走攻守でチームの勝利に貢献
62試合を消化し、34勝26敗2分けでリーグ2位につけるロッテ。特に8月は16勝8敗2分けと躍進した。不動のリードオフマンである荻野貴司を怪我で欠き、調子の上がりかけた福田秀平も右恥骨筋損傷で登録抹消。安田尚憲や和田康士朗ら若手の台頭は明るい材料だが、チームの得点数、本塁打数、打率はリーグ4位。それでもこの位置にいられるのは、来日2年目のレオネス・マーティンの存在が大きい。
打率は.258ながらも17本塁打(リーグ5位)、46打点(リーグ6位)、出塁率は.401でOPS(出塁率+長打率)は.945(リーグ5位)。8月は1986年7月の落合博満以来34年ぶりとなる月間10本塁打を達成するなど、勝負強い打撃を見せているほか、8月16日の日本ハム戦では1試合3盗塁をマークするなど足もアピール。堅実且つ強肩が魅力の右翼守備も健在で、走攻守でチームの勝利に大きく貢献している。
センセーショナルなアーチが多く、20日のソフトバンク戦では2-4と2点ビハインドの10回、2死一塁から起死回生の2点本塁打を放ちサヨナラ勝ちに貢献。28日のオリックス戦では2打席連続で右翼5階席にたたき込み、翌29日も3回まで完璧に抑えられていた張奕から逆転弾を放ち、それぞれの試合で勝利を手繰り寄せた。また、8月7日から4試合連続で本塁打を放っており、チームも4連勝している。
20日の試合後に「シーズンは長いですが、千葉ロッテができるということを見せてプレーオフに進みたいと思います」と話していたが、マーティンのバットがチームの浮沈を左右すると言っても過言ではない。これほどの影響力と存在感を見せれば、ファンからの信頼が厚くなるのは必然だ。
指標は軒並み高い数値をマーク
マーティンは、セイバーメトリクスの各指標でリーグ上位にランクイン。四死球によってどれだけ出塁したかを表す指標であるIsoDは.143(リーグ2位)。長打力を表すIsoPは.286(リーグ6位)、パワーとスピードを兼ね備えた打者であることを表すPSは8.87(リーグ2位)。
長打力や出塁能力に加え、犠飛や犠打、盗塁といったOPSにはない要素も加味されているため、より精度の高い得点貢献能力がわかるRCは47.55(リーグ4位)と軒並み高い数値をマークしている。得点圏打率だけを見れば.239と低いが、これらの指標の高さが優れた打者でありチームの勝利に貢献している証だ。
塁状況別の成績を見ると、走者無しの場面での打率は.226ながら、走者一塁だと.372、一二塁は.500、二三塁は1.000、満塁は.333と打率が向上。走者二塁の場面での打率が.000(18打数0安打)であることが得点圏打率を下げている要因ではあるが、勝負強いイメージは走者が多い場面で打っているからだろう。
打者の多くが苦手としている「落ちるボール」が得意なことも強み。対直球の打率は.250だが、対フォークになると.333、対ツーシームは.438、チェンジアップは.308と高数値をマーク。直球に対する打率が高く、フォークやチェンジアップになると打率が下がるという傾向は、強打者をはじめとした打者の多くによく見られるが、この数値はマーティンの特長のひとつと言えそうだ。
ファンへの想いとファンからの信頼
チームの勝利はもとより、仲間想いでありファン想いのマーティン。11日の日本ハム戦ではライトスタンドのファンと一緒になって拍手をしていた。その理由について「チームメイトは家族だと思ってますし、美馬投手のモチベーションが少しでも上がればと思ってファンの皆さんと拍手させてもらいました」と、同試合で先発しマウンドにいた美馬学にエールを送っていたことを明かしている。
「本当にマリンのファンの皆さんの前でプレーできて最高に嬉しいです」「マリーンズのファンの方たちは素晴らしいので、それが力になっています」とファンへの想いや感謝も常々口にする。
ファンもマーティンに対する賛辞を惜しまない。SNSには「マーティンがいなかったら今のロッテの躍進はない」「マーティンのホームランは勝利への貢献度が高い」「日本の文化に馴染む姿勢があって、人柄も大好き」「打てるし、守れるし、走れる。これぞメジャーリーガー」「ずっとマリーンズにいてくれ!」といった声が飛び交う。
シーズンは折り返し地点を過ぎたばかり。引き続き上位にとどまり優勝争いをしていくためにはマーティンの活躍が必要不可欠だ。すっかり定着した「YES!マーティン!」の決め台詞を、幾度となく聞けることを期待している。
※2020年8月30日試合終了時点
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