類まれなパワーが魅力
2020年のドラフト会議で4球団競合の末に阪神タイガースへ入団した佐藤輝明。迎えた2021年シーズンは、良くも悪くも強烈なインパクトを残した1年だった。
84試合で20本塁打の活躍を見せた前半戦。歴代リーグワーストとなる59打席連続無安打と大スランプに陥った後半戦。そのどちらもが、正しく彼の本質なのだろう。今回はそんな豪傑のルーキーイヤーを振り返りたい。
佐藤輝の魅力はなんといっても類まれなパワーだ。その打撃の特徴として、低めに強いという点が挙げられる。シーズン24本塁打の半数が低めのボールを捉えたもの。高低別の長打率はNPB平均だと真ん中、高め、低めの順に下がっていくが、佐藤輝の場合は低めのゾーンの長打率が1番高かった。
打者の長打力を示す指標であるISO(長打率から打率を引いたもの)を見てみると、低めに関しては12球団トップを記録。打球に角度をつけにくい低めのボールを、すくい上げるようなスイングで放物線を描く姿がよく見られた。
また、同じくルーキーの牧秀悟が4位にランクしているのは興味深い。低めの球を長打にしてしまう、新たなトレンドの訪れを感じさせる。
豪快なアーチでファンを魅了、その一方で課題も
ローボールヒッターの佐藤輝だが、得意なエリアには同時にもろさも抱えていた。好きなゾーンだけに、どうしてもバットが出てしまうのだろう。ボール球の見極め、選球眼の部分では苦しんだ。ボールゾーンの難しいボールに手を出してしまって、カウントが不利になったり、凡退につながることが多かった。
そして、彼の打撃を語る上で三振の多さを避けて通ることはできない。その要因としては、コンタクト率の低さが挙げられる。フルスイングが売りの強打者であれば、ある程度空振りが増えることは仕方ないが、現状はとりわけ確率が低い。特に高めのボールにはバットが当たらないようだ。
初めの表にもあるように、高めの成績は低迷している。相手バッテリーから、高めのつり球を絡めた高低の揺さぶりを仕掛けられる打席がよく見られた。
今回は佐藤輝の打撃をゾーンの高低という視点を通してみていった。そのスイングから放たれる打球の質はすでに一流の域に達しており、豪快なアーチでファンを魅了した。一方で、バットで捉えるまでのアプローチには大きな課題を抱えている。弱点が明確であるだけに、その先に見せる怪物スラッガーの進化に期待したい。
※文章、表中の数字はすべて2021年シーズン終了時点
企画・監修:データスタジアム
執筆者:植松 大樹
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