位のチームのペナントレースでの平均順位は3.4、7位から12位のチームは3.6.ほとんど差がなかった。

もちろん、試合だから勝つに越したことはないが、オープン戦では勝負にこだわるよりも、主力選手の仕上がり具合や若手選手の実力の見極めの方が重要だ。オープン戦はあくまで「テスト」だということになろう。

坂本勇人や山田哲人はスロースターター?

では個人成績はどうなのか。過去5年間のオープン戦の通算成績を見ていこう。

2018~22年、オープン戦通算打率15傑 150打席以上,ⒸSPAIA


実績ある主力打者の名前が並ぶ。打率1位は昨年パ・リーグ打点王の楽天・島内宏明。3割打者の常連、DeNAの宮﨑敏郎、日本ハムの近藤健介らも着実に数字を残している。

ヤクルトの塩見泰隆は2018年以降リードオフマン候補としてオープン戦で起用され続けてきたが、なかなか結果が出なかった。しかし、昨年は1番に定着して初めて規定打席に到達し、日本一に貢献した。24盗塁はダントツの数字だ。

巨人の岡本和真は安打数、本塁打数、打点で1位。2018年に初めて規定打席に到達してから5年連続で30本塁打90打点以上。今や不動の4番打者だが、オープン戦からしっかり仕上げてきている。同じ巨人の中田翔も、オープン戦から数字を残すタイプだ。

150打席未満だが、今年7月31日に41歳になる阪神の糸井嘉男も5年間の通算打率.359。今年も2本塁打7打点、打率.346と気を吐いている。一方で、巨人の坂本勇人は通算打率.216、ヤクルト山田哲人は.214。主力選手の中にはスロースターターもいるのだ。

阪神・秋山拓巳は防御率1.29、西勇輝は8勝

では先発投手はどうだろうか。

2018~22年、オープン戦通算防御率15傑 40回以上,ⒸSPAIA


こちらも一線級の先発投手が並ぶ。阪神の秋山拓巳は5回未満で降板することが多く、勝ち星は1勝だがここ3年間は5試合19イニングを投げて無失点だ。同じく阪神の西勇輝は対照的に8勝。勝利投手の権利を獲得するまでしっかり投げている。

防御率2位の広島の左腕・床田寛樹はレギュラーシーズンでは2019年に7勝を挙げたが、ここ2年は5勝止まり。規定投球回数に達していない。昨年は9月に月間MVPを獲得したものの、チームの期待に応えたとは言えない状況だ。オープン戦では好調だが、ペナントレースで結果が出ない投手を「オープン戦エース」というが、今年の床田はどうだろうか。

中日・鈴木博志は24試合で自責点0

続いて救援投手を見ていこう。

2018~22年、オープン戦通算防御率15傑 20登板以上,ⒸSPAIA


やはり一線級の救援投手が並んでいる。防御率2位のDeNA山﨑康晃は、今春のオープン戦は6試合投げて無失点。クローザーの座奪還を目指すが、現在のクローザー三嶋一輝も今春は6試合無失点。つばぜり合いになっている。

中日の鈴木博志は、厳密には今季から先発投手だ。昨年までの4年間で24試合を投げて自責点0とオープン戦では抜群の成績。毎年のようにクローザー候補と言われたものの、シーズンでは結果が残せなかった。今年は先発に転向し、2試合8回を投げて自責点4だった。今年こそ花開くだろうか。

20試合未満だが、ソフトバンクの3年目・津森宥紀は、オープン戦では通算17試合で投げて一度も失点していない。こういう投手は起用したくなるだろう。

オープン戦はベテランにとっては「調整の期間」であり、新人にとっては「売り出すチャンス」だ。それぞれの数字の意味するところは違うが、個人成績はレギュラーシーズンと大いに関係していることがわかる。

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