貫禄すら感じさせる投球
広島のドラフト1位ルーキー・栗林良吏の勢いが止まらない。チームは17勝22敗でリーグ5位に低迷しているものの、これまで19試合に登板してリーグ2位タイの10セーブ。自身が持つルーキーの連続無失点の日本記録も「19」と更新中で、向かうところ敵なしの状況が続いている。
5月28日のロッテ戦では、10-8と2点リードの9回に登板すると、代打の山口航輝と続く荻野貴司を中飛。最後はパ・リーグの本塁打トップのレオネス・マーティンを見逃しの三振に仕留めた。伸びのある直球のほか、得意のフォーク、カットボール、カーブの制球が冴え、危なげない上に貫禄すら感じさせる投球だった。
ここまでの登板で調子の波がほとんどなく、試合の流れが相手チーム寄りでも常に安定した投球を継続。直球も安定して150kmを超え(最速154km)、いざという場面で三振がとれるため、クローザーとして申し分ない。
驚異の奪三振率
特筆すべきは、14.64という高い奪三振率。セ・リーグの他チームのクローザーと比較しても群を抜いていることがわかる。中日のR.マルティネスも12.96と高い奪三振率を誇るが、栗林はさらにその上をゆく。
また、投球割合が全体の29.9%を占める得意のフォークボールの被打率は、圧巻の.032。奪空振り率も37.4%と驚愕の数値をマークしている。同球種の奪空振り率は20~25%あれば高いと言え、いかに栗林のフォークボールがバットに当てられていないかがわかる。
高い位置から向かってくる落差のあるフォークのため、打者からすれば見極めが難しくタイミングを取りづらい。追い込まれる前にとらえたいところだが、直球やカットボール、カーブの制球にも優れており、いつでも難なくストライクがとれる。そのため、打者はあっさりとカウントが不利な状態に陥る。短いイニングで攻略するのは至難の業だろう。
今後の課題は登板過多の回避
ゾーン別データを見ると、左打者でも右打者でも、低めに球を集めている傾向が顕著。特に右打者の外角低めへの投球割合は34.6%と最も多いが、同コースの被打率は.000。左打者の外角低めも投球割合は15.8%と最多だが、こちらも被打率は.000。打者としてはベルト付近の高さの球を狙いたいところだが、その高さへの投球割合は低く、裏を返せば失投もほとんどない状況と言える。
心配されるのが酷使されること。現状はチーム状態があまり良くないことも影響し、セ・リーグのクローザーの中では4番目の19試合にとどまっている。だが、9回打ち切りの今季はリードの場面ではもちろん、同点での場面での登板も増えると考えられ、以下のコンディションをキープしていくかがコンスタントに活躍するためのカギになるだろう。また、この夏の東京オリンピックが開催されれば、侍ジャパンへの招集の可能性も十分にありうる。
前述したように、“開幕からルーキーの栗林が連続試合無失点「19」を更新中”だ。しかし、“ルーキー”に限らなければ2016年に田島慎二(中日)が記録した31試合があり、“開幕から”でなければ2006年に藤川球児(元阪神)が記録した38試合がある。
現在の栗林の安定感なら、それらの記録更新も大いにありうる。ルーキーでありながら、とてつもない存在感を見せる栗林がどんな偉業を達成してくれるのか今後も目が離せない。
※数字は2021年5月30日試合終了時点
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