打線の中心として確かな存在感
8月に入り14勝7敗2分けと勢いが加速。8月21日のソフトバンク戦に勝利し、一時単独首位にも浮上したロッテ。4番に座り確かな成長を見せる安田尚憲や、初スタメンで3安打3盗塁3得点の活躍を見せた和田康士朗らに注目が集まる一方で、打線の中心として確かな存在感を放っているのが井上晴哉だ。
主に5番に座り打率.285、12本塁打(リーグ7位)、46打点(同4位)、出塁率.413(同7位)と堂々たる成績を残し、チームの躍進に大きく貢献。前を打つ安田にとっても後ろに井上がいることが精神面でプラスに作用している。
安田は常々、「自分の後ろには晴哉さんという凄いバッターがいるので、本当に心強い気持ちで打席に入れています」と話す。首脳陣にとっても、仮に安田が打てなくても井上がカバーしてくれるという安心感があるはずで、安田を育てる意味でも井上の存在は大きい。
井口資仁監督が指揮を執った1年目(2018年)、井上はレギュラーに抜擢され133試合に出場。指揮官の期待に応えるように打率.292、24本塁打、99打点、出塁率.374とブレイクした。昨季は調子の浮き沈みが大きく、苦しんだが、最終的には前年と同じ24本塁打を放ち、出塁率.362と及第点の活躍。一塁守備も安定し、今では打線に欠かせない存在となっている。
選球眼に優れ、殊勲打が多い
井上は豪快なスイングで広角に打ち分ける技術を持つ一方、選球眼も優れている。四死球によってどれだけ出塁したかを示す指標であるIsoD(出塁率-打率)は.127でリーグ5位、一流の領域だ。走者を返す働きを見せる一方で、出塁して後ろへつなぐチャンスメーカーとしての働きもこなしている。
先制、同点、勝ち越し、逆転となる安打を示す殊勲打も多い。井上の殊勲打の回数は13回でリーグ4位タイ。ランクインしているのは1位柳田悠岐(ソフトバンク)、2位中田翔(日本ハム)、3位山川穂高(西武)らそうそうたるプレーヤーであり、井上がいかに勝利に貢献しているかがわかる。
圧巻だったのは、ZOZOマリンで行われた7月28日の楽天戦。ロッテは13-12で乱打戦を制したが、勝利を手繰り寄せたのは井上が放った3本のアーチだった。0-0で迎えた2回裏、無死一塁で右翼席へ豪快なアーチを描くと、4-1とリードした3回にも右翼席へ運び、10-12と2点ビハインドで迎えた8回には、同点2点本塁打を左翼席に豪快にたたき込んだ。
1試合3本塁打は日本人選手では1990年の初芝清以来30年ぶりの快挙。改めて存在感を見せつけた井上は、「嬉しいですし感無量。もっと打ちまくっていきたい」と意気込みを示していた。
打球方向は中堅が最多
球種別の打率を見ると、今季は直球への強さが顕著。昨季も対直球の打率は.286とまずまずの成績だったが、今季は.338と大幅に向上。対ツーシームは.500、対カットボールは.263と動く球にも上手く対応している。一方、例年苦手としているフォークボール(.200)やスライダー(.188)をいかに攻略していくかが課題と言えるだろう。
打球方向データを見ると、中堅が26%と最多(左翼23%、左中間17%、右中間15%、右翼19%)。通常は右打者であれば左翼から左中間、左打者であれば右翼から右中間の数字が高くなるのだが、井上のように中堅が最も多くなるケースは珍しい。いかにセンター方向へ打ち返す意識が高いかの表れだろう。
出塁率が高い上、好機に強く一発も期待できる井上。好調なチームの得点源であることは間違いなく、若き4番・安田の後ろにどっかりと座っている存在感は相手バッテリーにプレッシャーを与える。ロッテはここまで59試合を消化。今季は120試合のためもうすぐ折り返し地点と言えるが、今後も上位をキープするために井上のバットは欠かせない。
※2020年8月27日試合終了時点
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