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最有力は誰だ?セ・リーグ新人王候補をデータ比較、数値トップは…

2021 11/17 06:00SPAIA編集部
DeNAの牧秀悟と広島の栗林良吏とヤクルトの奥川恭伸,ⒸSPAIA
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牧秀悟は新人史上4人目の3割20発

レギュラーシーズンを終えたプロ野球。各タイトルも確定したが、発表まで全く見えないのがハイレベルな争いとなったセ・リーグの新人王だ。

開幕から突っ走ったのが近畿大からドラフト1位で阪神に入団した佐藤輝明だったが、8月22日から59打席連続無安打の大スランプに陥り、成績は急降下。最終的には打率.238、24本塁打、64打点にとどまり、「本命」からは外れたと言わざるを得ない。

佐藤に替わって評価を高めたのが中央大からドラフト2位でプロ入りしたDeNAの牧秀悟。7月に月間打率.194と調子を落としたが、東京五輪中断明けから勢いを取り戻し、10月の月間打率は.452をマークした。

最終的には打率.314(リーグ3位)、22本塁打(同7位タイ)、71打点(同7位タイ)と打率と打点は佐藤を上回り、本塁打もわずか2本差。新人では1958年の長嶋茂雄、1981年の石毛宏典、1986年の清原和博に続く史上4人目の3割20発をマークし、野手では筆頭候補にのし上がったと見られる。

野手でもう一人の候補は阪神の中野拓夢。三菱自動車岡崎からドラフト6位で入団し、当初はそれほど目立つ存在ではなかったものの、阪神の懸案だったショートのレギュラーに定着。結局、135試合に出場して打率.273、1本塁打、36打点ながら30盗塁で盗塁王に輝いた。

盗塁失敗は2回だけで盗塁成功率は93.8%をマーク。新人で唯一のタイトル獲得は強調材料だ。ただ、ポジション柄仕方ない面があるとはいえ、リーグワーストの17失策はいただけない。

セ・リーグ野手の新人王候補成績

37セーブの栗林良吏、54.1回連続無四球の奥川恭伸

一方、投手もレベルが高い。その筆頭が広島の栗林良吏だ。トヨタ自動車からドラフト1位で入団した本格派右腕は、開幕からクローザーとして獅子奮迅の活躍。新人記録を更新する22試合連続無失点をマークするなど、53試合に登板して0勝1敗37セーブ、防御率0.86という文句のない成績を残した。

栗林に続くのがヤクルトの奥川恭伸。星稜高から入団2年目だが、昨季は1試合しか登板していないため新人王資格を有している。規定投球回には達していないものの、18試合登板で9勝4敗、防御率3.26。54.1回連続無四球、9試合連続QS(6回以上自責点3以下)を記録するなど安定感が光った。チームが優勝したこともアピール材料だろう。

2人にはややインパクトで劣るものの、JR東日本からドラフト2位で阪神に入団した伊藤将司も候補に挙がる。左腕から繰り出すキレのいいストレートを武器に、23試合に登板して10勝7敗、防御率2.44をマーク。規定投球回には達していないが、勝利数、防御率とも奥川を上回っている。

セ・リーグ投手の新人王候補成績

FIPは栗林、RC27は牧がトップ

新人王を争うのが野手同士、あるいは投手同士なら比較しやすいが、今回は野手、投手ともにおり、投手の中でも先発とクローザーがいるため比較が難しい。

セイバーメトリクスのFIP(Fielding Independent Pitching)という指標がある。投手の責任である被本塁打、与四死球数、奪三振数のみで投手の能力を評価するもので上から並べると、栗林1.63、奥川2.89、伊藤3.91となる。また、同じイニング数で平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示すRSAA(Runs Saved Above Average)という指標では、上から順に伊藤19.1、栗林17.8、奥川7.6となる。

特定の選手1人で打線を構成した場合に1試合(27アウト)で平均何点取れるかを示すRC27を見ると、上から牧6.53、佐藤4.68、中野4.09となる。当然ながらどの角度から見るかで評価は変わるため、誰が選ばれても異論は出そうだ。

いずれにしても、これほどハイレベルな新人王争いも珍しい。発表の12月15日、どんな結果が出るか楽しみだ。

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