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規格外のパワーと柔軟な対応力 阪神・佐藤輝明の次なる課題とは

2021 5/17 06:00浜田哲男
阪神タイガースの佐藤輝明ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

内角の厳しいコースを左翼席上段へ

27勝11敗2分け(5月16日試合終了時点)で首位を快走する阪神。ルーキーながら、その主軸として期待通りの活躍を見せている佐藤輝明。開幕当初は三振も多く打率も低迷していたが、試合を重ねる毎にプロの球にアジャストし、現在ともにリーグ2位の10本塁打、31打点を挙げる活躍を見せている。

5月7日のDeNA戦では1点リードで迎えた4回、中川虎大の内角高めの直球を腕をコンパクトに畳んで振り抜き、右翼席上段まで軽々と運んだ。カウント2-2から空振りを狙って投じられた球だったが、内角の厳しいコースをあそこまで運ばれたらたまらない。まさに規格外と呼ぶに相応しい一撃だった。

シーズンに入れば内角を厳しく突かれ、苦戦するとの見方が多かったが、その対応力は予想以上。最近は際どい球を見極めて四球も選べており、一つ一つ課題をクリアしている印象。今後、どのような進化を遂げるのかが実に楽しみだ。

広角への打ち分けは甲子園で有利

短い期間での進化と優れた対応力は、数字にも表われている。3月は月間打率.158だったものの、4月は.264、5月は.341と右肩上がりだ。ここ最近は4番を任されているが、得点圏打率はリーグ4位の.325と、プレッシャーのかかる阪神の4番として堂々たる数字をマークしている。

特筆すべきは対左投手の打率が.300(対右投手は.258)と、左を苦にしていないこと。左投手に対して肩が開いてしまうと、特に変化球への対応などで苦しくなるが、佐藤は肩を開かないように我慢してどっしりと構え、体勢が崩されることがほとんどない。自分のタイミングでボールをとらえることができる上、球を引きつけて逆方向へ運ぶ器用さも兼ね備えている。

SPAIAの打球方向データを見ると、右中間への打球が27%と最も多く、次に多いのが左中間の21%、中堅と右翼は20%で左翼が13%という比率となり、広角に打ち分けている印象だ。オープン戦で広い甲子園の左翼席に打球を運ぶシーンを何回か見せたが、左のパワーヒッターが逆方向にも強い打球を打てるのは、本拠地の甲子園で有利になる。

甲子園は右翼から左翼に吹く強い浜風の影響で左打者に不利と言われるが、かつて同球場で本塁打を積み重ねた掛布雅之やランディ・バースのように、逆方向へ大飛球を打てれば話は別だ。

課題は四隅の球と対直球

SPAIAのゾーン別データを見ると、ベルトの高さの球には滅法強い。また、内角高めも.333とハイアベレージを残している。

その一方、苦手としているのが内角高めを除く四隅の球。外角高めは.125、外角低めは.148、内角低めは.067と得意なゾーンとの差が激しい。傾向としては特に低めの打率が悪く、今後は低めに落ちる球などで攻め込まれるケースが増えると予想されるが、そこをどう見極め、対応していくかが率を残せるかどうかのポイントになるはずだ。

また、半速球の動くボール(カットボール、ツーシーム)には高打率をマークしているが、直球の打率は.246と低迷。150台中盤の直球をいかにとらえていくかも喫緊の課題だ。しかし、これまでの対応力の高さを見ていると、直球にも慣れていくはずだし、四隅の見極めもできていくのではないだろうか。

ルーキーでありながら、もはや打線の中心とも言える佐藤。今後もどんな打撃と成長曲線を見せてくれるのか楽しみだ。

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