“雨柳さん”早くもキャリア11度目の中止で球団トップに並ぶ
阪神の6年目右腕・青柳晃洋は、2つの顔を持つ。今季も開幕から好投を続けており、3勝(2敗)、防御率2.00とローテーションの一角として抜群の安定感を誇示。その一方でのぞかせるのが、ファンの間で“雨柳さん”の呼び名で定着する凄まじい雨男ぶりだ。
すでに今季だけで3度、天候不良を理由に登板予定試合が流れており20日のヤクルト戦で通算11回を数え、メッセンジャーに並んでついに球団トップ。10年から在籍し実質9年間、ローテーションでフル回転していた助っ人右腕と対比すると、青柳の驚異的なペースがうかがえる。
「何でも一番になることは良いことなんで…」と持ち前のポジティブ思考で笑い飛ばしたものの、今年の中止3回はすべて甲子園での予告先発。開幕から約2カ月が経過しようとしている状況で、いまだに1度も本拠地のマウンドに上がっていないのは辛いようで「ホームのファンの前で試合ができないのは結構悲しいなって感じです」と寂しげだった。
雨で生まれた取材で聞けた鳥谷敬との秘話
中止決定後、そんな青柳を代表取材する機会に恵まれた。今はコロナ禍で球場での対面取材はできず、選手と言葉を交わせる貴重な機会。矢野監督はスライド登板させないことを明言していたため、週明けの交流戦開幕となるロッテ3連戦に起用されると予想して2019年までチームメートだった鳥谷敬との対戦について質問してみた。
「トリさんにはいろんな言葉をかけてもらったりとか、そういう恩があるので。トリさんと対戦できるというのはすごく楽しみではありますね」
チームメートではあったものの、投手と野手、27歳と39歳…深い接点はないように見える2人だが、実はクラブハウスのロッカーが隣で、愛用のサングラスをプレゼントされたこともあったという。会話する機会も多く、経験豊富な大先輩から送られた今でも胸に刻む言葉を教えてくれた。
苦闘でかけられた忘れられない言葉
2019年のことだ。6月中旬から約2カ月間も白星に見放された時期に肩を落とす右腕をすぐ隣で激励してくれたという。
「落ち込むなら(2軍の)鳴尾に行ってから落ち込め。1軍のロッカーに来れてる時点で次があるんだから、切り替えて。落ち込む必要はない。その代わり、鳴尾に行ったら全力で落ち込め」(鳥谷)
この言葉は大きかった。「今の僕にすごく生きてるなというのはすごくありますね」
置かれた立場を俯瞰して捉え、視線は下ではなく前へ向ける――。今や投手陣に欠かせぬ存在となった背番号50のプレーヤーとしての心構えを築く出来事だったことは間違いない。
ローテーション再編で次回は敵地の西武戦濃厚
「選球眼がめちゃくちゃ良いのはもちろんなんですけど、狙ったボールをしっかり打ってるなって印象が強いので、配球の偏りだったりをなくした方がいいなっていうのはありますね」
そう意気込んでいたが、鈴木誠也らのコロナ感染で21日からの広島3連戦が延期となった影響で、ローテーションは再び変更。青柳のロッテ戦登板、ひいては鳥谷との対戦も幻になってしまった。
次回は28日からの敵地での西武戦で登板が濃厚となり、青柳の“甲子園への道”はまた遠のいた。
それでも、記者としては、これでもかと登板試合が雨で流れる苦境でも前を向くメンタリティーや、鳥谷との意外で熱すぎるエピソードを耳にできた充実感は残った。今は、1日でも早く青柳が甲子園で快投を披露する日が来ることを願っている。
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