タイプが違う打者の比較に便利な指標「RC」
長距離打者や中距離打者、走力に優れた打者、小技が巧い打者など、タイプの異なる打者を平等に比較する際に便利なのがRC(Runs Createdの略で個人の得点能力を表す)という指標。
長打力や出塁能力のほか、犠飛や犠打、盗塁など様々な要素が加味することで打者の“得点貢献能力”を測ることができ、チームの打者全員のRCを合計すると、チームの総得点とほぼ一致するようになっている。昨季、パ・リーグで優れたRCをマークした選手をランキング形式で紹介する。
リーグ唯一100超えの柳田悠岐
リーグトップに輝いたのは、リーグで唯一100超えを果たしたソフトバンクの柳田悠岐。チームはリーグ4位と低迷したが、打撃のあらゆる項目で上位に顔を出す柳田が、RCで堂々の1位となった。
今季は打撃部門で無冠に終わったが、それでも打率.300、28本塁打、80打点、出塁率.388、OPS.929と、及第点と言える数字をマーク。ジュリスベル・グラシアルやアルフレド・デスパイネをはじめ、戦力がなかなか揃わない中で主軸として奮闘した。
ソフトバンクが挙げたチーム得点数はリーグ2位の564だったが、そのうちの約107点を柳田が一人で生み出した計算になり、まさに打線の大黒柱。今季からキャプテンを務めることや昨季リーグ優勝を逃したことなど、例年よりもモチベーションが高いことが想定され、チームの得点にどれだけ貢献するのか引き続き注目だ。
オリックスをリーグ優勝に導いた杉本裕太郎と吉田正尚も上位にランクイン。両者はクリーンナップでそれぞれが打点を稼ぎ、勝負強いイメージをシーズンを通して相手に植え付けていた。RCでも優れた数値をマークしたことで、チームが得点を生み出すためにいかに貢献していたかを改めて証明した。リーグ2連覇を目指す上で間違いなくカギとなる2人だ。
リードオフマンの荻野貴司が3位
RCランキングの顔ぶれを見ると、前述した選手たちも含め、各球団のクリーンナップを担う選手が並んでいる。だが、同指標はOPSに不足しているとされていた走力を考慮していることもあってか、3位にはロッテの荻野貴司がランクイン。プロ入り12年目の36歳となるシーズンで初の全試合出場を果たし、最多安打と盗塁王のタイトルを獲得した荻野は、全試合でトップバッターを務めた。
荻野がいる時といない時とでロッテ打線の得点力が随分と変わることは以前から指摘されていたが、優れたRCをマークすることでそのことが証明された形だ。昨季はリーグで最も多くの安打を放つ一方、キャリアハイとなる53個の四球を選んでいることも見逃せない。
ロッテは8位に中村奨吾、惜しくもベスト10入りはならなかったが、レオネス・マーティン(74.8)が11位、ブランドン・レアードが12位(73.7)につけていた。4選手の得点貢献能力が優れていたからこそ、リーグトップのチーム得点数584を挙げられたとも言える。今季も荻野を含む4人の活躍が、チームの得点力を大きく左右するだろう。
打率や本塁打、打点などで個々の選手がどれだけ活躍したかはわかるが、チームの得点にどれだけ貢献したのかはわかりにくい。RCを追っていくことで得点への貢献度がわかり、違った角度から選手の価値を感じることができるはずだ。
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