森下暢仁に続き2年連続新人王なるか
開幕から圧倒的なパフォーマンスを見せている広島のドラフト1位ルーキー・栗林良吏。阪神・佐藤輝明、DeNA・牧秀悟らとのハイレベルな新人王争いが度々話題になるが、もし栗林が新人王に輝けば、昨年の森下暢仁に続いて広島から2年連続での選出となる。
しかしリリーフ投手にとっては、先発投手の「規定投球回」や「10勝」、野手の「規定打席」のようなわかりやすい基準がない。そこで今回は、リリーフ投手である栗林の新人王獲得の可能性について、過去の新人王たちの成績と比較しながら考察していこう。
50試合・防御率2点台前半はマストか
2001年からの20年でセ・パ40人の新人王が誕生しているが、そのうち投手は30人、リリーフメインに絞ると9人になる。これは野手の10人とほぼ同数だ。9人の主な成績は以下の通り。
牧田和久は10試合に先発しているが、夏前から抑えに転向しての受賞で、45試合にリリーフ登板しているため対象に入れた。一方、高梨裕稔もリリーフ登板が多いが、先発転向後の8連勝が評価されての受賞のため、今回は対象外としている。
9人の平均的な数字を見ていくと、リリーフで新人王に選ばれるには、50~60試合登板・防御率2点台前半がマストの数字と言えそうだ。今シーズンの栗林は、これらの数字をクリアできるだろうか。
気になるのは登板数だ。9人の平均は58試合で、一番少ない榊原でも39試合に登板している。ただし榊原はロングリリーフも任されたため投球回も多く、さらに10勝を挙げた。他の投手とは一味違う点を考慮しなければならない。
しかし、リリーフの中でも中継ぎ・抑えで見ていくとどうだろうか。新人最多セーブを記録した山﨑康晃をはじめ、三瀬幸司、牧田、大久保勝信らが二桁セーブを記録しているが、彼らのリリーフ登板数は概ね50試合前後。となると、栗林に求められるのもこれくらいの登板数となるだろう。
ここまで36試合登板(チーム89試合)の栗林は、今後14試合(同残り54試合)に登板する必要がある。3~4試合に1回登板すれば十分到達可能な数字だ。セーブ数で見ても、このペースで積み重ねれば30セーブは十分射程圏内と言えるだろう。
3つの優れた指標
登板数はクリアできそうな栗林だが、投球内容に目を移すと、さらに優れた指標が並ぶ。
一つ目は防御率だ。9人の平均は2.29だが、栗林は0.50と圧巻の数字をマークしている。9人で最も良かった摂津正でさえ1.47だったのだから、この数字を維持することができれば、大きなプラス材料となる。
二つ目は奪三振数とその割合だ。ここまで35.2回で58奪三振を記録しており、K%では9人の平均の約2倍、44.3%を記録。アウトの約半数が三振という、とんでもないパフォーマンスを見せている。
三つ目は被安打の少なさだ。これまでに喫した安打はわずか14本で、驚異の被打率.124をマークしている。これは、今シーズンのセ・リーグ6球団の抑え投手の中でも一番低い数字だ。被安打が少ないため当然WHIPも抑えられており、WHIP0.84は2015年の山﨑をわずかだが上回っている。
一方で、1つ課題がある。与四球の多さだ。9人の平均BB%は6.6%だったが、栗林はその倍近い12.2%となっている。9人で最も高い平良海馬に次ぐ数字だ。そのため、圧倒的な奪三振数を誇っているにも関わらず、K/BBは3.6で9人の平均3.6と変わらない。
逆に、それだけ四球を与えていてもこの防御率、WHIPを記録しているとも言える。与四球を減らすということは、口で言うほど単純で簡単なことではない。ただ、ここが改善されればさらに圧倒的な成績を残すことも可能となる。
新人王争いは佐藤輝明が一歩リードか
阪神・佐藤輝は8月19日のDeNA戦で23号本塁打を放ち、球団新人最多記録を樹立した。優勝争い真っ只中のチームにあって、その打棒は止まる所を知らない。現状では佐藤輝が一歩リードといったところだろうか。
しかし栗林も負けてはいない。開幕から22試合連続無失点はプロ野球新人記録、「開幕から」を除いても球団記録だ。さらに侍ジャパンの一員として東京五輪にも出場し、全5試合に登板して2勝3セーブで金メダル獲得に大きく貢献した。
7月以降はやや数字を落としているものの、DeNAの牧秀悟もまだまだ巻き返しが可能な位置にいる。阪神の中野拓夢も、今後の活躍次第では候補となるかもしれない。
記者投票で決まる新人王は、単純な成績だけでなく、活躍のインパクトも大事な要素だ。栗林がここからどれだけのパフォーマンスを見せてくれるのか、楽しみに見守りたい。
※成績は8月20日終了時点
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