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今季は覚醒へ向けた試金石 ロッテ・安田尚憲は今後もスタメンでの起用を

2020 7/16 11:00浜田哲男
千葉ロッテの安田尚憲ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

随所に見せる大器の片鱗

今季、プロ入り初の開幕1軍入りを果たしたロッテの安田尚憲。ここまで15試合に出場し、打率.136、1本塁打、3打点(7月15日試合終了時点)と数字だけを見れば振るわないが、随所に大器の片鱗を見せている。

転機となったのは、7月7日の西武戦で放った約2年ぶりの1軍での本塁打。高橋光成の最たる武器であるフォークをとらえると、打球は美しい放物線を描き右翼席に飛び込んだ。力みのないコンパクトなスイングでボールをすくい上げる技ありのアーチだった。

同日は日中に行われた2軍の試合にも出場し安打を記録しており、試合感や打撃の感覚をキープしていたことも功を奏した。ナイター後は強風の吹き荒れるZOZOマリンでノックを受けるなど昨季とは違う意味での充実した日々を送っている。

「1本打つことできて良かった」と安堵感の溢れる笑顔を見せていた安田は、この一発で吹っ切れたのか、この日を境に打撃が上向いた。8日の西武戦では、今井達也にわずか2安打に抑えられて敗れたものの、その2安打を放ったのが安田だった。

9日の西武戦は雨でノーゲームとなったものの、2打席連続で適時打を放つなど躍動。特に2本目は、軸足の左足に重心を残しながら、チェンジアップにうまくタイミングを合わせる価値ある打撃だった。

克服すべき課題は多い

課題は明白。ここまで対左投手に6打数無安打と対応に苦しんでいる。14日の日本ハム戦では左の加藤貴之、福田俊と対峙するもタイミングが合わずにあっさりと打ち取られた。

15日の試合では、日本を代表する変則左腕・宮西尚生と初対戦。2球で早々と追い込まれるも、その後は外角へ逃げていくスライダーを見極めて四球を選んだ。出塁できたことは評価できるが、左投手への対応力向上がもう一皮、二皮むけていくための喫緊の課題と言えそうだ。

また、安打や空振り、凡打などの多いゾーンを赤色で示す打者ヒートマップを見ると、ストライクゾーンよりも高めと低め(それぞれ外角寄り)に手を出して空振りしているケースが多く、当然ながらまずはコースを見極めなければならない。右足の開きが早く踏み込みが十分でないケースも散見されるが、それではせっかくのパワーもバットにうまく伝わらない。外角を打つのであれば尚更だ。

打球方向を見ると中堅から右翼の割合が高く(中堅33%、右中間22%、右翼26%)、逆方向の割合は低い(左中間7%、左翼11%)。ボールを引きつけた上でしっかりと踏み込み、逆方向へ運ぶ意識を高めれば、コースを今よりも見極めやすくなり空振りも減るだろう。

安田の成長はロッテの未来

ここ最近は7番DHでスタメンに起用されている安田。一線級の投手との対戦を通して、明らかに違う1軍と2軍の投手力の差を痛感しているだろう。結果が出れば当然それに越したことはないが、常時スタメンでプレーすることで得られる様々な経験が今の安田には必要だ。

SNSにも、ファンからの「今年は我慢して使い続けてほしい」「安田の結果には一喜一憂しない。1軍にいるなら常時スタメンで起用してほしい」といった声が見られる。

7番という精神的には楽な打順で試行錯誤して取り組みながら、失敗体験と成功体験を積み重ねていくことが理想的。開幕当初の打席では早いカウントから打っていくことが少なかったが、現在はファーストストライクから狙いにいくなど積極性も出てきた。こうした試行錯誤は、スタメンで出続けているからこその意識と行動の変化だ。

井口資仁監督も今岡真訪2軍監督も、安田に関しては「日本球界を代表する打者に」というビジョンを共有。また、安田は入団時に「近い将来ホームラン王を獲ることが目標」と口にしていた。

1年目にプロの壁を痛感。2年目に2軍で基盤を作りつつ、19本塁打、82打点で2冠に輝いた。そして迎えた3年目、再び目の前に高い壁が立ちはだかっているが、一つ一つの壁が大打者になるための試練だ。安田の成長がロッテの未来と言っても過言ではない。

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