山下舜平大とのキャッチボールで「親指が痛い」
オリックスの新人合同自主トレが9日から始まった。キャッチボールの距離を徐々に伸ばし、室内練習場の端から端まで離れた約50メートルの遠投でひと際目を引いたのが、ドラフト1位・山下舜平大(福岡大大濠高)の糸を引くような剛速球。通常は距離が離れれば離れるほどボールは山なりになるが、山下の右腕から放たれたボールは引力に逆らうかのように50メートルをほぼ水平に移動した。
「半分くらいの力でボールの回転を確認しながらやりました」と涼し気に語る姿は、とても高卒ルーキーとは思えない。2019年に最優秀防御率、2020年に最多奪三振のタイトルを獲得した山本由伸や、2019年に勝率第1位に輝いた山岡泰輔ら本格派右腕の多いオリックスに、また一人楽しみな逸材が加わったと言える。
キャッチボールの相手を務めたドラフト4位・中川颯(はやて、立教大)も「重いというのが第一印象。(左手の)親指が今も痛い」とグラブ越しにも強い衝撃があったことを明かした。
同じルーキーとはいえ、4歳上の「先輩」らしく、この日はドラフト1位右腕を持ち上げたが、実は中川自身も大きな期待を背負う右のアンダースローだ。
高い奪三振率、早川スカウトも太鼓判
立教大で1年春から登板し、59年ぶりの優勝を果たした2017年の全日本選手権で最優秀投手に輝くなど東京六大学リーグ通算10勝。ストレートは140キロに届かないが、スライダーとカーブ、シンカーをコーナーに投げ分ける緩急自在の投球で打者に的を絞らせない。
大学4年間で通算163.1イニングを投げて141奪三振。K/9(奪三振率)は7.78と高い。同じアンダースローのソフトバンク・高橋礼の2020年のK/9が5.12、楽天・牧田和久が5.94、西武・與座海人が4.26、阪神・青柳晃洋が6.56だから、下手投げ投手としては高い奪三振率を誇る。プロと大学生を一概に比較はできないが、実戦向きであることは間違いないだろう。
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中川の担当で、立教大の先輩でもある早川大輔スカウトは「1年目から活躍?そのつもりで獲った」と断言した。最も近くで見てきたスカウトの力強い言葉は期待を抱かせるに十分。先発か中継ぎかまだ分からないが、オリックスにはいないタイプだけに重宝される可能性は大いにある。
立教大出身のサブマリンと言えば、杉浦忠が思い浮かぶ。大学では長嶋茂雄と同期で、南海入団2年目の1959年に38勝をマーク。日本シリーズでは4連投4連勝でチームを日本一に導いた伝説の投手だ。中川には、立教の後輩として杉浦に一歩でも近付く活躍が期待される。
ちなみにオリックスはドラフト5位も同姓の中川拓真(豊橋中央高)で、「最後のPL戦士」と呼ばれる中川圭太もおり、中川姓が3人となった。かつて、仰木彬監督が鈴木一朗を「イチロー」と命名したように、区別しやすい登録名もよさそうだが、3人とも本名で登録される予定という。
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