好調なチームを攻守で牽引
28試合を消化して16勝12敗と上々の滑り出しを見せている楽天。ソフトバンクと勝率で並びリーグ1位につけている(7月22日試合終了時点)。
そんな楽天を攻守で牽引しているのが、昨オフにフリーエージェント(FA)権を行使して移籍してきた鈴木大地だ。ここまで全28試合に出場し打率はリーグ4位の.327、出塁率は.390、さらには2番打者でありながらリーグ4位の23打点。文句のつけようがない数字だ。
出塁してチャンスメイクをするだけでなく、走者がいれば得点源としても機能。昨季よりもつながりビッグイニングを作ることも多い楽天打線において、4番の浅村栄斗とともに存在感を発揮。多くの得点に常に絡んでいる印象があり、また、28試合のうち11試合でマルチ安打をマークするなど、とにかく打ちまくっている。
ロッテ時代から発揮していたキャプテンシーも健在。投手がピンチとみるやマウンドに駆けつけ、励ましている光景を頻繁に見かける。鈴木獲得の理由のひとつとして石井一久GMは「プレーだけではなく、若いこれからの選手に鈴木選手の背中を見せていただきたい」と話していたが、現段階で十分にその期待に応えているのではないだろうか。
自分よりもチームが勝つこと
得点圏打率はリーグ2位の.414と勝負強い。走者がいない時の打率は.258だが、走者がいると打率が跳ね上がる。走者が一塁の時は.421、二塁時.375、一二塁時.500、一三塁時.375、満塁時は.667だ。
ロッテ時代からここぞという時の勝負強さは持ち合わせていたが、ここまでの活躍は想像以上。既に楽天打線において不可欠な存在となっている。
先制適時打を含む2安打3打点と活躍した7月15日の楽天生命パーク宮城での試合後、お立ち台に上がった鈴木は「僕というよりもチームでつないで、良いところだけもっていっただけなんで。勝てたことが何よりも良かったと思います」と“らしさ”の溢れる発言。どれだけ自分が打っても、まずはチームの勝利という意識が前に出てくるのは変わらない姿勢だ。
高打率の要因は逆方向への意識
今季、高打率をマークしている大きな要因と考えられるのが、レフト方向の打率向上。鈴木は元々プルヒッターと言っていいほど安打は引っ張る打球が多く、昨季はライト方向が.519と高打率を残していたものの、レフト方向の打率は.159(センター方向は.225)と低かった。
しかし今季は、レフト方向が.350と高打率(センター方向は.220、ライト方向が.500)。難しい球を逆らわずに流し打つシーンが昨季よりも見られるようになった。走者が一塁にいる時には引っ張って一三塁とチャンスを拡大。得点圏に走者を置いた場合はセンターからレフト方向への意識を強めて、しぶとい打撃でヒットゾーンにボールを運んでいる。
強いて課題を挙げるとすれば、オリックス戦での打率が極端に悪いということ。今季はロッテ戦での打率.423をはじめ、西武戦、日本ハム戦でも4割近くの打率をマーク。ソフトバンク戦も.333と打ち込んでいるが、オリックス戦となると.053(19打数1安打)と急激に低下。昨季もオリックス戦の打率は.237とリーグで最も苦手としており、対策は急務だ。
昨季は対山本由伸が.125(8打数1安打)、対山岡泰輔が.091(11打数1安打)、対アルバースが.222(9打数2安打)と抑え込まれていたが、今季もこの3投手とそれぞれ3打席対戦して無安打。どんな形であれ安打をマークするなど、シーズンの早い段階で苦手意識を払拭しておきたい。
7月21日、22日とオリックスに連敗を喫しているが、鈴木が出塁できていないことが少なからず影響していることは確かだ。
チームを鼓舞できる貴重な存在
今季はまだ始まったばかり。当初は抜け出していた楽天だったが、今では4.5ゲーム差の中に6チームがひしめく。6連戦が続くなど様々な意味で前例のないシーズンだ。
先行きが例年にも増して読めないシーズンだからこそ、どんな苦況に立たされてもチームメイトを鼓舞できるプレーヤーは貴重。シーズンが進み様々な局面を迎えるにつれて、鈴木の存在感はより一層高まっていくだろう。
「仙台に鈴木が来て良かったと思ってもらえるようなプレーを、一つでも多くしたいと思います」
走攻守全てにおいて全力プレーで貢献するスタンスは、多くの楽天ファンを虜にしていくだろう。移籍1年目にして既にリーダーの風格も漂わせる鈴木が、シーズンを通して大きな鍵を握るキーマンであることに疑いの余地はない。
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