攻守でチームを牽引
42試合を消化し、28勝12敗2分け。2位巨人に4.5ゲーム差をつけて首位を快走する阪神。そんな好調なチームを支えているのが、扇の要・梅野隆太郎だ。打つ方では驚異の得点圏打率.519(リーグトップ)をマークするなど、勝負強い打撃で強力打線の一角として勝利に貢献。捕手としてはチーム防御率3.18(リーグ2位)の投手陣を牽引している。
ワンバウンドを止めるブロッキングの技術は球界屈指である上、ファンの間で「梅ちゃんバズーカ」と称される強肩も健在。5月19日にプロ初先発初白星を挙げた西純矢を巧みにリードし、西が降板した際にはベンチで声をかけて好投を労うなど、リーダーシップも随所に垣間見せている。
4月18日のヤクルト戦では、ワンバウンド投球を捕球しようとした際に右手親指付近に球が直撃。その影響で交代してベンチに下がったが、20日の巨人戦には先発出場し、相変わらず怪我に強いところも見せた。
打撃は中堅から右方向へ意識が顕著
今季の梅野はとにかくチャンスに強い。塁状況別の数字を見ると、走者二塁時の打率が.375。二三塁時の打率は1.000、三塁時及び満塁時の打率は.667とハイアベレージをマークしている。開幕当初は佐藤輝明の後ろ、現在ではロハス・ジュニアの後ろを打つ7番として機能し、打線を活性化している。クラッチヒッターが下位打線に座っているチームは強い。
得点圏打率を見ると、梅野は.519でリーグダントツのトップで、2位がジェフリー・マルテ(.375)、3位が佐藤(.326)、4位がジェリーサンズ(.318)と阪神勢が上位を独占。打線の上位下位関係なく、どこからでも得点が期待できる打線を形成している。
また、梅野の打撃の特長は、中堅から右方向を意識していること。SPAIAの打球方向データを見ると、最も多いのが右中間(30%)で次が左中間(20%)、続いて中堅と右翼(19%)、左翼(13%)の順。球を引きつけて食らいついていく姿勢が、打球方向及び得点圏での高打率につながっているのだろう。
真ん中のコースに強く、内角と外角に脆さを見せるなどゾーン別の打率は得意不得意が極端なことが課題だが、捕手という大仕事をする傍らで打率.252(出塁率.322)は及第点と言えるだろう。
ライバルの巨人戦で好成績
5月13日に出場選手登録日数が7年に到達し、国内FA権の資格取得条件を満たした。報道によると、権利の行使に関する言及はなく、「今はチームの勝利のために、目の前の試合を頑張っていきたい」ということだが、仮に行使することになれば、今年のストーブリーグの目玉になるはずだ。
また、怪我なくこのままの調子をキープすれば、今夏の東京五輪を戦う野球日本代表への選出も十分に考えられる。捕手としての技術やリーダーシップ、ブロッキング技術の高さゆえの走者を背負った場面での強気のリード、勝負強い打撃を持ち合せている梅野の総合力の高さは魅力的だ。
昨季は梅野のほか、原口文仁、坂本誠志郎らを併用する時期もあったが、今季ここまでは梅野がほとんどの試合で先発出場し、安定した強さを見せている。ライバルの対巨人戦で打率.333(出塁率.419)と好成績をマークしていることも強み。阪神の16年ぶりのリーグ優勝を果たすためには、攻守における梅野の活躍が欠かせない。
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