「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

柳田悠岐と吉田正尚の共通点とは?フルスイングで高打率を残す理由

2021 8/7 11:00中村タカシ
ソフトバンクの柳田悠岐とオリックスの吉田正尚,ⒸSPAIA
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA

ブレない回転軸

パ・リーグを代表する左のスラッガーとして活躍するソフトバンクの柳田悠岐とオリックスの吉田正尚。今シーズンの成績を見ると、吉田は打率.343でリーグ1位を独走し、本塁打もリーグ5位の17本、柳田も22本塁打でリーグ1位、打率も.296でリーグ7位と、2人とも打率と本塁打の両方でハイレベルな数字を残している。

2人に共通しているのが「フルスイング」。あれだけ目いっぱい振ると打率が下がってしまうのではないかと懸念を抱く人もいるだろう。しかし柳田と吉田はフルスイングにもかかわらず、打率も残せるだけの3つのフォーム上の共通点がある。

まず回転軸がブレないところだ。柳田と吉田は左打ちなので右足股関節を基点に回転している。2人とも右足で壁をしっかり作れているため、変化球でタイミングを外されてもスイングスピードを落とさずに振れる。

前足股関節への体重移動が不十分なまま回転してしまうと、前足の踏ん張りが効かなくなるためドアスイングになりやすい。ドアスイングはバットを遠回りさせてインパクトへ向かうため、速球への振り遅れやタイミングを外された時の対処が難しくなる。

柳田と吉田は左足から右足股関節にしっかり体重移動できているため、右足の股関節を回転軸としてどんなボールでもフルスイングができるのだ。

ボールの軌道にヘッドを入れるのが速い

ミート力に優れている打者の多くは、ヘッドを早い段階でボールの軌道に入れるレベルスイングができている。一般的には地面と平行にバットを振るのがレベルスイングと思われているが、厳密に言うとボールの軌道に合わせてバットを水平に入れるのがレベルスイングだ。

タイプは違うが、ヤクルトの青木宣親はボールの軌道にヘッドを早く入れることに長けているためヒットを量産できている。青木の通算打率はNPB歴代最高の.322を記録していることからも、ボールの軌道にヘッドを早く入れられる選手は打率が高くなりやすいと言える。

柳田と吉田も、ヘッドをボールの軌道に早く入れることに長けている。2人とも広角にヒットやホームランを打てるが、それもボールの軌道にヘッドを早く入れているからこそである。また、インコースやアウトコースにボールを投げられても、ボールの軌道上にバットがあれば最悪ファールで逃げることも可能だ。

2人のフルスイングは単に力任せに振っているのではない。ヒットゾーンに早くヘッドを入れながら、最大限のヘッドスピードでスイングを可能にする高等テクニックも兼ね備えている。そのためフルスイングでも高い打率を残せるのだ。

開かない上半身

上半身がギリギリまで開かないメリットとして、体重移動で生み出したパワーを漏らすことなく溜められる点が挙げられる。最大限ヘッドスピードを加速させてボールを打つには、トップをなるべく深く作り、上半身と下半身の捻れを大きくすることが必要だ。

少しでも上半身が開いた状態で打ちにいけば、ヘッドスピードをダウンさせてしまう。さらに外のボールに対しては手打ちになってしまい、逆方向へ強い打球が打てなくなることにも繋がるのだ。逆方向にヒットやホームランを打つには、上半身をいかに開かずボールを待てるかが鍵となる。

柳田と吉田が逆方向にヒットやホームランが多い要因は、まさに上半身がギリギリまで開かないところにある。2人は右足が着地した瞬間、上半身はまだ横に向いている状態でトップも深く作れている。また右腕の張りが強く、右肩の上にアゴが乗っている状態を作れているのも開きを抑えられている証拠だ。

柳田と吉田は左の長距離砲として、日本のプロ野球界を盛り上げている。2人のフルスイングを見るために試合観戦に訪れるファンも多いだろう。2人は東京五輪の日本代表に選出され、チームの攻撃陣を支えている。決勝の舞台でも、2人の活躍で金メダル獲得を期待したい。

【関連記事】
エンゼルス・大谷翔平、ノーステップでも規格外な飛距離が生まれる理由
パ・リーグHR/FBランキング、柳田悠岐は日本版フライボール革命?
セ・リーグIsoPランキング、セ界一のパワーヒッターは誰だ?