防御率は3.01と安定も4勝どまりだった2021年
今シーズンこそは。そんな思いが最も強いのは楽天かもしれない。昨年2020年のキャンプではヤンキースから日本球界へ復帰した田中将大投手(33)に話題が集中。投手力の高さから多くの評論家にパ・リーグ優勝候補筆頭に挙げられ、希望を抱いたままシーズンインした。
ただ、結果的には3位に終わった。開幕から一度も借金を背負うことなくシーズンを終えたが、スタートダッシュから徐々に順位を落としていった印象は否めなかった。
チームがいまひとつ勢いに乗れなかった原因の一つは、期待の大きかった田中将大の4勝9敗という成績にあったことも確かだろう。
昨季は10月25日のオリックス戦で先発し、8回2失点ながら黒星を喫したのが田中の最終登板。8月20日の日本ハム戦から10戦連続勝ち星なしのままシーズンを終える、寂しい終わり方だった。
田中は防御率こそリーグ5位の3.01と安定はしていた。だが、米大リーグ・ヤンキースから8年ぶりのNPB復帰で優勝請負人になる、というわけにはいかなかった。
「(V逸に終わり)チームが3位になったのは、自分の責任が大きいと思う。迷惑をかけました」というコメントにも、田中本人の悔しさが滲んでいる。
勝負どころでギアチェンジできず
実際、21年の田中は本調子ではなかった。開幕前の3月、練習中に右ふくらはぎを故障。そのまま、だましだましの状態でシーズンを乗り切った。
球団OBの一人は「下半身の状態が良くないので、無意識にかばおうとしてフォームを崩していた。その影響で腕が振り遅れて、ボールに角度が付きづらく、本来の直球の威力を感じられなかった。ここぞという場面でのギアチェンジができず、負けが重なったのでしょう」と分析している。
ただ、そんな状態で「さすが」と思わせる結果を残していることも事実だ。6回を自責点3以内に抑えるクオリティスタート(QS)は23試合の登板で17試合。これはチームトップの数字で、援護に恵まれなかったという証拠でもある。
さらに1イニングに打者を何人出塁させたかを表す「WHIP」では1.03という数字を残した。この数字はオリックス優勝の立役者となった山本由伸に次ぐ、2番目の数字だった。状態が悪くてもできうる限りのベストを尽くした。そんな努力の跡がうかがえる。
データから見れば紙一重。開幕前の故障がなく、打線の援護があれば大活躍だったかもしれない。そう思えば、2022年への期待も膨らむ。
あと19勝で大台到達
今年の沖縄・金武キャンプで田中は充実した表情を見せていた。特に第2クール最終日となった9日には、野球評論家の松坂大輔氏(41)と会話を交わし、決意を新たにしていた。
先輩の目の前で変化球を交えて74球の投球。納得いかないボールには声を荒げて天を仰ぐなど、気合の入った投球を見せていた。この日は田中に加え岸孝之、則本昂大の3本柱がブルペンに勢揃い。まさに壮観だった。
田中は投球を終えると、岸と共に真っ先に松坂氏に近づき挨拶に出向いた。
「200勝という数字に一歩一歩近づいていくことができればと思っています」
松坂氏は日米通算170勝で現役を終えた。しかし、田中は余力を残しながらあと19勝に迫っている。今季中にでも達成可能な数字に思いを馳せていた。
オープン戦も順調、真価問われる復帰2年目
田中がそんな数字を残せば楽天は間違いなく強くなる。直近では3月21日の巨人とのオープン戦に登板し6回2失点とまずまずの内容だった。
オープン戦は計3試合で14回を投げ自責4、防御率2.57と順調な調整ぶりを見せた。シーズンへの抱負を問われると「優勝、日本一を目指してやっている」と迷いなく返答した。
順当にいけば開幕4戦目、29日のオリックス戦(京セラ)で先発の予定で、日本復帰2シーズン目のスタートを切る。
楽天はオープン戦を11勝2敗3分で“優勝”した。田中だけに頼るつもりはないだろうが、ベテランがローテの軸となればチームへ及ぼす影響は絶大だ。ここへ則本、岸、涌井、早川、瀧中らで先発陣を形成。宋、安楽、酒居ら中継ぎ陣から守護神・松井へ繋ぐピッチングスタッフは、他球団から見れば脅威そのもの。
マー君がメジャー帰りの本領を発揮し、今年こそチームを牽引することができるのか。今季の楽天の戦いの中に、田中の真価が示される。
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