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三振の山を築く中日・柳裕也 カットボールの奪空振り率は驚異の21.7%

2021 5/25 11:00浜田哲男
中日ドラゴンズの柳裕也ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

あらゆる項目でリーグトップ

昨季はシーズン終盤に安定感のある投球を見せ、今季の活躍が期待されていた中日の柳裕也。ここまで8試合に登板し、白星こそ3勝(1敗)にとどまるものの、防御率1.83、奪三振数67、奪三振率11.17、QS率87.5は堂々のリーグトップだ。

さらに、1イニング当たり何人の走者を出したかを示すWHIP(1.0を切れば球界を代表するエース級)も、リーグトップの0.78と圧巻の成績を残している。

5月16日のヤクルト戦では4勝目はお預けとなったが、7試合連続のQSを達成。初回、村上宗隆に2点本塁打を浴びるも、その後は丁寧かつ粘りのある投球を見せ、7回4安打2失点にまとめた。ここまでは先発投手として申し分のない働きを見せており、今後も先発ローテーションの柱として活躍が期待される。

どんな球種でも三振が取れる

柳の球種別投球割合を見ると、直球に次いで多いカットボール(30.6%)をはじめ、スライダー(11.5%)、チェンジアップ(10.9%)、カーブ(8.9%)、シンカー(2.6%)、シュート(0.1%)など、多彩な球種を投げ分けて打者を翻弄している。

特筆すべきはカットボールの奪空振り率(21.7%)だ。フォークボールで20%を超える投手は一定数いるが、カットボールで20%以上の奪空振り率は驚異的。同球種の昨季の奪空振り率は13.15%であり、今季はいかにキレ味が増しているかがわかる。

また、チェンジアップは21.1%、スライダーは18.0%、シンカーは17.4%と他の球種の奪空振り率も軒並み高く、どんな球種でも三振が取れるのが強みだ。球種の少ない投手だと調子の悪い時に狙い打たれる場面が多いが、多彩な球種を操れれば、その日の感覚によっていかようにでも対応でき、打者は狙い球を絞りきれない。

3勝目を挙げた5月9日の広島戦では、8回2安打無失点の快投を見せたが、3回には二死満塁のピンチもあった。同試合唯一のピンチとも言える場面だったが、ここも三振で凌いでいる。これまでは打たせて取る投球スタイルという印象が強かったが、今季は取りたいところで三振が取れている。

球界屈指の投手へ飛躍なるか

中日・柳裕也のゾーン別投球データ


ゾーン別データを見ると、左打者に対しては外角および低めへの投球が多く、右打者には外角低めへの投球が41.5%と半分近くを占めており、同ゾーンで24個もの三振を奪っている。外角の変化球の出し入れで勝負できることも強みだ。

左打者に対しても右打者に対しても、真ん中や真ん中高めなど甘いコースへの投球比率は少なく、リスクを徹底して回避していることがうかがえるが、これは優れた制球力の賜物だろう。対左右別の被打率を見ても、対左打者は.184、対右打者は.167とどちらかを苦手にしているということがない。

今年は東京五輪が間近に迫っているが、日本代表の柱と目されていた巨人の菅野智之が右肘の違和感で状態が懸念され、ソフトバンクの千賀滉大は左足首の靱帯損傷でリハビリ中。ここまで安定感抜群の投球を見せている柳が抜擢されることも十分にありうる。チームの命運を握るのはもちろん、球界屈指の投手として名乗りを上げる絶好のチャンスでもある。

ハイペースで積み重ねている三振数はどこまで伸びるかなど、今後も柳の投球から目が離せない。

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