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投手の勝敗と援護率の相関関係、田中将大が防御率4位でも4勝8敗の理由

2021 10/21 06:00広尾晃
楽天・田中将大,ⒸSPAIA
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2021年「失点率-援護率」ランキング

今季、ニューヨーク・ヤンキースから古巣楽天に復帰した田中将大が、勝ち星がなかなか増えずに苦しんでいる。10月17日の西武戦では4.2回を投げて今季ワーストタイの自責点5で8敗目を喫した。通算4勝8敗は、本人にとっても球団やファンにとっても不本意な成績だろう。

しかし田中の防御率は3.11、リーグ4位に位置している。抜群の成績とは言えないが、防御率のわりに勝ち星が増えていないのだ。

その背景には「援護点」の低さがある。援護点(RS=Run Support)は、その投手が投げている間に入った得点のこと。先発投手が5失点しても援護点が6点以上あれば勝ち星が付くことがあるし、先発が1失点で投げても援護点が0なら負け投手になることもある。

投手の実力は、勝敗だけでなく援護点を加味しないと見えてこないのだ。援護点と失点の収支を見ると、その投手が味方打線の援護に恵まれているかどうかが浮き彫りになってくる。

9イニングあたりの援護点を援護率(RSA)という。これに対応するのは防御率ではなく、自責点にその他の失点も含めた失点率となる。援護率-失点率で、その投手の援護の状況が見えてくる。

なお、援護点はその投手が投げている間に味方が取った点のことだが、例えば投手が8回裏で降板して9回表に味方が点を取って勝ち投手になるような場合には、その得点も援護点となる。この場合投手が投げたのは8回だが、援護を受けた回(援護回)は9回になる。また投手が1イニング未満で降板した場合は、その裏は援護回とはならない。投球回と援護回は、同じにはならないことが多い。

なお、救援投手でも援護点を算出することができるが、勝敗にあまり絡まないので算出されていない。

セ・リーグ1位は阪神・伊藤将司、菅野智之や大野雄大はマイナス

セ・リーグの100イニング以上投げた投手について※援護率-失点率の順に並べてみよう。数字は10月18日時点。

セ・リーグ100イニング以上の投手の援護率


※(援護率-失点率)がプラスの投手は全員勝ち越している。しかしマイナスの投手は8人のうち2人しか勝ち越していない。巨人の菅野智之、中日の大野雄大とリーグを代表するエースも援護点がなくて負け越している。 これを見ても援護点が投手の勝敗に大きな影響を与えていることが分かる。

しかし、阪神の伊藤将司は(援護率-失点率)がリーグ最上位でありながら9勝7敗と2つの勝ち越しにとどまっている。伊藤の投球成績を子細に見ていくと、4月24日のDeNA戦で伊藤が9回自責点1で完投した試合で味方が13点もの援護をしている。この数字が大きく響いて(援護率-失点率)はリーグ1位だが、他の登板時には援護点はそれほど大きくないため、勝ち星が伸びていない。

援護点は、ただ多ければよいというものではなく、多くの試合で少しずつでも失点よりも上回っている方が、勝ち星につながりやすい。

今季、最多勝を争う広島の九里亜蓮は防御率は3.87、失点率は4.45と良くない。援護点も4.78とギリギリのプラスだが12勝8敗と勝ち越している。これは九里が失点しながらも1点2点という小さなリードを保って責任投球回数まで投げていることを意味している。

援護率で見ると、大野雄大と福谷浩司の中日勢は2点台。貧打に泣かされていることが分かる。

田中将大は援護率最少の2.26

続いてパ・リーグを見ていこう。

パ・リーグ100イニング以上の投手の援護率


(援護率-失点率)がプラスの14人のうち9人が勝ち越し、2人が勝敗同数、3人が負け越している。負け越している3投手の(援護率-失点率)は0.4点以下のわずかなプラスだ。

また(援護率-失点率)がマイナスの6投手のうち3人は負け越し、勝敗同数が2人。

西武の髙橋光成は、(援護率-失点率)がマイナスなのに11勝8敗と勝ち越している。これは少ない援護点の僅差の試合で勝ち星を拾っていることを意味する。粘りの投球ができているのだ。

田中将大の援護率はパで100イニング以上投げている20投手の中で最少の2.26。厳しい援護で投げてきたことを意味している。今季の田中将大はツキがないという見方ができよう。

ちなみに2013年、渡米直前の田中は24勝0敗という圧倒的な成績を残したが、この時の田中の防御率は1.27、失点率は1.49、援護率は6.22、(援護率-失点率)は4.73という大幅なプラスだった。もちろん田中将大は球史に残る快投を演じたが、同時に味方打線も大きな援護点でフォローしたのだ。

2018年の多和田真三郎は援護に恵まれ最多勝

それほど成績が良くないのに援護点に後押しされて勝ち星を稼いだ投手もいる。2018年、西武の多和田真三郎だ。この年の多和田は防御率はリーグ8位の3.81、失点率は4.22だったが援護率が7.03もあり、(援護率―失点率)は2.81。これもあって16勝5敗で最多勝を獲得している。多和田は今季、自律神経失調症で戦力外を通告されたが、現役続行の意向を表明している。もう一度実力で勝ち星を稼いでほしいものだ。

「援護点が低い投手は、投球の間が悪く、味方打線を乗せない」とか「勝負の流れを切ってしまう」などという意見もあるが、これを証明するデータはない。田中将大の例を見てもわかるように投手の援護点はシーズンによって変動する。

むしろ援護点は「運」の産物であり、良い投手とは、援護点が多い時も少ない時も、常に「リードした状況」をキープできる投手ということになるのではないか。

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